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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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72 火事

 つい先日、雪姉が誘拐されかけた。


 どうやら件のヤの人たちが強硬手段をとったようだ。


 まあ、されかけた《・・・・・》だ。勿論俺が阻止した。


 でもむかついたから、実行犯の男たちをぼこぼこにして事務所の前に放置した。勿論、『私は醜い豚です』と書いた札を首からかけさせた。


 もし次にこんなことをしたら、本気で事務所を潰す気だ。



 さて、今俺はスーパーでケーキの材料を買っている。


 今日は、正人君の誕生日だ。


 俺が小学校に入ってから四年がたち、俺は小学四年生になった。


 そして俺の料理の腕も、四年前と比べかなりうまくなった。真央ちゃんが言うには、店を開けるレベルらしい。


 なので料理の特異な俺と優ちゃんで正人君にケーキを作ってあげようとしたのだ。


 普通こういう時は作るのではなくて買うものだが、俺と優ちゃんが作るケーキはそこらの店のケーキよりも圧倒的にうまい。


 そのため俺たちが作ることになった。


 「椎名~。材料見つかった?」


 雪姉が食材の入ったカゴを持ちながら小走りに近寄ってくる。


 いくら俺でも、買った食材を一人で家に持ち帰ることはできない。なので俺の補佐として雪姉が一緒に買い物に来た。


 ちなみに俺がケーキの材料を。雪姉が料理の材料を買っている。


 「うん。これで大体全部かな。」


 俺は見ていたイチゴをかごに入れ、答える。


 「じゃ、帰ろっか。」


 「うん。」


 俺たちは会計を終え、スーパーを出る。


 「どんなケーキを作るの?」


 「イチゴのショートケーキだよ。」


 俺はイチゴを買い物袋から取り出して雪姉に見せる。


 「そっちはどんな料理を作るの?」


 俺たちがケーキを作るように、雪姉と数人の子供たちは料理を作ることになっている。なので俺はまだ明かされていないメニューを聞いてみた。


 「椎名のことだから、もうわかってるんじゃない?」


 雪姉はいたずらっぽく笑う。


 そして事実俺は雪姉たちが何を作ろうとしているのかわかっていた。


 まあ、買ったものがまんまそれだったからということもある。


 「シチューだろ?」


 「正解!」


 「シチューのルー買っといて、分からないと思った?」


 「確かに。」


 雪姉は頬を掻きながら苦笑する。


 「正人さんシチュー好きだもんね。」


 ちなみに優ちゃんと正人君の呼び方だが、みんな優ちゃんを優先生、正人君を正人さんと呼んでいる。


 たまに正人君がなぜ自分も先生じゃないのかといじけているが、彼はいわゆるドジっ子で、さらに子供っぽいので、だれがどう見ても先生という柄じゃない。


 それはさておき、正人君はシチューが好きなのだ。


 ちなみに雪姉はシチューのルーを買っているが、使うのは一かけらだけで、ほとんど自分で味付けする。


 なぜ一かけらは使うのかはわからない。


 ともかく、俺たちは孤児院に向かって歩く。


 「今日は消防車が多いね。」


 雪姉が車道を走っていった消防車を見て呟く。


 「どこかで火事でもあったんじゃない?」


 「かもね。」


 俺たちはたいして気にせず先へ進む。


 「煙?」


 最初にそれに気が付いたのは雪姉だ。ふと空を見上げると、煙が見えた。


 「あの方向は…。」


 雪姉はその方向に何があるかを思い出す。


 「孤児院!?」


 俺と雪姉は顔を見合わせると、走り出した。


 俺はまだ知らない地球を管理する神に祈る。


 「大丈夫。」


 すると横を走る雪姉がそう俺に言ってきた。


 「どうせあれは孤児院じゃない。ほかのどこかの煙。」


 その言葉はたぶん、俺に言ってるんじゃなくて自分に言い聞かせていた。


 また一台、消防車が俺たちの横を走る抜けていく。


 「くそ!」


 俺は持っていた買い物袋を捨て、走るスピードを上げる。


 「椎名!」


 雪姉は俺の買い物袋を拾って追いかけてくる。


 だがいくら雪姉が高校生だからと言って俺には追い付けない。


 俺は道の角を曲がる。


 いつもはこの角を曲がると、まず孤児院の花壇が見えてくる。そしてその奥に目線をやると、孤児院とは思えないほどきれいな二階建ての幼稚園のような建物が見える。はずだった《・・・・》。


