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「ん…。」
目が覚めると、そこは中世の城の一室のような場所だった。(ハ〇リー・ポ〇ターと同じような外観だから間違いない。)そこには、鎧をまとった騎士のような人と、ローブを着ている魔法使いっぽい人たちがいた。
クラスメイト達が全員起き上がると、周りの状況を確認し、自分たちが囲まれていることに気が付くと、次々と大声を張り上げた。
「何処ここ!?」
「何だよテメーら!」
「おかーさーん!」
中には泣き出す者もいた。
「皆様落ち着いてください!」
みんなが混乱していると、良く通るきれいな声がその場に響いた。その声を発したであろう人物のほうを見ると、男子は見惚れ、女子は息をのんだ。
そこには、まさに絶世の美女というべき少女だ立っていた。髪は金髪で、ゆるくウェーブがかかっており、その瞳は全てを吸い込むかのような青色だ。さらに、出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる、正に理想のプロポーションといえるだろう。
「急にこのようなところに連れてこらて、さぞ混乱しているでしょうが、ひとまず我々の話を聞いてください、勇者様方。」
「勇者様がたって俺たちのことか?」
クラスで、いや、校内で一、二を争うイケメン、輝元勇人が、一歩前に進んでそう尋ねる。
「貴様!姫になんて口にきき方を!」
「やめなさい!彼らは何も知らないのですから!」
周りを囲んでいる騎士らしき人のうち一人が、剣を抜きながら叫ぶが、さっきの美女が仲裁した。
(…て、ん?姫様?)
姫様と呼ばれた美女は、説明を再開する。
「申し遅れました。私の名前はクレア・ラスティ・グロリーア。グロリーア王国の第二王女です。先ほどの質問ですが、あなた方が勇者です。神託に従い、、異世界からあなた方を召喚させていただきました。」
美女、いや、クレアが名乗ると、クラス全体がどよめいた。クレアはまだ話を続ける。
「今回あなたたちを呼んだのには、理由があります。」
(まあ、理由もなく呼ばれたらたまったもんじゃねーしな。)
優は注意深く王女の話を聞いていく。
(なんか怪しいんだよな、あの王女。)
優は王女から、言い知れぬ恐怖を感じ取っていた。
「あなたたちを召喚したのは、魔王を倒してほしいからです。」
そこからは魔王がいかに凶暴で、人類が滅亡寸前であるという説明がなされた。
まとめると、この世界はゴーリアと言い、異世界である。三百年前、ゴーリアに魔王が現れた。その魔王はとても強力で、魔族たちを率いて世界の三分の一を手に入れた。当時の賢者や、聖騎士によって深手を負わせたことで、魔族たちは撤退していった。しかし、その魔王に深手を負わせた賢者や聖騎士も、その戦いで死んでしまった。そして三百年たったいま、魔族の動きがまた活発になってきた。今の人類には身を守る手段がないため思い悩んでいると、神託が下りて、曰く勇者召喚をすれば大丈夫とのこと。そして、勇者を召喚した結果このようになったと。
「いきなり戦えといわれて、戦いたくないのは承知しています。しかし、私たち人類にはこれしか道がなかったのです!どうかこの国を、いえ、この世界を救ってください!」
涙を流しながらそう訴える王女は、どこか芝居がかって見えたが、クラスメイト達はそうは思わなかったようだ。
「みんな!僕はこの国を、世界を助けようと思う!皆はどうする!?」
「俺もやるぜ!」
「勇人がやるなら俺もやる!」
「勇人君のために私も頑張る!」
みんなやる気に満ちた顔で、口々に王女の願いを聞きとどけている。
「皆さん…ありがとうございます。」
王女はついに顔を手で覆い、泣き出してしまった。しかし、優は見逃さなかった。おうじょのくちもとに、笑みが浮かんでいたのを。
「ではみなさま、ついてきてください。今から王に謁見していただき、そこでステータスを測定させていただきます。」
王女はそう言って、クラスメイト達を先導して部屋を出て行った。優も、そのあとについていく。
(あの王女様は確実に何かを隠してる。何がかは分からないが、用心することに越したことはないだろう。)
