16
戦闘シーンがかなり雑です。
さて、ユウが魔王城で、レナの護衛の仕事をするようになったころ、ユウことを皆、『魔王様がそばに置きたいから護衛にした一般人』として認識していた。
それでもレナのことを思い、誰もユウが城にいることに反対しなかった。むしろ城にとどまることを推奨するものもいた。
しかし、ユウがレナに勉強を教えたり、文官の計算ミスを指摘したりしたことで、ユウに対する評価も変わっていった。曰く、『頭の切れる好青年。』だとか。
そんなある日、城に兵士が走りこんできた。
「報告します!砂漠の東より、大量の魔物がこちらに向かってきております!」
「魔物氾濫か!?」
魔物氾濫、生物災害ともいわれており、本来群れるはずのない魔物たちが、群れを成して町を襲う。まさに、災害だ。
「規模はどのくらいだ!?」
文官の一人が、怒鳴りつけるような口調で報告をしに来た兵士に聞く。
「およそ二千です。」
兵士の言葉に、文官はどこかほっとした顔をした。
「兵士をすぐに王都防衛に回せ。それと、ハンターギルドにも応援を要請しろ。」
文官は素早く指示を出す。
「大丈夫なのか?」
レナが不安げに文官に聞く。
「ご安心ください陛下。我が国の兵士も、ハンターたちも、みな優秀です。」
文官の言葉に、レナは一応安心し、この魔物氾濫の行く末を見守った。
一方そのころ前線では、みな緊張し、口数が極端に少なくなっていた。
「お前ら!魔物はすぐそこまで迫っている!それも、数はたったの二千だ!恐れることはない!お前らの力を見せてやれ!」
レスが集まった魔族の兵士やハンターたちを鼓舞する。本来こういうものはもっと上官がする役目なのだが、レスの場合、下手な上官よりも民衆に人気があるため、この約目はレスがやることとなった。
レスの鼓舞を聞き、少しマシになったのか、兵士やハンターたちの顔が、決意に満ちたものとなった。
しばらくすると、魔物たちが見えてくる。
「来たぞ!魔法部隊、構え!打て!」
十分引き付けてから、一斉に魔法を放つ。
ドゴーン!
地響きとともに魔法が着弾する。しかし、それで倒された魔物は、せいぜい百といったところか。魔族領は、魔物の数が少ない代わりに、魔物の強さが人間が住むところのそれに比べ、圧倒的に強い。
魔族たちは、迫りくる魔物たちを魔法で吹き飛ばし、剣で切り裂き、槍で突く。
そうして、数時間ほど戦った後、魔物は全滅した。
「はあ、はあ。被害は?」
「死者は兵士に五十名、ハンターは、二十名ほどです。重傷者は、その十倍入るかと。」
レスが部下に聞く。人間の町で魔物氾濫が起きた時とは比べ物にならないほどの被害の少なさだが、魔族は人間と比べてその数が少ないため、たったの数十二んであろうと、それは大きな被害なのだ。
「そうか…。」
レスはそう言って目を閉じる。
「お、おい!何だあれは!?」
その時、ハンターの一人が魔物がやってきた方角を見て、大声を上げる。
「あ、あれは…。」
レスや、他の兵士やハンターがそちらを見ると、先程とは比べ物にならないほどの量の魔物が押し寄せてきた。
「ほ、報告します!魔物の大群が、またも発生しました!数は一万!いえ、まだ増えています!」
二千の魔物でも、多数の重軽傷者が出て、怪我がないものでも満身創痍。もはや、勝ち目は少ししかなく、それもここいる全員の命を懸けることになる。
「グオオ!」
そこにいる兵士やハンターが王都を守るために死を覚悟していると、腹に響くような声が聞こえてきた。
「あ、あれは…。」
それを見たうちの誰かがつぶやく。
「フレイムジャイアント。」
この世界には、三大獣王と呼ばれる種族がある。ドラゴン、龍、そして巨人だ。フレイムジャイアントは、その巨人族のなかで、中位の巨人族で、フレイムジャイアント一体で国が一つほろんだという記録がある。ちなみに、ドラゴンと龍が分かれている分かれてカウントされている理由は、まったく別の魔物と判断されているからだ。
「終わりだ。」
一人の兵士がそう呟く。その言葉は、そこにいるすべての物の気持ちを代弁していた。
「まだ終わってねーよ。」
不意に上空からそんな言葉がかけられた。そこにいた全員が、一斉に空を見るそこには、空に立っているユウがいた。
「そ、空に立っている?」
そこにいた兵士や、ハンターは状況を飲み込めていない。空を飛ぶ魔法ならあるが、空に立つ魔法など確認されていないからだ。ユウは別に特別なことはやっていない。ただ、足元に結界魔法で障壁を張り、それに乗っているだけだ。
「ユ、ユウ!ここで何をしているんだ!?ここは俺たちが時間を稼ぐ。陛下を連れて逃げろ!」
レスがユウに声を開ける。が、ユウはスッと右腕を魔物に向けると、レスのいるほうへ顔を向け、返答する。
「断る!」
その答えに、レスは絶句する。ユウはそんなことお構いなしに魔法名を呟き、魔法を発動させる。
「雷帝。」
ユウが魔法名を呟くと同時に、ユウの体が雷に包まれる。
「な、なんだ!?」
レスたち兵士や、ハンターたちは、あまりの光に、顔を覆った。
「さて行きますか。」
雷が霧散し、出てきたのは全身を雷に変えたユウだった。
