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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第三章 二度目の異世界
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141 パルスの悪夢2

 雄大が魔導銃を構えると同時に、俺の機体は刀を担ぎ突進する。雄大が撃った弾丸は俺に機体に一発も当たることはない。


 俺の機体があと数歩で間合いに入ろうとしたとき、雄大はおもむろに持っていた銃を放り捨てた。


「死ねええ!」


 雄大の機体はその巨体で背負っていた巨大な大剣を握りこむと、俺の機体に向かって振り下ろす。


 ドゴオオオン!


 派手な音と共に土煙も盛大に巻き上がる。


「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」


 雄大はなおも大剣を振り下ろす。


 やがて、雄大は満足げに大剣をおろす。サラハード王国の兵士たちからは大歓声が上がり、もう祝勝ムードになっている。


 しかし、そこで雄大は違和感に気が付く。レムナットの兵士がみじんも動揺していないのだ。


「まさか!?」


 雄大は先程椎名の機体が三十の機体の一斉掃射くらって無傷であったことをを思い出す。


 雄大は大剣の腹で砂埃を払おうと横薙ぎに振るう。


 砂埃が払われ、地面が露になる。本来ならば椎名の機体がぼろ雑巾のように横たわっているはずの地面には果たして・・・。


「何もないだと!?」


 そこには何もなかった。ボロボロになった椎名の機体どころか、椎名の機体の破片すら落ちていない。


「よお。お前、何を探しているんだ?」


 そこに、雄大の頭上から声が掛かる。


 その声は雄大が最も憎む男の声。絶対に許せない男の声。雄大はその現実を受け止めるのを拒否するかのようにゆっくりと頭上を見上げる。


「探すの、俺も手伝おうか?」


 コクピットは機体に埋まっているため表情は分からないが、声だけでも厭味ったらしい顔をしているのが分かった。--事実、厭味ったらしい顔をしたいていたのだが。


「嘘だああ!」


 雄大は大剣を足元に放り捨てると、先程捨てた魔導銃を拾い上げる。


 しかし、そんなものが椎名に聞くはずがない。椎名はもはや避けたり防御したりすることもせずにただ空中に佇んでいる。


 やがて弾丸がつくと、雄大はまた武器を大剣に変える。何のために武器を変えたんだと言いたいが、雄大は必死なのだろう。


 俺は機体を浮かせていたブースター(重力魔法を使ったんじゃロマンがないだろう?)を切り、雄大の機体に向かって落下する。


「椎名アアアアア!」


 雄大は雄たけびと共に俺を両断しようと大剣を振る。


「脆いな。」


 俺は落下の勢いも合わせ、全体重(機重?)を乗せ、刀を振るった。


 この武器の衝突は、すぐに終わった。俺の刀がまるで熱したナイフでバターを切るように抵抗なく雄大の機体の大剣を両断したのだ。


「どうする?まだやるか?」


 俺は刀を構えて雄大に問いかける。


「・・・・・・・・。」


 雄大は勝てないと悟ったのか、機体を脱力させる。


 俺はコクピットの中で満足げに頷くと、コクピットを開け、サラハード軍に呼びかける。


「サラハード軍よ!投降しろ!負けを認めるのであればこちらから何かをするつもりはない!」


「椎名!」


 俺がサラハード軍に呼びかけていると、紫音から俺の機体に通信がきた何やら切羽詰まっているらしい。


「どうし・・・。」


 俺が何があったのか問おうとすると、強い衝撃と共に俺の体が宙に放りだされる。


「ガッ!」


 俺は背中から地面に激突してしまい、肺の空気が全て外に放出される!


「貴様!」


 味方の一人が雄大に攻撃しようとするが、俺はそれを止める。


「やめろ!」


 雄大は俺が生きているとは思っていなかったのか、少し動きを止める。


「これでも生きているなんて。君は人間ではないんだね。」


「なんだ。お前は俺のことをまだ人間だとでも思っていたのか。」


 俺の答えに、雄大がまたもや拳を振り上げる。


「死ね!」


 雄大は拳を振り下ろす。


 ドン!


 確かな手ごたえ。椎名は先程吹き飛ばされたときのダメージが残っていたのか、避けようともしなかった。


「なんだ。見かけのわりにはパワーはないのか。」


 再び勝利を確信した雄大に、突如声がかけられる。


「ば、化け物め。」


 声をかけたのは勿論椎名だ。


 椎名は先程いた場所と変わらないところにいた。それも、雄大の機体から繰り出されたパンチを片手で受け止めて。


「残念だよ。同郷の人間はできれば殺したくはなかった。」


 俺はそう言って魔力を練る。


「カグツチ。」


 その日、一本の炎の柱がパルス平原に立った。それは多くの町や国から目撃されたという。

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