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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
31/148

29

今回は短いです。

 ユウが起きるとそこには知らない天井…、ではなくカミールの寝顔だった。


 ユウは静かに起き上がり、周りを確認する。どうやらカミールに膝枕されているようだ。


 「ありがとな。」


 ユウはそっと立ち上がり、カミールに収納から出した毛布を掛ける。


 「そういえば今日はあの夢を見なかったな。」


 ユウはあの悪夢を見なかったことにほっと息をつく。


 「ありがとう。」


 ユウはカミールを見て、もう一度言った。


 「ん…。」


 その時カミールが起きた。


 「おはよう。」


 ユウがカミールに声をかけると、カミールはユウを見て、だんだん顔を赤くした。


 「ね、寝顔見たか?」


 カミールが慌てて聞いてくる。ユウはいたずらっ子のように笑うと、口を開く。


 「ああ、見た。可愛かったな。」


 ユウの言葉にカミールは顔をまた真っ赤にする。


 「か、可愛い?」


 ユウは面白そうにカミールを見ている。カミールはそれに気づく。


 「か、からかうな!」


 「あっはっは!悪い。でも、可愛いと思ってるの本当だよ?」


 そう言ってユウは嘘とも本当ともとれるような口調、表情で言った。


 「卑怯だ。」


 「ん?なんか言ったか?」


 カミールの言葉はユウには届かなかったが、カミールは何でもないとごまかした。正直カミールにも何が卑怯なのかわからなかったが、なぜかそう感じたのだ。それがユウへの恋心ユウへの恋心故なのだとカミールは薄々気づいている。



 「お前の封印は解けたんだ。どこか行きたいところはあるか?」


 ユウは朝食を食べ終わると、そう切り出した。


 カミールはしばし考え、首を横に振る。


 「いいや、ない。それに今は力を回復させたい。どこかに行くつもりも、余裕もない。」


 「そうか。」


 ユウはその答えを聞くと、収納から武器を取り出し、手入れをする。


 「何をしているのだ?」


 「武器の手入れだ。」


 「そうではなくて。」


 カミールはユウの答えがお気に召さなかったようだ。


 「お前は私に付き合う通りなどないんだぞ?」


 カミールの言葉に、ユウは困ったように表情を変える。


 「俺は、俺の意思でここにいる。それとも、何か俺にいてほしくない理由でもあるのか?」


 「それは…。」


 ある。とはさすがのカミールも言えなかった。カミールはユウのことが好きだ。自分にかけられた封印を解き、自分と同じかそれ以上につらい過去を持ち、自分に優しく笑いかけてくれるユウのことが、カミールはたまらなく好きだ。しかしそうなると、自分が死ぬのが怖くなる。もっと彼といたい。もっと彼と触れ合いたい。もっと彼と話したい。カミールの中にどんどん欲望が集まってくる。


 それ故に、カミールはユウにここを去ってほしいし、ユウにここに残ってほしい。


 「お前の好きにしろ。」


 カミールにはユウを拒絶できない。そしてユウも、無意識にカミールを好いているため、離れたくないと感じている。カミールは自分の行く末を悟り、覚悟を決める。


 (私はユウのために死ぬ。どうせあと少ししか生きれないのだから、死ぬときはユウの糧になる。)


 カミールはひそかに決意する。ユウはのんきに武器の手入れをしている。カミールは覚悟を決めると、今この時間を精一杯生きようとする。


 とりあえず今は愛しい人の顔を見つめる。カミールだった。

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