「な、何だそれは?」
レスは、今日何度目かもわからない疑問をぶつける。
ユウはニヤッと笑うと、レスに言う。
「俺の魔法だ。」
ユウは【イカヅチ】を肩に担ぎ、魔物の群れに突っ込む。
「お、おい!待て!」
レスはユウを引き留めようとするが、そもそも上空にいる優を止める手段はない。
「くそっ!」
レスは悪態をつくと、ハンターたちを鼓舞する。
「お前たち!今、一人の若者が戦っている!しかも、その若者は最近この国に来たばかりだ!なのに、命を懸けて我々のために戦っている!俺たちはこのままここにいていいのか!?いや、良くない!行くぞ!俺に続け!」
そういってレスは剣を抜き、魔物の群れに突っ込んでいく。
そのころユウは、魔物のいるところにたどり着いた。
「ガアアア!」
早速巨人がユウに拳を振り下ろす。
「ふん。」
ユウはそれを、右腕一本で受け止める。
「ガ!?」
巨人は、まさか受け止められるとは思わなかったのか、困惑している。しかし、ユウの雷の体に確かに巨人の拳は止められている。これは、ユウが自分の雷の魔法を相手の体の中に入れ、体の動きを乗っ取っているのだ。これは、【雷帝】を発動し、体が雷になったからできることである。体が雷になったことで、発動した雷の魔法を手足のように動かすことができるのだ。
とにかく、ユウは受け止めた拳をつかみ、フレイムジャイアントを持ち上げる。
「ガ!?」
フレイムジャイアントはもがくが、無駄なことだ。
ズドン!
ユウが雷を落とすと、フレイムジャイアントはあっけなく絶命する。
「雷殿。」
ユウは、今まで一度も使ったことがなかった【イカヅチ】の能力を使ってみることにした。すると、ユウを、正確には【イカヅチ】を中心に、黄色い結界のようなものが張られていく。その結界が張られ終わるころには、魔物は全て結界の中に入っていた。
「剛雷。」
ユウは、魔法名を唱える。すると、ユウの頭上に魔方陣が浮かび上がる。その魔方陣が一瞬眩く光ると、魔法陣から雷が落ちていく。
「雷龍の乱舞。」
ユウはさらに魔法名を呟く。すると、落ちた雷が龍へと姿を変え、魔物たちを蹂躙する。
ほどなくして、魔物たちは全滅した。
「うおおおおおおおおお!!!!」
ユウが地面に降りると、気合たっぷりでレスたちがやってきた。
「ってあれ?魔物は?」
ユウと合流してすぐに、魔物がいないことに気づき、レスが聞いてきた。
「ああ、もう全部倒したよ。」
ユウが笑いながら言うと、レスたちはしばしの間呆然とした後、ユウに聞いてきた。
「一人で?」
「ああ。」
「さっきの魔法は?」
「【雷帝】俺のオリジナルだ。」
「雷帝…。」
「雷帝ユウ。」
誰かが不穏なことを言い始めた。
「いや、俺が雷帝じゃなくて、魔法の名前が雷帝なの。」
「「「雷帝!雷帝!」」」
ついに雷帝コールが始まってしまった。
「お前ら、やめろ!」
ユウは顔を真っ赤にさせてやめさせようとするが、誰一人として聞いている者はいない。
この日、魔国の英雄、雷帝、ユウ・ウミハラが誕生した。
城に帰ったユウは、戦闘でというより、雷帝コールをされたことに疲れ、ベッドに寝転がる。
「そういえば、今日は結構魔物を殺したな。ステータスってどうなってるんだ?」
ユウは、自分に鑑定をかけてみる。
===============================================
名前:ユウ・ウミハラ
性別:男
種族:人間のようなもの
レベル:295
生命力:表示できません
魔力:表示できません
筋力:表示できません
敏捷:表示できません
防御:表示できません
魔攻:表示できません
魔防:表示できません
運:763962886
武術系スキル:全部あるんじゃない?
魔法系スキル:全部ある(多分。)
生産系スキル:武器作成LvMAX
防具作成LvMAX
魔道具作成LvMAX
修繕LvMAX
錬成LvMAX
家事LvMAX
・
・
・
その他のスキル:異世界言語LvMAX
鑑定LvMAX
交渉LvMAX
詐欺LvMAX
全耐性LvMAX
眷属化LvMAX
・
・
・
ユニークスキル:還元Lv--
武才Lv--
魔才Lv--
魔法剣LvMAX
再現Lv--
絶体記憶Lv--
重力眼LvMAX
千里眼LvMAX
魔力眼LvMAX
虚無魔法LvMAX
合成魔法LvMAX
予知眼LvMAX
===============================================
眷属化:相手と契約することにより、眷属にできる。
魔力眼:魔力の流れを見ることができる。常時発動。
虚無魔法:虚無属性の魔法が使える。
合成魔法:二つの属性の魔法を一つの魔法として発動できる。
予知眼:魔力を目に込めることで、未来が見える。
「なんか、変なのが見えると思ったら魔力か。」
ユウは、ステータスの表示と、スキルの表示を華麗に無視すると、一つ溜息をついてもう一度ステータスを確認する。
「はあ。」
ユウは盛大な溜息をつく。
「鑑定仕事しろよ。」
どこかずれているユウであった。
夢の日まで、あと三十五日。