71 恋人
俺は小学四年生になった。
魔法の方は、最初こそうまくいったが、その後の炎や水を槍や、剣に変形させることができずにいる。
まあ、そこはどうでもいい。
この四年間で一番重要なことは、雪姉に彼氏ができたことだ。
別に俺は雪姉の恋路に口を入れるつもりはない。
自分でいうのもなんだが、俺が孤児院の中で一番雪姉に懐いている。
まあ、だからと言ってよくあるような「俺のお眼鏡にかなった男じゃないと認めない!」なんてことは言わない。
俺が雪姉の相手に求めるものはただ一つ。
雪姉を幸せにできるか否かだ。
おっと、話を戻そう。
そう、雪姉に彼氏ができた。
そこまでは良い。雪姉が選んだ男だ。俺が文句を言うのはお門違いという奴だろう。
だが、俺は一応この男の身辺調査をした。
もちろん、神の里にも協力を要請し、魔術をフルで使って男の身辺を徹底的に洗った。
その結果出てきたのは、男が二股をかけているという事実だ。
その報告を俺が聞いた後の記憶が俺にはない。咲夜たち曰く、魔力を本気で放出しており、もう少し咲夜たちが止めるのが遅かったら、世界中を魔力災害--魔力が高すぎるためにおこる天災。これが起これば、良くて町中の生物が死に絶え、最悪空間ごと消滅する。--が襲っていたという。
そして今俺は、その男の後ろをつけている。
まあ、俺は表向きはただの小学生だ。つけていると言っても、お粗末--本気でやれば誰も見抜けない。--なものだ。
男が路地裏に入った。
俺は見失わないために走って路地裏の角を曲がる。
「おい、ガキ。」
ま、当然そこにはあの男がいるわけで。
「お前、俺をつけてたよな?」
男は俺の頭をつかむ。
「何なのお前?」
「浜野雪。」
俺は雪姉の名前を口にする。
「な!?」
俺がその名前を口にすると、男は一瞬驚きに目を見開かせた後、静かに溜息を吐く。
「お前、あいつの身内か。」
「そんなところだ。」
「ちっ。何の用だよ。」
「わかってんだろ?」
「二股のことなら、雪のほうが本気だ。もう一人は遊びだ。」
ふざけたことを抜かすもんだ。だからと言って二股をかけたと言う事実は消えないのに。
「そんな物関係ない。」
「ガキにゃわかんねぇよ。」
「ああ、俺はガキだから何もわからない。だから、暴力で解決させてもらうぜ?」
「は?」
俺は一瞬で重力の枷を取り外し、男の顎をサマーソルトキックで蹴り上げる。
俺は空中で一回転して着地して、地面に倒れている男を見下ろす。勿論手加減はしているので男は気絶していない。
「雪姉から手を引け。」
俺は冷たい目で男に告げる。
「ガキが!」
男は激昂して殴りかかってくる。
「遅い。」
俺は男のパンチをカウンターを腹に返す。
結構弱く殴ったつもりなのだが、男は腹を抱えてうずくまってしまった。
「ガッ!」
「お前は雪姉を幸せにできない。なら、雪姉と一緒にいる資格はない。」
俺は男の髪をつかんで、顔を上げさせる。
「雪姉はお前の二股を知っていたよ。でも、お前がやめることを信じて黙っていたんだ。でも、たとえ雪姉が許しても俺が許さない。たとえ誰だろうと、雪姉を泣かすことは許さない。」
俺は殺気を放ちながら男に告げる。
「ヒッ!」
男は恐怖で顔を引きつらせる。
「雪姉にもうかかわるな。いいな。」
男は頭を激しく上下して肯定の意を示す。
「よし。」
俺は男の髪から手を放し、路地裏を出るために歩き出す。
「ああ、そうだ。」
俺は大切なことを思い出して男のほうを振り向く。
「お前は俺には会っていない。お前はただ気まぐれに雪姉を振るだけだ。いいな?」
俺はそう言い残すと、路地裏を出て町を歩き出した。
その後、雪姉と男は無事分かれたらしい。
その時には雪姉は男には愛想を尽かせていたため、別れ話もスムーズに進んだとか。
一部、修正しました。
『人外の里』から、『神の里』




