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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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70 魔法

 俺たちの孤児院、繭澄孤児院はかなりい立地にある。


 コンビニも駅も、徒歩十分以内にあるし、日当たりもいい。


 さらにこの孤児院は正人君が個人で経営しているため、正人君の実家である落葉グループの後ろ盾がない。


 ならば、こんなにいい立地だ。さらに、最近になってここを再計画しようとする輩もいる。


 となると、ヤの付く職業の方々がやってくる。


 最初のほうは相手も丁寧な態度だったが、どうしても土地を売らないことを悟ると、陰湿な嫌がらせをするようになってきた。


 まあ、それでも売らないのが優ちゃんたちだ。俺達は安心して暮らしている。嫌がらせも全て実害のないものだからそんなに問題にもならないし。


 なので俺は人街の里で魔法を習うことにした。


 「おーい。いるか?」


 俺は咲夜の家まで来て、扉を開けて中に人がいるか確認する。


 「あ、いるぞ!」


 俺が呼ぶと、咲夜がすぐに玄関に来た。ちなみに咲夜の口調だが、敬語を使われるのは慣れていないため、いつもの口調で良いと言って変えさせた。


 「今日はどのような御用ですか?」


 咲夜は笑みを浮かべながらそう聞いてきた。


 あの林間学校から二か月が過ぎ、今は七月。もすぐで夏休みだ。


 この里にはあの後にも何度か訪れており、その時に子供の面倒を見たり、お菓子を作ったりしているうちに敵ではないと分かったようで、今では全く警戒されていない。


 「ああ、魔法を教えて欲しいんだ。ここは人里から離れているし、訓練にはうってつけの場所だろ?」


 俺はそう言って頭を下げる。


 「頭を上げろ。」


 咲夜がそういうので、俺は恐る恐る頭を上げる。


 「聞いてくれるか?」


 「勿論だ!」


 咲夜は満面の笑みでそう返してくれた。


 「ありがとう!」


 俺はも一度頭を下げる。


 「いいんだ。そうだ、今からするか?」


 「ああ、お願いしていいか?」


 「いいだろう、修練場へ来い。」


 「分かった。」


 咲夜がそう言い残すと、その姿が掻き消える。魔法で転移したのだ。


 「さて、俺も行くか。」


 俺も咲夜を追って修練場に向かう。


 俺が修練場に着くと、咲夜のほかに、もう一人先客がいた。


 「お前は、あの時のキツネ…。」


 そこにいたのは、俺がこの里に来た時にたくさんのフライパンなどの調理器具を背負っていたキツネだった。


 このキツネは咲という名前で、咲夜の娘らしい。


 「なんで咲がいるんだ?」


 「私は感覚派だからな、教えるのには向いていない。」


 「ああ、なるほど。」


 俺はそのことをいやというほど知っている。


 それは料理をしていた時だ。なんと咲夜は、甘ければ惜しいだろうと、クッキーの生地に三キロの砂糖を入れた。


 その結果、死ぬほど甘いクッキーができた。


 とりあえず、彼女に論理は通用しない。それがわかっているため、俺は咲に魔法を教えてもらうことにした。


 「じゃ、よろしく。」


 俺がそう言うと、咲は獣人の姿に戻る。


 獣人の姿を取った咲は、けだるげな様子の美少女だった。


 「この姿のほうがやりやすい。」


 咲は誰にともなく言い訳する。


 ちなみにこの間俺が来たときは、咲を撫でまわした。


 おそらくそれを警戒しているのだろう。


 「いいから早く始めてくれ。」


 俺は咲の言葉を遮って訓練を開始させる。


 「まず、詠唱魔法を教える。」


 「詠唱魔法?」


 詠唱魔法は一番初歩の魔法だ。詠唱さえすれば、ある程度の魔力を持っていたら子供でもすぐにできる程度には簡単だ。


 ちなみに、前世も含め、詠唱をしたことがない俺は詠唱を知らないため使えなかったりする。


 「まずは一番簡単なファイア・ボールから。」


 そう言って咲は手を訓練場の端にある的に向け、詠唱を開始する。


 「炎よ、わが敵を焼き給え。」


 すると、咲の手から炎の玉が現れる。その球は明らかにバランスボールよりも大きかった。


 そしてその火の玉は的に向かって飛んでいき、的に当たると的を炎で包み込んだ。


 「すげーな。あの魔法ってそんなに大きくなるのか。」


 俺は感心して咲に問いかける。


 「あれは、私だからあの大きさにできる。普通はソフトボールぐらい。」


 咲は自慢げに胸を張る。


 「じゃ、やってみて。」


 咲がそういうので、俺も手を的に向け、詠唱する。


 「火よ、わが敵を焼き給え。」


 すると、ゴルフボールほどの大きさの火の玉が現れた。


 「プッ。」


 俺の火の玉を見て、咲が噴出した。


 しかし俺の耳にはその音は入っていない。


 「なるほど。」


 俺は一つうなずくと、もう一度火の玉を出現させる。


 無詠唱・・・で。


 「え?」


 咲はそれに目を丸くさせる。


 無詠唱は本来、一流の魔法使いが数年の修行のうちに到達する技術だ。


 それを、前世の経験があるとはいえ、魔法を覚えたばかりの俺が簡単にやってのけたのだ。驚くなというほうが無理だ。


 しかし、俺が作った火の玉は先程と同じくゴルフボール並みの大きさしかない。


 俺はそれを的めがけて飛ばす。


 ドゴン!


 俺の火の玉は、的に当たると、爆発した。それも手榴弾なんて目じゃない威力だ。ミサイルとほぼ同等か、それ以上だ。


 「あ、あんた何者?」


 咲が頬を引きつらせながら聞いてきた。


 「転生者さ。ちょっと世界を終わらせたことがある、ね。」


 俺は笑って咲にウィンクする。


 この後、咲にすべての魔法の初級を教えてもらい、そのすべてをものすごい威力と無詠唱をで発動させたため、里の中でも魔術に秀でている咲のプライドを傷つけてしまった。

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