129 獣王キア
今日、朝起きたらレナの使い(レムナット出身)が俺の部屋を訪れ、謁見の間に来るように言われた。なんでも、レナが呼んでいるらしい。
俺は朝食を食べると、早速謁見の間に向かう。
「来たか。」
謁見の間の扉を開けると、豪華な服を着たレナがいた。俺はレムナットにいた時からレナが豪華な服を着ていた記憶がなかったため、かなり驚いた。
「む。やはり私にこんな服は似合わないか?」
レナはそう言って着ている服の袖を摘まむ。ちなみに、レナが着ているのは真っ赤なパーティードレスだ。露出は少ないが、体のラインが出るような作りになっており、レナの女としての魅力が出ている。勿論そのドレスはレナによく似合っていた。
「いや、綺麗だったから見惚れていただけだ。」
俺は少し落ち込んでいるレナにそう言って元気づける。レナは俯いて何かを呟いている。
「で、どうしたんだ?そんなにいい服を着て。何かあるのか?」
「あ、そうだった。椎名、今から獣王が来るんだけど、椎名にもあってほしいの。」
レナは顔を上げ、要件を言った。ほんのり顔が赤いのは、ドレスがきついからだろうか?でも、ドレスがきついからって顔が赤くなるか?まあ、いいか。
「獣王?それって獣王キアの事か?」
俺は王城で少しだけ習った知識を披露する。
「そう、その獣王キア。今後の事を話し合うためにこの国に招いたんだよ。それで、多分あなたの事について聞かれると思うんだ。ほら、亜人の中でも獣人って特に戦闘が好きな種族だから。」
「分かった。で、その獣王はいつ来るんだ?」
「今だよ。」
「は?」
「今。」
「今ってどういう・・・。」
「レニーナ来たぞ!」
俺がレナを問い詰めようとした瞬間、謁見の間の扉が開かれる。
扉を開けて入ってきたのは一見するとただの人間のように見えるが、腕に龍の鱗がある。恐らく、龍の獣人、いや、龍は獣じゃあないから龍人か?
とにかく、その龍人は女だった。銀色の髪の毛を腰まで伸ばしていて、瞳の色は金色。華奢というわけではないが、たくましくもなく、ほどほどに筋肉をつけている。
「ルキ。」
そこにいたのは、俺の前世での妻、龍帝ボヴァルキアだった。
「む?お主なんでその名を知っておるのだ?その名は我が同胞と、我が夫以外は呼んではならぬ。言い直せ。」
「それなら、俺はお前のことをルキと呼ぶ権利があると思うが?」
「お主聞いておったか?我の同胞と夫以外・・・。」
「カシム・シンドラッド。」
「な、何故その名前を・・・!?」
「俺がその転生体だったら?」
俺の言葉にルキは唖然とする。しかし、すぐに我を取り戻し、恐る恐る俺に問いかける。
「カ、カシムなのか?」
「ああ、久しぶりだな。ルキ。」
「カシム―!!!!!」
ルキは俺の胸に飛び込んでくる。と言いたいところなのだが、俺の身長が足りないため俺がルキの胸に抱かれることになる。
「う、うええええ。会いたかった、会いたかったよおおお!」
ルキは俺を胸の谷間にうずめながら、大号泣した。
「何これ?」
そして、俺達はずっと他にも人がいたことに気が付かなかった。