 「ああ…。」


 俺は地面に膝をつく。


 そこに見えたのは、荒らされた花壇と、燃えている孤児院だった。


 「あああああああぁぁぁぁぁl!」


 「椎名!」


 雪姉が角を曲がって追いついた。


 そして俺を見て、次に孤児院を見て固まる。


 「嘘。」


 雪姉の口から出たのは否定の言葉だ。


 「あああああ!」


 俺はまだ叫んでいる。瞳には一筋の涙が伝っている。


 「君たち、危ないから下がって!」


 俺たちは気付かぬうちに歩いていたのか、消防士に止められた。


 「俺たちの家だ!あれは、俺たちの家だ!」


 俺は消防士の静止を振り払おうとする。


 この時俺は錯乱しすぎて重力の枷を解くのを忘れていた。


 「っ!?」


 消防士は俺を制止しながら、顔を曇らせる。


 ガラガラガラ!


 その時、孤児院が完全に崩れ去った。


 「ああ…。」


 俺は再度孤児院に向かって歩き始めるが、今度は雪姉に止められる。


 「私たちの家族は…、優先生、正人さん、一成君、遥ちゃん、由恵ちゃん、百花ちゃん、真弘君、真央ちゃんは?」


 雪姉が消防士の一人にそうまくしたてる。


 「それは…。」


 聞かれた消防士は、顔に影を落とす。


 「彼らはどこ!?」


 雪姉がとうとう大声を上げた。


 消防士は雪姉の迫力に押され、口を開いた。


 「火事に巻き込まれ、死亡した。」


 消防士は、そう言って孤児院の敷地の一つを指す。


 それは俺と雪姉が見えないふりをしていた場所だ。


 そこには、八人の人間の体が横たわっていた。そしてその顔には、白い布がかぶせられている。


 「嘘だ!」


 俺は消防士の言葉を嘘だと断ずる。


 「嘘じゃない。」


 消防士は泣きながら叫ぶ俺を見て、言いづらそうにもう一回優ちゃんたちが死んだことを言う。


 「君たち。」


 その時、俺と雪姉に声がかかった。


 声をかけてきたのは、いかにもな刑事のオッサンだ。事実、この男は刑事だった。


 「この孤児院の関係者かね?」


 「そうですが。」


 雪姉は涙をぬぐい、刑事の問いを肯定する。


 「ならよかった。死体の身元を確認してくれ。」


 刑事はそう言って、白い布をめくる。


 それは孤児院に無関係の他人の顔ではなく、慣れ親しんだ優ちゃんたちの顔だった。


 刑事は全員の顔を確認させると、手帳を開く。


 「これは放火事件だが、何個か不可解な点がある。まず、この人たちは全員、撲殺されている。それに、放火の原因も過失などではなく灯油がまかれた形跡がある。十中八九これは他殺だな。」


 それを聞いた瞬間、俺は刑事の男に突進する。


 「誰だ!?誰が殺した!?」


 「わ、分からない。」


 刑事は俺の気迫に押され、しりもちをつく。


 「椎名!やめなさい!」


 さらに刑事に詰め寄ろうとしたところ、雪姉に止められた。


 「犯人が見つかり次第、君たちにも知らせよう。おい!この子供たちを保護しろ!」


 刑事は若い警官を呼ぶ。


 保護は勿論受けることん位して、俺たちは泣きながら孤児院を出ようとする。


 「ん?」


 孤児院を出ようとすると、地面に何か光るものを見つけた。俺はそれを拾う。


 「これは!?」


 それは俺たちの孤児院を脅していた暴力団のバッジだった。


 「そういうことか。」


 俺は誰にも見つからないようにバッジをポケットにしまい、孤児院を後にした。


 その時、俺の顔は修羅の顔をしていたと、のちに雪は語った。

この小説での悲劇はこれで終わりです!     多分。


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