26
ちょっと短めです。
百六十一層からの敵は蝙蝠だった。そのためか、このエリアは真っ暗だった。しかし優にそんなものは関係ない。暗闇など関係なしにどんどん先に進んでいき、魔物を見つけ次第すぐに殲滅している。それは、ユウの持つスキルの、【空間把握】のおかげである。
難なく暗闇のエリアをクリアしたユウは、次のエリアに足を踏み入れる。するとそのエリアにいたのは、美しい羽をもったクジャクだった。ユウは一瞬だけその羽に見惚れると、すぐに殲滅を開始した。クジャクの羽は全てユウが回収していた。
次のエリアに出てきたのはライオンだった。ユウは戦闘が面倒臭くなってきていたため、【再現】でライオンの死を再現した。そうすると、ライオンは次々と死んでいく。
「やっぱり便利だなこれ。」
ユウは【再現】のスキルの有用性を再認識した後、次のエリアに降りて行った。
次のエリアで出てきたのはグリフォンだ。グリフォンは伝承の通り、鷲の上半身にライオンの下半身を持った魔物だった。鳥の部分だけならうまかった。
「もう絶対に突っ込まない。」
ユウはボス部屋の扉をゆっくり開ける。
「俺の名はルシファー!とりあえず死ねクソ野郎!」
扉を開けた瞬間に何かが襲い掛かってきた。ユウは冷静に襲い掛かってきた何かの首をはねる。
「もう、まともなやつはいないのか。」
ユウは全てをあきらめたような顔をしながら次のエリアに向かう。
ユウは今ボス部屋の前にいた。このダンジョンは、最初のエリアを除いてある規則性があった。七つの大罪になぞられているという規則性が。魔物も、悪魔も、七つの大罪という共通点でいえば同列とされる。では、一番最初のあのサルは何だったのか?そして、この最下層のボスとはいったい何なのか。その疑問が、ユウを最下層のボス部屋に入れることを躊躇わせた。
「よし、行くか。」
ユウは覚悟を決め、扉を開ける。
「ヨウ!ヨウ!俺様復活!さらなるパワー!お前絶望!俺は渇望!」
最初のエリアのサルがいた。もちろんそっと扉を閉めた。
そして扉から離れると、部屋ごと消し飛ばすための魔法を構築する。
「タケミカツチ一京分の一。」
ユウは今自分が使える最強の魔法、『タケミカツチ』を、本来の強さの一京分の一の強さで放った。
ズドーン!
その威力はダンジョン全体を揺るがし、地上では「ダンジョンな魔物が出てくるのでは!?」と、大混乱に陥った。勿論それをユウが知るはずもなく、ボス部屋があったところを確認する。
「おおー。これすごいな。」
ユウはボス部屋の惨状を見ながらつぶやく。ボス部屋二は何も残っていなかった。さっきのボスも、ちらっとしか見えなかったが、確かにあった禍々しい装飾品も何もかもなくなっていた。
「ん?階段?」
しかし、ボス部屋の中央あたりに階段を見つけた。とりあえずユウはその階段を下りてみる。ユウはここが最下層だと思ったが、違ったようだ。
「まだダンジョンは続くのか。」
ユウがそう呟くと、何処からか声が聞こえてきた。
「いや、あそこが正真正銘の最下層。ここは隠し部屋だ。」
鈴のようなきれいな声が響いた。ユウは警戒心をマックスにして、声がしたほうを見る。
「お前みたいなガキがこのダンジョンをクリアするとはな。」
そこには何本もの鎖につながれた少女がいた。その少女はじっとユウのほうを見つめる。
「神が憎いか?」
少女が発した言葉に、ユウは少女をまじまじと見つめる。
「私と同じ目をしている。」
少女はそう言ってほほ笑んだ。
ユウはその笑顔を一生忘れることはないだろう。
ユウは少女に惚れましたね。(ニヤニヤ)




