142 雪姉とカミール
「雪姉が、カミール・・・?」
俺はカミュラに問い返す。
「そうだ。」
カミュラは短くそう返す。
「それに、カミールだった時の記憶ももう戻っているだろう。」
「!?」
その言葉に、俺は目を見開く。
「何故それを知っている?」
「何故って、カミールの記憶を取り戻させたのは私だ。あのステータスを授けた時にもうカミールは記憶を取り戻している。」
俺はそれを聞いて、黙り込む。
「彼女は・・・。」
しばらくして、俺は口を開く。
「雪姉なのか?それともカミールなのか?」
「そうだな。彼女はカミールであり、浜野雪でもある。お前が海原優であって繭澄椎名でもあるように。」
「だったらなぜ・・・!?」
「いまだお前といるのか・・・、か?」
「っ!?」
俺はカミュラに図星をつかれ、黙り込む。
カミュラは溜息をつくと、立ち上がる。
「お前は雪と話し合うべきだ。」
カミュラはそう言って、神界に変えるべく魔法を発動させる。
「ああ、そうそう。」
カミュラは俺の瞳をじっと見つめる。
「雪。いや、カミールはお前のことなど恨んでいない。」
カミュラはそう言って姿を消した。
「ん?」
カミュラが立っていたところには一枚の紙が転がっており、俺はそれを拾い上げる。
『私の依頼を完遂してくれてありがとう!これでこの世界から差別が無くなったよ。
君には本当に感謝している。
カミュラ。』
(これは一番最初に言うべきことだろうが!)
俺の心の中で叫び声をあげる。
場所は変わって俺は雪姉、の部屋に来ている。
俺はなかなか覚悟が決まらずに、部屋の前でうろうろする。
やがて覚悟を決めた俺は思い切って部屋のドアをノックする。
「はーい。って椎名?どうしたの?」
いつもは使用人に雪姉を呼びに行かせていたため、俺がこうやって雪姉の部屋に来ることはほぼない。それに加え俺の顔は自分でも分かるほどに思い詰めているため、雪姉は心配そうに俺に聞く。
「話がしたいんだ。入っていいか?」
「う、うん。いいよ。」
雪姉は俺を部屋に招き入れると、部屋にあるソファーに座る。俺もその向かいに腰を下ろす。
「「・・・。」」
向かい合う俺達に会話はない。俺はなかなか話を切り出せずに、雪姉は俺の話を聞こうとしているからだ。
やがてその静寂に耐えられなくなった俺は、直球で聞いてみることにした。
「雪姉がカミールだって本当?」
「・・・・お姉ちゃんに聞いたのね?」
しばしの沈黙の後、雪姉はそう言った。
「・・・おれの事を恨んでいないの?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
「全然。それに、前にも言ったでしょ?私はあなたのことを愛しているって。」
そうだ。雪姉が自分のことを恋人にしろと言ったのは記憶が戻ってからだ。
「じゃあ、元々・・・。」
「うん。私はあなたのことが好きだったよ。」
雪姉はそう言って優しく笑った。
「あ!で、でも、椎名が私のこと嫌いだったって言うなら、私は消えるよ?」
雪姉が慌ててそう言うので、俺は雪姉を抱きしめる。
「俺も、雪姉が・・・、いや、カミールのことが好きだったよ。」
「椎名!」
この後、俺は雪姉にめちゃくちゃ犯された。
多分次で終わりです
読んでくださってありがとうございました。