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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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69 林間学校3

 「お前!どこから入ってきた!?」


 俺の目の前に立っている青年は警戒心を隠そうともせずに剣を向けてくる。


 俺は一応友好的に話しかける。

 

 「どこって。そこの鳥居だけど。」


 俺は後ろの鳥居を指さして言う。


 「バカな!あれは人間には解除不可能な結界が張られているはずだ!」


 今度は少し年老いた女性が大声を上げる。


 「ああ、別に解除はしていない。空間魔法を応用しただけだ。」


 俺は自分がどうやって結界を突破したのか丁寧に教えてやる。


 「信じられんな。お前はただの童だろう?」


 一番年老いた男が俺を見据える。


 「まあ、確かに子供なのは認めるけど、俺は転生者だ。」


 俺がそう言うと、俺を囲んでいた連中があからさまにうろたえだした。


 「ち、ちなみに生前のお名前は?」


 今度は結構若い女が聞いてきた。


 「海原優。神名の場合はカシム・シンドラッドだ。」


 俺が自身の前世の名前を告げると、彼らは一斉に土下座した。


 「すいませんでした!」


 それは実に見事な土下座だった。俺はこの先、これよりも見事な土下座を見ることはないだろう。


 「な、なんだ!?」


 俺は困惑している。


 確かに、警戒心を解かせるために話術を使ってはいたが、まさか前世の名前を告げるだけで土下座されるとは思わなかった。


 「何で土下座するんだ!?」


 「私どもはカシム様にとんだ無礼を働いてしまいました。しかしどうか、どうか私の命でこの者たちだけでも助けていただけないでしょうか?」


 「な!?族長!何を言ってるんですか!?族長が命を差し出すぐらいなら、俺が出します!さあ、殺してくれ!」


 「いや、俺が!」


 「私が!」


 そして、全ての人外たちが自分を殺せと懇願してきた。


 「いや、殺さないよ?」


 俺が言うと、族長は少しばかり考えた後、残念そうに呟く。


 ちなみに族長はかなり若い--後で聞いたら三千歳を超えているらしい。--女性で、スタイルもよく、顔はすらりと細く、男女を問わず魅了するほどの美貌を誇っていた。


 「そうですか、体のほうが良いですよね。」


 「は?」


 「そうですよね。よく考えたら、命なんかよりも体のほうが良いですよね。わかりました!それで里の皆が助かるのならこの体をあなたに捧げましょう!」


 他の人外たちは、族長の発言を聞いて涙ぐみながら諦めを顔に出す。


 「いらねーよ!」


 俺はついにブチ切れた。殺気からこいつらは人の話を一切聞かない。


 「俺は魔力を感知したからここに来ただけだ!お前らが俺を襲おうとしたのだって、自衛のためだって理解している!大体俺はまだ七歳だ!体なんているか!」


 俺は一気にまくしたてる。


 「え?」


 俺の言葉に、人外たちはきょとんと首をかしげる。


 「この里を襲撃しに来たんじゃないんですか?」


 「はぁ、違うって言ってんだろ。」


 「では何しにここへ?」


 「さっき言ったばかりだろうが。魔力を感知したからだ。」


 「す、すいません。何か勘違いをしていました。」


 「分かったなら良い。」


 俺は謝罪を受け取ると、先程から気になっていたことを聞いてみる。


 「で、なんで俺にあんな態度をとったんだ?」


 あんな態度とは勿論土下座のことだ。


 「あなたは私たち神の間では有名人ですよ。世界を一人で破壊して、絶体神ブゲン様を威圧だけで消滅させかけた生命神の眷属、カシム・シンドラッドってね。」


 「なるほどそれでか。安心していいぞ。俺は力のほとんどを失っている。」


 俺は安心させるために笑顔を浮かべる。そして、先程の説明にあった疑問について聞いてみる。


 「ていうか、私たち神?」


 「あ、はい。私たち、一応神の一員なんですよ。」


 「へー。ってことは、八百万神の一員か?」


 「はい。そういうことになります。でも、本当に八百万になったのは最近ですよ。」


 俺は彼女の言葉の中で気になったことを聞いてみた。


 「最近ってことは、前はそうでもなかったのか。なんで最近になってそんな数になったんだ?」


 「アニメのためですね。」


 「は?」


 「アニメのためです。」


 「アニメ?」


 「はい!どうせなら、WEBじゃなくてリアルタイムで見たいじゃないですか!」


 彼女はその豊満な胸を張ってそう宣言する。


 「神ってそんなんでいいのか?」


 「いいんじゃないですか?」


 俺は心底あきれ返った。


 「はあ、分かった。で、神って一つの世界に八人までじゃなかったか?何でそんなに多いんだ?」


 「そ、それは。」


 彼女、聞けば咲夜という名前らしい。咲夜は目をそらした。


 「何だ?言えないのか?」


 「いえ、言います。」


 咲夜曰く、この世界の神はゼウス。そして、知っての通りゼウスは女好き。そして…。うん。わかるだろ。察せ。


 と、言うことで俺は話を切り上げてテントに帰る。もうすぐで日が昇りそうだったのだ。


 「寝なおすか。」


 俺は探索のためあまり寝ていないことを思い出し、テントの中でもう一度眠るのであった。

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