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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
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 カシムが龍人の里に来てから一か月がたった。この一か月のうちにたくさんのことが起こった。ルキがふざけて銭湯の魔石に許容量以上の魔力を注ぎ込み爆発させたり、ルキの作ったフルコースを食べて死にそうになったり、ルキが武器で魔物を殴ったらそこら一帯が消し飛んだり。とりあえずルキがいろいろしでかした。


 そのほにも、カシムの実力が知りたいと喧嘩を売ってきた輩もいたが、カミールのこともあって戦うことに気が進まず、この里に来てからカシムは一度も戦っていない。


 「大変だ!」


 カシムが寝起きの頭でそんなことを考えていると、外から声が聞こえた。


 「どうした?」


 カシムの家の前は里の出入り口の近くということもあり、よく人が集まる。


 「カシムさん!大変です!サナが森に入っていったきり帰ってこないんです!」


 「何!?」


 その瞬間、カシムの頭は真っ白になった。


 「サナ?」


 カシムはその名前に聞き覚えがあった。つい先日鍛冶場で会った少女だ。あの後カシムとサナは何度かお菓子や、子供向けの玩具を一緒に作るほど仲が良くなった。


 「森の何処だ!?」


 「ユ、ユール草が生えているあたりだと思う。昨日ユール草がどうとか言っていたから。」


 「ユール草…。」


 カシムはその草の名前の名前を聞いて、目を見開かせる。ユール草とは、この龍人の里の周りだけではなく、世界中に生えている草で、その香りは地球でいうシナモンに似ている。カシムは昨日、サナとお菓子を作った時、シナモンとユール草について言っていたのだ。その時、サナは「ユール草があればお菓子はもっとおいしくなるんだね!?」と言っていたが、まさか取りに行くとは思いもしなかった。


 「俺が行く!」


 カシムはぬ村の出口に向かって歩き出す。


 「待て!」


 そのカシムを呼び止めるものがいた。ルキだ。


 「行けば戦闘になるぞ。」


 「わかっている。」


 カシムは振り返らずに答える。


 「お前が行く必要はないだろう?」


 「これは俺の責任だ。俺がユール草が欲しいと言ったからだ。」


 「お前はもう戦わなくていいんだ!」


 「守るためなら俺は喜んで戦うさ。」


 カシムはそう言うと、ルキの静止を無視して走り出す。


 「どこだ…。」


 カシムは【探知】のスキルを発動し、サナを探す。


 「いた!」


 サナはすぐに見つかった。どうやら何かから逃げているようだ。さらに悪いことに里から離れるように逃げている。


 「クソッ!」


 カシムは走るスピードを上げる。


 「キャーーーー!!!」


 その時カシムの耳にサナの悲鳴が聞こえた。


 「サナ!」


 カシムは森の中の開けた場所に出た。そこでカシムが見たのは、怯えたサナと、それを囲む大量の魔物だった。魔物の数はは、およそ一万ほどだ。


 「サナから離れろ!」


 カシムは魔物を意に介さず突っ込む。


 「『武軍』発動!」


 カシムの号令とともに虚空から数々の武器が現れる。刀、剣、メイス、斧、槍…。そしてそのすべての武器から白い靄が湧き出て、人の姿を形作る。今、ここに神をも撃ち亡ぼす力を持つ武器の軍隊が出来上がった。


 「うおおおおおお!!!」


 カシムは雷帝を手に、魔物たちへ切り込む。武軍の兵士たちも各々の武器を持ち、魔物に斬りかかっていく。


 やがて魔物たちは息絶え、立っているのはカシムの三百の兵と、カシムだけだった。


 「大丈夫か?」


 カシムはサナの手を取り、立ち上がらせる。


 「うう、カシムざまぁ~。」


 サナはよほど怖かったのか、泣いてカシムに抱き着いた。


 「怖かったな。もう大丈夫だぞ。」


 カシムはサナの背中をやさしくなでる。


 「ごめんなさい。ごめんなさい。」


 「大丈夫だ誰も怒っていない。むしろみんな心配していたんだ。」


 カシムはその後もサナを宥めた。


 「帰るぞ。」


 カシムはサナに手を差し出し、帰路に就く。


 「次からは俺も行くからな。」


 カシムはそう言って、帰り道を急ぐ。



 後日今日の戦闘に話を聞いた里の者たちが、弟子入りしに来たが、丁寧に断った。

サナ死ぬと思いました?残念。

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