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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
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 カシムは何もない空間にただ漂っていた。


 空気も、土も、木も、生物も何もない空間。


 しかしそれはカシムが作った物だ。


 カシムが行使した魔法が招いた悔過だ。


 しかし空気もないこの空間でもカシムは死なない。彼が持つスキルが死なせない。


 「(次だ。)」


 カシムは声を出したつもりだったが、空気がないためそれは音にならなかった。


 カシムは再度空間を殴りつける。


 そこから罅が広がっていき、穴が開く。


 カシムはその穴をくぐる。


 この穴の行き先は神域だ。カシムはカミールを殺したときに、神域への行き方を知った。


 本当なら許可のないものは神域に入れないのだが、カシムの膨大な魔力が神域への侵入を可能にした。


 「よう、クソ野郎ども。」


 カシムは穴から出ると同時にそう口にした。


 今カシムの目の前には七人の神がいる。そのうちの一人、背が高く、白いひげを蓄えたいかにもな老人が口を開いた。


 「ふむ、口の利き方がなっていないな。私が誰だかわからないのか?」


 「知っているさ。この世で一番のクソ野郎だろ?」


 カシムは笑いながら神を挑発する。


 「私は創造神、ア・ティウマーだ。」


 「当て馬って。面白い名前だな。」


 ガン!


 カシムは後ろ《・・》からの奇襲を雷帝で受け止める。


 「俺は今こいつと話しているんだが?」


 そこにいたのは、さっきまで創造神のそばに控えていた神のうちの一人、金髪で赤い瞳の隻眼の男だ。


 「主への侮辱は許さない。」


 その男は短剣をカシムに突き立てようと力をさらに強める。


 「うるさい。」


 カシムはそう言って刀を斜めに倒し、男の短剣を滑らせる。


 「は?」


 なまじ力を入れていただけに、男は体勢を崩してしまう。


 そしてカシムはその隙を見逃すほど甘くはない。


 「死ね。」


 カシムは男の首に雷帝を振り下ろす。


 ザシュ!」


 男の首は吹き飛び、床を血で汚す。


 「次は誰だ?」


 カシムは炎皇を収納から取り出し、それを構える。


 「な…。」


 神たちはさっきの男でカシムを殺せると思っていたらしく、口をポカンと開けてびっくりしている。


 「お前らが来ないなら俺から行くぞ。」


 カシムは雷帝を担いで突進した。


 「待て!」


 ア・ティウマーが何かを言おうとしたが、カシムのほうが早い。ティウマーの横に控えていた神の一人を雷帝で突き刺し、雷を直接体の中に送り込む。


 「グアア!」


 神はなすすべなく絶命する。


 カシムはそのまま雷帝を引き抜き、炎皇を横薙ぎに振る。


 「獄炎。」


 炎皇から出た炎は真っ黒だ。


 その炎は二人の神に触れると、その神を包み込む。


 「ギャアアアアアア!」


 炎に触れた神はたちまち絶命する。


 これはカシムが作った魔法で、獄炎魔法に暗黒魔法を重ねている。そのためこの炎は触れるだけで対象を死滅させる能力を持つ何ともエグイ物になってしまった。


 「あと三人。」


 カシムは雷帝を床に刺し、魔法名を口にする。


 「雷波。」


 カシムが放った魔法は地面を雷の波が這うというシンプルなものだ。


 しかしこの魔法には一つ特徴がある。それは雷が見えないのだ。


 見えない雷は床を這っていき、神をとらえる。


 「アアアア!」


 二人の神は魔法を感知する前に絶命した。


 「あとはお前だけだ。」


 カシムは雷帝をティウマーに向ける。


 「ありえん!」


 ティウマーは槍を取り出し、カシムに向かって突きを繰り出す。


 しかしカシムはそれをひらひらとかわしていく。


 「遅いな。」


 カシムは槍をつかむと、それを握力で砕く。


 「な、何者だお前は!?」


 ティウマーは尻餅をつきながらカシムに問う。


 「俺は…。」


 カシムは少し考えた後、はっきりした口調で自身が何者かを言う。


 「俺はカシム。カシム・シンドラッド。生命神カミールの眷属、雷帝カシムだ。」


 カシムはそう言って雷帝を振り下ろす。


 今日、レムナットは神が死んだため完全に世界として終わった。

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