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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
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27

 「お前は誰だ?」


 ユウは鎖につながれている少女に問う。少女は一瞬悲しそうに目を伏せ、すぐにユウに向き合う。


 「私は邪神、神の敵だ。だが、私は…。」


 少女が神だと知り、ユウは殺気を発する。しかし、少女がつづけた言葉にユウは困惑することとなる。


 「私はもともと生命神としてこの世界のために働いていた。」


 少女の言葉に、ユウの頭の中を疑問が支配する。何故まっとうな女神が邪神に?何故ここにいる?様々な疑問が頭をよぎる。


 「ククク。混乱しているようだな。」


 「混乱するなというほうが無理じゃないか?」


 ユウは少女の物言いに、軽口で返す。


 「大体、お前はなぜここにいる?何故邪神になった?お前は生命神だったんだろう?」


 ユウは疑問に思ったことをすべて聞いてみる。


 「お前ではない私にはカミールという名前がある。」


 少女いや、カミールはユウの呼び方が不満のようだ。


 「…カミール、お前はなぜ邪神になった?」


 ユウは再度カミールに問いかける。


 「ふむ、それを話すには長くなるがいいか?」


 「ああ、構わない。」


 ユウは【再現】で椅子とテーブルを再現し、それに座る。


 「その前にこの封印を解いてくれんか?」


 ユウが座ると、カミールが不満げに要求してきた。


 「いいぞ。」


 ユウはただ指をパチン!と鳴らす。


 ガラガラガラ。


 すると、カミールを縛っていた鎖が解けた。


 「へ?」


 カミールはまさか解けるとは思っていなかったのか、呆けている。


 「ほら、座れ。」


 ユウはカミールの分の椅子を作り、座るよう促す。


 「あれは神が作った封印なのだが、どうやって破った?」


 カミールはまだ混乱しているようだ。


 「そんな物簡単だ。あの鎖に刻まれていた封印の術式を無効化して、そのあと鎖を破壊したんだ。」


 ユウの説明に、カミールはポカンとしている。


 「おぬし本当に人間か?」


 「ステータスでは、俺は生物のようなものなんだとさ。」


 ユウの冗談に、カミールはクスクスと笑う。


 「お、笑うとやっぱりかわいいんだな。」


 ユウが何気なくそう言うと、カミールは顔を真っ赤にする。


 「そ、そうかい?そんなこと今まで言われたことないよ。」


 「照れるなって。お前は可愛いぞ。」


 ユウは神を憎んではいるが、神の敵であり、訳ありのカミールだけは心が許せる気がした。さらに、ユウとカミールには神を憎んでいるという共通点もある。まあ、ユウがカミールに惚れているというのが一番の理由かもしれないが。


 「では始めるぞ。」


 カミールは気を取り直して話し始める。


 「まず神についてだが、神はいつも神界にいて、世界を管理するために神域に降り、世界を管理する。」


 「待て、神界と神域の違いは何だ?」


 「分かりやすく言うと、本社と分社みたいなものだ。」


 なぜカミールが地球のことを知っているのかはあえて触れないユウであった。


 「なるほど続けてくれ。」


 「そして、最高神である創造神が役割をそれぞれの神々に分け与え、それが生命神、技神、武神、魔人などになる。」


 「そうすると、神はもともと役職なんかなくて、創造神からもらって初めて役職に就くわけか。」


 「そうだ。」


 本当に会社みたいだとユウは思ったが、そこは突っ込まなかった。


 「それで、私なのだが、生まれながらの生命神という少々イレギュラーな存在だったのだ。」


 「つまり、お前は創造神に役職をもらはなくても生命神だったと。何故だ?」


 「私が絶体神の娘だからだろう。」


 「絶体神?」


 「絶体神とは、全ての神の長、言うならば社長だ。」


 (何故そこで会社に例える!?)


