67 臨海学校1
俺が通う学校、落葉学園は正人君のお父さんが理事長を務める私立の学校だ。
そのため設備もよく、学園祭や修学旅行などの行事も盛んにおこなわれている。
俺たち繭澄孤児院の子供たちも、正人君の伝手でこの学園に入学できている。
さて、学園祭や修学旅行など以外でも行事はある。
例えば、新入生の親睦を深めたり、新しいクラスメイトとの交流を深めるための林間学校。
「で、何でここなんだ?」
林間学校の場所は学年ごとに異なる。六年生は長野だし、四年生は青森だ。
そして俺たち一年生はというと…。
「なんで富士の樹海なんだよ!?」
そう、富士山の麓にある、コンパスすら狂わせる樹海だった。
「大丈夫だ。言いたいことはわかるが、このキャンプ場は落葉グループが所有しているキャンプ場の一つだ。事故が起こったことも一回もない。」
「その事故が今回起こるかもしれないじゃないですか!」
「椎名は心配性だな。それとも幽霊が怖いのか?」
教師はニヤッと笑うと、俺をからかってきた。
「替えのパンツは持ってきたか?」
「着替えなら持ってきてますよ!」
俺は若干やけくそでそう返す。
この教師は俺たちのクラスの担任の花宮隆一だ。
この先生は茶目っ気のある先生で、かなり人気の先生だ。
「ま、幽霊とかは出ないから安心しなさい。」
「…はい。」
俺は一応納得して、バスから降りる。
「じゃ、班はこの前言ったとおりに分かれて。テントはもう張ってあるから。」
俺は先生の号令で自分の班員と合流する。
俺の班員は三人、詩帆と、その友達二人だ。名前は確か、瑠璃と凛だ。
瑠璃はかなり天然で、いつもポワポワしている。
凜は勝ち気で、少しきつい性格をしている。
「行くわよ。」
凜の号令で俺たちはテントの中に入り、荷物を置く。
ちなみに、このメンツはいつも教室などでつるんでるメンツだ。
俺には彼女たち以外の友達が--クラスには--いないので、いつも女と一緒にいるということもいじめの原因の一つだろう。
とりあえず俺たちは荷物を置き終え、次にするべき、カレーの調理に入る。
とはいっても俺たちは先生の指導の下、ただ具を切ったりするだけだ。
「じゃ、カレー作りを始めるぞ。」
ここでも説明をするのは隆一先生だ。
隆一先生は基本的には何でもできる。
勉強、スポーツ、料理、果ては裁縫までできると言う。しかも結構イケメン。
まさに完璧超人だった。
「じゃ、俺らも始めるか。」
しかし、そんな説明は俺には関係ない。
俺は手慣れた手つきで野菜の皮を向き、一口サイズに切っていく。
たまに星形や、ハート型に切るのも忘れない。
「すごい。椎名君料理できるんだ。」
それを見た詩帆たちが感心した様子で問いかけてくる。
「まあ、家でいつも手伝っているからね。」
俺は最近、孤児院で夕食の手伝いなどを始めた。
優先生にお礼がしたかったのもあるが、俺がまだ優だったころ、料理をよくしていてそれが割と好きだったからという理由が大きい。
「すごいでしょ!」
そこに、完璧なドヤ顔を決めた真央がやってきた。
「真央、お前こんなとこで何やって…って聞くまでもないか。」
いつも元気な真央だが、やはりと言うべきか料理は全くできない。
真央が料理を作った場合、具の大きさはバラバラ。さらに味付けも適当にやっているため、甘かったりしょっぱかったりと、一貫性がない。
今真央がここにいる理由も、大方自分の班から追い出されたのだろう。
「椎名の料理はすごくおいしんだよ!」
真央は俺のことを放っておいて話し続ける。
「いつも椎名がご飯を手伝うときはお替りしない子もお替りするもん!」
真央の話はまだ続く。
「おい、話すのはもういいけど、もうカレーできるぞ。」
真央たちが話しているうちに、俺はもう大体の調理過程を終えていた。
「す、すげぇ。椎名、お前いったい何者だ?」
俺の調理過程を見ていた隆一先生が若干恐れを含んだ声で聞いてきた。
「ただの小学生ですよ。ちょっと頭がよくて、運動ができて、料理もできる…、ね。」
「椎名は他にも服も作れるの!これも椎名が作った服なんだよ!」
真央が自分がきている服を指してそう言った。
真央が今着ているのは、水色のワンピースだ。
そのワンピースは胸のところに刺繍が入っていたり、裾のところにフリフリのレースがついていたりと、そこら辺の店で売っていてもおかしくないものだった。
「…、あと裁縫もできる、ね。」
俺はもう一度できることを言い直す。
「他にも…。」
その後、真央は俺ができることを次々と暴露していった。
その結果、俺は隆一先生以上の完璧超人認定されてしまったのだった。
服の説明がどうしてもうまく書けなかったので、適当に書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
感想待ってます。




