135 終戦
ムガシル帝国の航空部隊をたやすく撃破した俺達は、旋回してレムナットへと帰還する。その際、俺だけはムガシル帝国の城へと飛んだ。
俺が城に近づくにつれ、城の様子が鮮明に見えてきた。
航空部隊が負けるとは思っていなかったのか、城にいる兵士は狼狽え、他の侍女や文官などはどうしたらいいのかわからないようでオロオロしている。
俺は城の中庭に戦闘機を着陸させる。飛空石を使っているので、地球ではあり得ないほど静かに着地することができた。
外に出ると、俺はムガシル帝国の兵士に囲まれていた。
「おとなしくしろ!」
そう言って兵士は剣を突き付けてくるが、俺にそんな剣などなんら脅威にはならないので、俺は無視して歩き出す。
「止まれ!」
今度は槍を持った兵士が俺を制止する。
「止まれと言っているだろう!」
俺が無視をして歩き続けていると、しびれを切らした兵士の一人が俺に剣を振り下ろした。俺は無抵抗にその剣の刃を身に受ける。
「なっ!?」
しかし、当然俺の体に傷がつくことはない。剣は俺の体を傷つくことなく俺の皮膚と接触している。
俺はそのまま歩み続ける。先に行かせまいと兵士たちが槍で突き、メイスを振り下ろし、剣で切りつけるが、倒れるどころかかすり傷一つつかない。
王がいるであろう謁見の間に着くと、俺は無駄な攻撃を続けている兵士たちを始めて正面から見据える。
「お前ら、もうどっか行けよ。」
はたから見たらただうっとおしいからどっかに行けと言っているように聞こえるが、これを言われているものからしたらたまったものではない。なぜなら、俺はこの言葉に威圧を乗せて言ったからだ。
俺は何も言わずに固まってしまった兵士たちを尻目に謁見の間に入った。
「お前が皇帝か?」
王座に座っていたぶくぶく太ったおっさんに俺はそう問いかける。
「い、いかにも。私こそがこのムガシル帝国の皇帝、ファット・ハラ・デル・ムガシルである。」
精一杯威厳を出そうとしているらしく、偉そうな口調でそう言っているが、体が小刻みに震えている。
それにしても、こいつの名前日本語にすると『腹出る太る』じゃないか。名が体を表すとはまさにことだな。
「俺がなぜここにいるかわかるか?」
俺は一応聞いてみる。
「ふ、ふん!降伏するというなら聞いてやってもいいぞ!」
どうやらこの皇帝は容姿だけでなく頭も悪いらしい。
「はぁ、まあ良い。こちらの要求だけ簡潔に言おう。」
俺は溜息をつきながら要求を皇帝に突きつける。
「もう二度とレムナットに危害を加えるな。もし危害を加えた場合・・・。」
俺は威圧を発動させ、皇帝を睨む。
「残念だがこの国を潰すことになる。」
皇帝はどうやら俺の威圧で気を失ったらしく、俺の言葉を最後まで聞いたのかはわからなかったが、俺はとりあえず要件は伝えたのでこの場を去ることにした。
その後、このムガシル帝国がレムナットに対して軍事行動をとることはなかった。