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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
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カミールルートは次回で終わりです。

 三百の軍勢を作った翌日、カシムはある泉に来ていた。この泉は邪神になる前のカミールの涙が落ちたところから湧き出ていて、飲めば傷は瞬く間に癒え、病気もたちどころに治るというとんでも水なのである。


 さて、何故ユウがここにきているのか。それには深いわけがある。三百の武器には体を与えられたが、ただ一つ『葉隠れ』だけは体を与えることができなかったのだ。恐らく、スキルレベルの低い時点で作ったためだと思われる。


 そういうわけで、カシムはこの『葉隠れ』を捨てようとしてここに来たのだ。そう、捨てるために。葉隠れの性能はカシムがダンジョン内で作った三百の武器に比べたらはっきり言ってゴミだ。しかし人間にしてみれば、あの刀は最高の剣となる。そのため、いっそのこと捨てる、もしくは壊そうということになった。そしてこの泉だが、この泉の水は聖水としても使えるらしい。なので、カシムは邪悪・・な魔剣なら聖水で壊せるだろうと思ったのだ。


 ここで一つ。日本人が思っている魔剣は大体禍々しいものだったり、邪悪なものだったりするだろう。しかしこの世界では魔剣とは『魔法が付与されている剣』である。そのため聖水に浸すだけでは魔剣を破壊することはできないのだが、カシムにそれを知る由もない。



 この『葉隠れ』だが、【レムナット】が破壊されたとき一人の神が世界の残骸から偶然見つけ、長く聖水に浸っていた影響で聖剣と化していたため自身の世界に持ち帰り聖剣として人間に譲渡した。カシムがそのことを知るのはかなり先になってからだ。



 そんなことはさておき、カシムが泉に行っているころ、カミールはカシムが作ったカミール専用の部屋でのたうち回っていた。


 「うあああああ!!!」


 それは魂が削り取られたことへの痛みだ。カシムが解いたあの呪いは徐々に魂を削り取るものだったのだ。もしあの時カシムが呪いを解かなかったら。一時間も持たなかっただろう。


 カミールは自身の魂の減り具合から、あと二週間が限界だと考えていた。しかし、今のままだと二日と持たない。それはおそらく、魂を壊され続けことで魂に罅のようなものができてしまい、そこからだんだん壊れてきているのだろう。


 「どうせ、どうせ死ぬなら。」


 カミールはカシムの顔を思い浮かべて胸を抑える。まだカシムといたい。カシムに愛していると言いたい。カシムと交わりたい。しかしそれはもう叶わないことだ。カシムに愛をささやいたところで、すぐに死ぬのだからカシムをさらに悲しませるだけだ。


 「もう、終わりにしなくてわいけないのか。」


 カミールはそう呟き静かに目を閉じる。痛みに耐えながら眠る姿はどこかうなされているように見え、帰ってきたカシムをひどく心配させたのは言うまでもない。

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