131 クーデター
先日俺には一人の妻と、六人の恋人ができたわけだが、レナと雪姉に関しては想定外だった。詩帆や紫音達は何となくそうなんじゃあないかと思ったが、まさかあの二人に愛をささやかれることになるとは思ってもいなかった。
とりあえず、レナは晴れて俺の恋人となり、ルキは俺の妻へと戻った。その際、レムナットの民ではない亜人や魔族たちから反発があったが、そんなものは俺の力でねじ伏せた。
そうそう、レナと雪姉に何故俺を好きになったかを聞いたら、レナは顔を真っ赤にしながら「一目惚れよ」と言った。雪姉は「長い時間過ごしていくうちに、私の中の愛情が家族としての物から異性としての物に変わったのよ。」と返された。返された俺も、顔を真っ赤にしながら小さく「ありがとう」とお礼を言った。
その話は置いといて、今問題になっているのはデートの事だ。俺を含め、この魔族の国や亜人の国での人間の風当たりは強い。レムナットからの転生者はむしろ歓迎されるのだが、それ以外の者からは毛嫌いされる。
一応それを解決することもできるが、かなりの力技になるし、かなりの労力を使うので出来ればやりたくはない。
まあ、本当に切羽詰まった状況にならない限りその手段を使うことはないので、一応の保険という事にしている。
俺はそんなことを考えながら今日もレナ達と喋っている。何故謁見の間でかと言うと、特に理由はない。なんとなくここに集まって、なんとなく喋っているだけだ。
「魔王レニーナ!」
俺達が謁見の間でぺちゃくちゃとおしゃべりをしていると、謁見の間の扉が勢いよく開かれた。
俺達の視線は自然と謁見の間の扉を開けた人物、デュークをに集まる。
「なんだ、デュークか。なんかようか?」
俺は面倒くささを滲ませた声をデュークに返す。
「な!?君にはこれが見えないのかい!?」
デュークはそう言って、デュークの後ろに控えていた千を超える兵士を俺に見せつける。
「それがどうした?」
俺は何でもないように返す。いや、実際に千や二千ぽっちの兵士などは何の問題にもならない。
「ふっ!強がっても無駄だ!」
デュークは胸を張ってそう言った。別に強がっているわけではないのだが、彼にはそう映っているらしい。
「単刀直入に言おう!その王座を明け渡せ!レニーナ・ヴォン・デハート!」
「いいわよ。」
「そうか、拒むというなら・・・って、え!?」
「だから、いいと言っているのよ。この王座をあなたにあげるわ。」
レナはそう言って、王座から飛び降りる。
「ルキ、あなたもこんな風に渡したらいいじゃない。」
「ふむ、確かにそうだったな。では、渡すとするか。」
言っていなかったが、ルキがこの魔族の国に来た理由はクーデターで国から逃げてきたからだ。ちなみに、龍人たちはルキについてきた。
「じゃ、この国はもうあなたの物よ。頑張ってね。」
レナはそう言って謁見の間を出る。俺達もそれに続くが、最後に出た俺はデュークの横を通るときに、ニヤリと口角を吊り上げる。
デュークはそもそもこのクーデターをレナと結婚するためにやったのだ。本当なら王座をレナにそのまま座らせる代わりに婚約するつもりだったらしい。この情報は城の中を探索していたら偶然聞いてしまったものだ。
「秘密の話ならもう少し防音がしっかりしていると殺せしたほうが良い。」
俺はそう言ってデュークの横を通り抜ける。
「くそおおおおおお!」
デュークの咆哮が城の中を駆け抜けるが、俺にはもう関係の無い者のことをこれ以上気に掛ける必要はない。
しかし、まさかこんなに早くあの作戦をすることになるとは思わなかった。
俺達は中庭に出ると、魔法の準備を始めた。