優はクラスメイト達の最後尾を、考え事をしながらついていく。
しばらくすると、豪華な飾りを施された大きな扉の前まで来ていた。その扉の中に入ると、青い絨毯が敷かれており、その先にはデップリ太ったオッサンが座っていた。
「よく来たな勇者諸君。我こそがグロリーア王国の王、アルフレッド・ラスティ・グローリアだ。早速だが、勇者殿のステータスを見せてもらおう。」
王がそういうと、人数分の小さい板と、ナイフを、メイドと思わしき人が持ってきた。
「これは?」
クラスメイトのうち一人が聞いた。
「それは、ステータスプレートと言って、自分の血を垂らすことで、自分のステータスがわかる便利なものだ。とりあえず血を垂らしてみよ。」
クラスメート達はそれを聞くと、不安げにナイフで指を傷つけ、ステータスプレートに血を垂らした。
「おお!」
すると、ステータスプレートに文字が刻まれていく。いや、浮かび上がってくると言ったほうが正しいか。
優のステータスは
===============================================
名前:ユウ・ウミハラ
性別:男
種族:人間
レベル:1
生命力:1000/1000
魔力:1500/1500
筋力:200
敏捷:300
防御:200
魔攻:400
魔防:300
運:80
スキル:異世界言語、鑑定
ユニークスキル:還元
称号:異世界の勇者
===============================================
と、なった。高いんだか低いんだかわからないが、ユニークスニルと、称号が気になるため、優は鑑定を使って、まず還元を鑑定してみた。
(鑑定!)
還元:還元する
(うん、説明じゃないね。次!)
異世界人の勇者:異世界から来た勇者に与えられる称号。経験値に大幅補正。
(おお!いいなこれ!)
称号の意外な有用性に喜ぶ優であった。
「おお!これはすごい!」
そのとき、クラスメイトのステータスを順番に見ていた王から歓声が上がった。
「レベル1でこのステータスは素晴らしいですぞ!勇者様!」
彼が見ていたのは勇人のステータスだった。内容は、
===============================================
名前:ユウと・テルモト
性別:男
種族:人間
レベル:1
生命力:800/800
魔力:700/700
筋力:120
敏捷:100
防御:80
魔攻:150
魔防:115
運:50
スキル:異世界言語、剣術、聖魔法
称号:異世界の勇者
===============================================
だった。
(え?低くね?)
そう思いながら、優は王にステータスを見せに行く。
「こ、これは!?」
優のステータスを見た瞬間、王は固まった。なんでも、レベル1だと、だいたいのステータスが50を超えていたらいい方で、生命力や、魔力もせいぜい500程度だという。
「いやはや、このようなステータス初めて見た。おぬしには期待しておるぞ。」
そう言って、王との謁見は終了した。
「明日から、訓練を開始するから、今日はしっかり休むように。」
王からそう言われ、あるものは不安を、あるものは期待を胸に、謁見の間を出た。
優たちは、メイドに連れられ各々に準備された部屋にいった。
「夕食になったらお呼びします。」
メイドはそう言って、部屋から出て行った。
一人残された優は、ステータスプレートをみながら、あることを考えていた。
(あの王女と、王はどうも怪しい。ある程度訓練したら、武者修行とか言って城を出るのがベストか。)
しばらくして、メイドが呼びに来たため、食堂に移動して、夕食を食べた。
その後部屋に帰った後、いろいろありすぎたせいで精神的に疲れたせいかすぐにベッドに入った。
(あ、そういえば武田先生混乱しすぎて空気になってたな。)
そんなことを考えながら優は眠りについた。
あ、飯は、不味くはなかったと言っておこう。
一章はちょっと速足で行きます。と、いうか基本この小説はポンポン展開を進めるため、日常パートなどは割と少なめです。(一章だけだけどね!)
これからも、読んでくれると嬉しいです。