 ユウの突っ込みは心の中にしまっておいた。


 「その絶体神と、最高神から生まれたため、本来役職がないはずの私に、生まれながら役職が付いた。まあ、会社でいうところの七光りで専務になったというところだな。」


 だんだん神たちがサラリーマンのようにスーツを着て仕事をしている姿が想像できた。


 「私は生まれてまだ三千年でまだ子供だし、創造神に力をもらってないのに生命神としての力を使えるし、あまり周りからよく思われていなかった。」


 「それで?」


 カミールは唇をきつく噛み締める。


 「あれは二千年前、私が初めて生命神として世界の生命を管理することになった時だ。」


 カミールはゆっくり話し始めた。


 「最初はみんな分からないことがあったら教えてくれたり、親切だったんだが、五百年たって輪廻の輪を独自に改造したり、種族の特性として寿命を調整したりしたりしていたんだが、それがいけなかったのか、他の神々から疎まれるようになったのだ。」


 ユウはカミールの話を聞きながら、思考を巡らせる。


 「そんな状態が続き、ついに三百年前私は身に覚えのない罪で邪神として下界に落とされた。」


 カミールは悔しそうに下唇をかむ。


 「私はそんな神々が許せなくて、二つの種族を率いて神々に戦争を仕掛けた。それが…、」


 その二つの種族のうち一つの種族について、ユウは心当たりがあった。


 「魔族とドラゴン族だ。」


 ユウは予想通り魔族がカミールの協力者であることは予想していたが、その後に続いたドラゴン族という言葉に驚愕した。


 「ドラゴンはモンスターじゃないのか?」


 「昔はドラゴンもモンスターではなかったんだが。今は違うようだな。」


 ユウはルキが嘘をついたことへのショックで、しばし放心していた。


 「それで、戦争を仕掛けたはいいが、負けてしっまてここに封印されていたんだ。」


 ユウが放心しているうちにカミールの説明が終わった。ユウは先程から気になっていたことを聞いてみることにした。


 「輪廻の輪ってのはやっぱり転生ってことか?」


 「ああ。ちなみに、よっぽど強い力でない限り輪廻の輪をくぐるときに削除されるぞ。」


 それは、死ねばユウの力のすべては失われるということを意味した。


 「それじゃあ、絶体死ねないな。」


 当初の予定では、魂魄魔法で魂にユウの自我を植え付け、何回も何回も死んでは転生しを繰り返し、神をも超える力を手に入れたら神を亡ぼす予定であった。しかしそれができないのであれば、この一生で神をも打破する力をつけねばならない。


 「なんで?人はいずれ死ぬよ?」


 「俺は、神に復讐したい。そのためには、力が必要だ。神をも打破する力が。だから、その力を手に入れる前に死ねないんだ。」


 ユウがそういうと、カミールはポカンと呆けていた。


 「何だよ?」


 「えっと、あなたのステータスを見せてくれる?」


 「俺はユウだ。ほらよ。」


 ユウは自己紹介をして、ステータスを見せる。


 「やっぱり。」


 ユウのステータスを見ると、カミールは溜息をつく。


 「まさか、こんなステータスでは一生かかっても神は倒せないのか?」


 ユウは恐る恐る聞いてみる。


 カミールは一度大きく深呼吸をして、ユウの目をまっすぐ見つめる。


 「いや、逆だ。お前は最高神はおろか、絶体神でさえ手も足も出ないほどのステータスを持っている。」


 「は?」


 「いいか?最高神の平均的なステータスは大体兆を超えるぐらいだ。絶体神でさえ京にも届かない。それをお前は表示できませんだと?神などそこら辺にいるゴブリンがごとく討伐できるだろう。」


 「まじか。」


 「まじだ。それに、この【還元】だが、封印されているな。」


 「封印?」


 「ああ。まず、還元の効果が、『殺した相手のステータス、スキルを奪う。』だよな?ここがポイントなんだが、この世界のレベルアップは、相手のステータス、スキルを本当に少量、0.0000000000001ほど奪い、それをに百兆倍ほどしてステータスを上げる。つまり、ユウの場合相手のステータスをすべて奪えるから、ステータスはものすごいことになっているはずなのだが。」


 「封印されていたからそうでもないと。」


 「ああ、そういうことだ。」


 ユウは封印の話を聞いて、少しイラっとしたが、神よりも強いことに変わりはないため気にしないことにした。

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