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時間は少し遡り、カシムが龍の里に着いた頃。グローリア王国の首都、グローリアの城壁の外には様々な種族の戦士たちが揃っていた。
それらは魔物を含む、この世界にいる戦うことのできるすべての者たちだ。その数は億を超え、兆にも届いている。
「今、目標が龍の里に入ったと報告があった!」
全種族の代表として人間の王、アルフレッドが大声を張り上げる。
「これより我々は三百年前現れた邪神、その眷属に与した龍神族を殲滅する!私から言うことはただ一つだ!暴れろ!」
アルフレッドの演説が終わると、各種族の魔法使いたちが地面に描かれた魔法陣に魔力を流す。すると魔法陣の上に載っていた戦士たちが消える。所詮転移魔法陣というやつだ。
「どんどん行け!」
戦士たちは次々と魔法陣に乗り、龍人の里へ転送されていく。
--龍人side--
その以上に最初に気が付いたのは里の比較的出口に近いところで遊んでいた子供たちだ。
「誰あれ?」
子供たちは遠目に見える人影に、近づくことはしないが、興味深げに見ている。
「知らなーい。」
「とりあえずルキ様呼ぶ?」
「ルキ様はもう里長やめたから、ルマークさんのほうが良いんじゃない?」
「じゃ。呼んでくるねー。」
遊んでいた子供の一人--サナ--が現里長の補佐として働いているルマークを呼びに走り出す。子供たちが話している間に人影は里の出入り口付近まで来ている。
その時だった。里中に子供の悲鳴が響き渡った。
「キャー!」
サナはとっさに後ろを振り返る。
「ルミちゃん!」
そこには剣を振りぬいた姿勢で止まっている獣人族の戦士と、その戦士に胸を斬られ、崩れ落ちる友達の姿だった。
「ガアアア!」
そこにいた男子の一人が風のブレスを放ち、獣人の戦士を吹き飛ばす。
しかしいくら龍人族と言えど子供のブレス。戦士に大したダメージは無い。
「行け!」
サナまだそこにいることに気が付いた男子がそう叫ぶ。
「早くこのことをルマークさんに知らせろ!」
「で、でも!」
「行け!早くい…。」
その少年の言葉は最後まで続かなかった。なぜなら彼の胸から剣が生えてきたからだ。いや、生えてきたのではない。剣で貫かれたのだ。
「ガアアア!」
少年は自身の魔力を開放し、自信を貫いたエルフの戦士を身体強化で強化した拳で思い切り殴る。
「行け!」
少年は血を吐きながら大声を上げる。
「ごめん!」
サナは涙を目に浮かべながら走り出す。
里の出入り口付近とはいえ、そこはカシムの家がある北の出口に反対側の南側の出口だ。そのため家よりも畑が多い。更に龍人の里には植物の管理の魔法があるため、畑を見渡しても龍人は一人もいない。
「ルマークさん!」
サナはその名前を叫ぶ届かないとはわかっていたが、叫ばずにはいられなかった。
「どうした!?」
突如サナの頭上からルマークの声が聞こえた。
「ハルの魔力を感じたと思ったら、お前は泣きながら走っているし、何があった!?」
サナはここにいるはずのないルマークがいることに混乱するが、すぐに気を取り直し、状況を伝える。
「何!?すぐにこのことをみんなに伝えろ!俺は先に行く!幸い人数は少なそうだ!」
ルマークはそう言って再度飛び立つ。
「はい!」
サナはまた走り出す。皆にこのことを伝えるために。
「はあ、はあ。」
サナが里の建物が見えるところまで来ると、異変に気が付いた。
「煙が…!」
里の建物から煙が出ていたのだ。
「なんで!?」
実は各種族の戦士たちは里を囲むように転移したのだ。その転移の一番最初が南の出口だったというわけだ。そして、戦士たちは次々と転移していき、ついには建物があるエリアまで到達した。ルマークは畑に魔法をかけに建物があるエリアから離れていたため南門にすぐに向かえたのだ。
「みんな!」
サナは足がちぎれるんじゃないかという勢いで走った。そして建物のエリアに入る。そこでは龍人の者たちが各種族の戦士たちと交戦している。
「みんな!南門にもいる!ルマークさんと子供たちが戦ってる!助けて!」
サナはとぎれとぎれそう訴えかける。
「おう、任せとけ!」
何人かの龍人たちが南門に向かって走り出す。
このっ戦場は割と優勢で、怪我人は出ているが死者は出ていなかった。
「押せ押せ!」
龍人たちはドラゴンとしての高い身体能力と、有り余る魔力を使って相手を次々と倒していく。
「こいつら…!」
違和感は段々と現れてきた。倒しても倒しても相手が減らず、それどころか増えているのだ。
「何なんだよ!」
どんどん増えている敵に、戦況はどんどん悪くなる。
「くそ!くそぉ!」
龍人の一人がブレスを連発する。
「くそぉ!」
しかしそんな戦い方が長く続くはずもなく、魔力が切れてしまう。
「やれ!」
それを好機と見た敵がその龍人を攻撃する。
「あ…。」
すぐにその龍人の命は散る。
さらに南からも敵が来る。
「ルマークさん!それに子供たちまで!」
その敵はルマークと子供たちの死体を持っていた。
「お前ら!」
若い龍人の一人が相手に突っ込む。それを皮切りに多数の龍人たちが突撃する。
「魔法放て!」
しかしそれを狙ったかのように待機していた魔法使いたちが魔法を放つ。それはまさしく魔法の雨だった。
「グッ!」
いくらドラゴンの鱗を持っていても、何十何百という数の魔法は防げない。龍人たちは次々と倒れていく。
「キャッ!」
残る龍人たちは僅かとなってしまい、サナは逃げようとするが、それを遮るものがあった。
「ひっ!」
勿論敵の戦士だ。
(カシムさん、ごめん。)
サナは謝った。一人っ子の彼女にできた兄に。せっかく一回助けてくれたのにごめんねと。
ザシュ!
その日、レムナットで一つの種族が全滅した。その犠牲者の中には子を身ごもった女性もいたと言う。




