表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第一章 レムナット
26/148

24

 ユウがボス部屋に入ると、そこには誰もいなかった。ユウはあたりを見回す。すると、部屋の隅に蹲ってぶつぶつ言ってる何かを見つけた。


 「私以外の魔物たちは外に出られるのになんで俺だけ…。あ?お客さん?」


 その何かはユウの存在に気づき、顔を上げる。その顔は綺麗に整っており、口調から男だと分かるが、女性と言われても違和感がない。


 「お前も外を自由に歩けるんだろ?妬ましい。」


 その魔物からはすさまじい嫉妬の感情を感じる。


 「俺は悪魔の中でも最高位の力を持つ、七つの大罪の一人だ。」


 ユウはその言葉に心当たりがあった。現代の『カトリック教会のカテキズム』では、伝統的に罪の源とされている七つの欲望がある。傲慢、嫉妬、怠惰、色欲、強欲、暴食、憤怒。この七つの感情のことを、「七つの大罪」としている。そして悪魔にも、七つの大罪を冠する者たちがいる。こいつはその悪魔のうち一体、『嫉妬』を関するレヴィアタンだろう。


 「俺の名前はサタン。」


 「なんでだよ!?」


 ユウの鋭い突込みがサタンの腹に入る。


 「グハア!」


 サタンは血を吐き、その場に倒れこんだ。さて、七つの大罪を関する悪魔だが、『嫉妬』の名を冠する悪魔は、リヴァイアサンであり、サタンは『憤怒』を関するはずである。


 「お前のその力が妬ましい…。」


 地球では『憤怒』の名を冠した悪魔が、一度も起こることなく死んでいった。


 「何だったんだこいつ?」


 ユウはとりあえず先に進むことにした。



 ユウは四十一階を探索していた。四十一層は海ステージで、階段を下りた先には船があったが、ユウは船を使わず、海の上を歩いていた。するとどこからか、美しい歌声が聞こえてくる。歌声が聞こえたほうを見ると、美しい人魚がいた。その人魚は歌いながらユウに近づいていく。ユウは人魚が発する歌声に載せてあった魔法によりなすすべなく捕食され…、ない。


 「死ね。」


 ユウはただ一言そういうと、人魚がいる海へと雷魔法を放つ。


 水は電気を通しやすいと思われているが、それは誤りである。実は純水に近い水ほど、電気を通しにくく、純水となると完璧な絶縁体となる。水が電気を流す原理としては水に含まれている不純物が電気を通しているだけなのだ。


 そこで考えてみてほしい。海水には、塩や、その他多数の成分を含んでいる超不純水だ。そんなものにユウの電気魔法を流すとどうなるか。


 「「「「「「「「「「ギャア!」」」」」」」」」」


 こうしてユウはこの五階層全てをクリアした。



 次に出てきたのは蛇型の魔物だ。大きな蛇も、毒蛇も様々な種類の蛇がいた。蛇が大量に出てくることに生理的な嫌悪感を抱いたユウは、あっという間に蛇も全滅させる。蛇の肉はなかなかおいしかったとユウはのちに語る。


 そして次のエリアだが、犬が出てきた。ユウは猫派だったため、気にせず殲滅する。


 次のエリアは、何と猫が出てきた。ユウは一匹も殺すことなく、撫でまっくたあとボス部屋に入った。


 「ん?何だ客かよめんどくせえ。それにしてもそんな嬉しそうな顔して入ってくるとは。いいことでもあったのか?ああ…、やっぱいいや聞くのもめんどくせえ。」


 ユウはその男を観察していく。ひげも髪も伸ばし放題で元の顔はわからないが、イケメンの風格を出している。


 「俺の名前はレヴィアタンだ。」


 「嫉妬しろや!」


 このレヴィアタン、明らかに怠惰であったにもかかわらず、嫉妬の悪魔の名前を関していた。


 「グボア!」


 「何なんだこの迷宮は!?」


 ユウの突っ込みにレヴィアタンは即死する。ユウはあきらめつつ、次の階層に進む。



 次の階層では、いつもはすぐに遭遇する魔物に遭遇しなかった。そのまま十分歩だ歩いたところ、後ろから馬の鳴き声が聞こえてきた。


 「このエリアは馬の魔物が出るのか?」


 ユウはそう呟きながら後ろを振り返る。そしてユウがそこで見たものとは…。


 「は?」


 ロバであった。それも、馬のような鬣があり、馬のような大きさであったが、耳や、尻尾の形がロバのそれだった。


 「馬じゃねえのかよ!?」


 ユウは【雷帝】を振り下ろす。


 ドゴーン!


 「「「「「ヒヒーン!」」」」」


 ロバは全滅した。ユウは次のエリアに行くため、その日は寝ずにダンジョンを進んだ。


 次のエリアで出てきたのは牛だ。ここでは特に何もなかった。本当だ。ユウはバーベキューなどしていない。本当ったら本当だ。


 次のエリアは熊が出てきた。ユウは熊の毛皮を乱獲していった。そして熊は絶滅した。(そのエリアでだけ。)


 次のエリアは、このエリアの一番下にボス部屋があることもあって、慎重に進むことにしたユウは、ゆっくり階段を下りる。


 「ギャア!」


 出てきたのはフェニックスだった。


 「早速エリアボスかよ!」


 ユウはそのフェニックスが、ダンジョン内のエリアのボスだと思い、攻撃を開始する。


 ほどなくしてフェニックスが息絶えたので、ユウは先に進む。


 「ギャア!」


 またフェニックスが出てきた。


 「またかよ!」


 その後、何十回も戦闘したが、結局出てきたのはフェニックスだけだった。


 「おいおいまさかこのエリアの魔物は全部フェニックスとか言わないよな?」


 結論から言うと、このエリアの魔物は全てフェニックスだった。


 「やっとボス部屋に着いた。」


 ユウはボス部屋の扉を開けた。


 「ああ!もっと高い宝石が欲しい!もっといいものが食べたい!もっと高価な服を着たい!何なんだここは!我にとって地獄ではないか!ん!?客か!?とりあえずお前の全財産と持ち物を我、ベルフェゴールに差し出せ!」


 「怠惰しろや!」


 ユウはもう容赦一切のない突込みを入れる。


 パン!


 ベルフェゴールはユウのパンチを受けて塵となった。


 「もうヤダ。」


 ついに泣き言を言い始めたユウであった。

前回と今回それぞれの階層で出てきた魔物ですが、それぞれ意味はあります。


ユニコーン、ドラゴン、オオカミ、サルは、七つの大罪の『憤怒』を司る動物とされ、人魚(マーメイド。)、蛇、犬、猫は、『嫉妬』。ロバ、牛、熊、フェニックスは、怠惰を司ります。



感想待ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