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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第三章 二度目の異世界
131/148

127 伝説

 戦争は終わった。もう今は平和だ。





 スマン。嘘だ。戦争は終わったんじゃなくて、終わらせられたんだ。誰あろう、俺の手で。


 まず、俺はレナを説得。まあ、元から乗り気ではなかったらしく、すぐに矛を収めた。


 問題は人間の軍だ。俺は必死になって人間の指揮官を説得した。ミガット砦で(・・・・・・)


 そう、俺はわざわざ敵陣である取まで足を運び、指揮官を説得した。その際、ものすごく遅い剣や槍の突きや、物凄く弱い魔法が飛んできていたが、全てをその身に受けた。勿論傷はない。


 なかなか引かないので、俺は伝家の宝刀(宝鎌?)を抜き、恐怖を砦中にまき散らした。指揮官は糞尿を垂れ流し、最終的にはその矛を収めてくれた。


 うん、話し合いって素晴らしい!


 そんなことは置いておいて今の状況だ。


 戦争が終わったことで、俺達は魔族の国の王都に帰還した。ちなみに、亜人たちとは途中で別れた。彼等とはただ手を組んだだけだという。


 とりあえず、俺達は魔族の国の王都、ムルガに入った俺の軍ははたったの二百人だ。


 どうやらレナは今回の戦争はレムナットからの転生組しか王都からは出兵しなかったらしい。そしてほかの兵士たちはここに来る間にそれぞれの領地に帰った。


 そういうわけで、俺達は王都へ帰還した。まあ、来たこともない王都に帰還というのもなんだか変な感じがするが。


 王都の町並みは、防衛に特化しており、攻め込まれたときには相手を足止めするために入り組んだ作りになっていた。


 俺達は比較的大きい通りを歩く。比較的大きいと言っても、やはりグネグネと曲がっており、何回か道を曲がっている。


「レニーナ様、その人間たちは?」


 王都の民であろう一人の子供がレナに聞いた。


「ああ、ユウの転生体と、その関係者よ!」


 それを聞いて、道を歩いていた何人かの魔族が立ち止まる。恐らく、今立ち止まったのがレムナットからの転生体だ。


「ユ、ユウ!?か、彼も死んでしまったのですか!?」


「そうだけど、殺されたわけではないらしいわよ。」


「そ、そうでしたか!しかし、また彼に会えるとは思いませんでしたよ!で、彼はどこに?」


「この子よ。」


「え?このちんまいのですか?」


「ちんまい言うな!」


「へ?きゃあああああ!」


 俺の魔法で、子供は天高く打ち上げられる。落ちてきた彼女は、涙目で謝罪してきた。


 そして、泣いて俺にまた会えたことを喜んだ。自慢ではないが、俺はレムナットで会った人間はすべて覚えている。その記憶によると、この子供はレムナットにいた時も今のような子供姿で、年は百を超えていたという。・・・ファンタジーだ。俺は魔法を見た時より、彼女の実年齢を聞いた時の方が異世界に来たのだという実感がわいた。


 とにかく、数多くの人間が俺とまた会えたことに涙ながらに喜んだ。こういうのも、悪くない。


 そして、俺はレムナットでのおばちゃんたちに大人気だった。なんかいっぱいお菓子をもらったが、美味しいからいいか。


 とにかく、俺達は王都の中心にそびえる王城の門までやってきた。ちなみに、出兵した兵士たちはここに来るまでに帰っていった。普通は訓練場か何かで解散する物なのだろうが、この軍だけでいえばそれは当てはまることはなく、家が近くなったら家に帰っていった。


「レ二!」


 俺達が門をくぐると、王城から一人の男が出てきた。さぞ身分が高いのだろう俺が作ったのと比べるとかわいそうだが、なかなかの業物を腰に差し、仕立てのいい服を着こなしている。


 容姿は普通に整っている。耳はとがっており、肌の色は紫。髪の毛は金髪で、それら全てが絶妙な具合で彼の顔を引き立てている。はっきり言ってイケメンである。


「ゲッ!デューク。」


 その男が現れると、レナは顔をしかめる。


「レ二。心配したんだよ。君が戦場にいる間、僕は気が気ではなかったよ。」


 その後もキザッたらしくいかに自分がレナの身を案じていたかを語り続ける。


 それにしてもこの男はすごいな。ステータスも俺には負けるがすごいが、何がすごいってその取り巻きの数だ。なんと三十五人もいる。三十五で雑魚ってか。もし狙ってやったのだとしたらデュークは天才だ。


「三万の魔物を一人で退けたこの僕がいればいれば安心だったのだけれど、あいにく僕は王都を守るために残ったから君のそばにいることができなかった。本当にごめんよ。」


 三万の魔物を一人で、退けた?まあデュークのステータスだったらできるだろう。


「それで、彼らは何者だい?」


 ここにいるはずの無い者、即ち人間である俺達を見て、デュークは警戒心を露にする。


「私の専属護衛よ。」


 レナは簡潔にそう答えた。


「何!?」


 それに過敏に反応したのはデュークだ。デュークは顔に怒りを浮かび上がらせる。


「なぜこのような男を!?」


「強いから。」


「私という物がありながら!」


「あなたは私の何?父なの?」


「私はあなたの婚約者ですよ!」


「はぁ?何それ?まさか、前に求婚してきたときの返事の『考えておく』を肯定と取ったわけ?いい機会だからはっきり言っておくわ。あなたなんて眼中にないのよ。」


 レナさん、カッコいいっす。


 それにしても、このデュークとかいうやつとんだ勘違い野郎だな。まさか遠回しの断り文句を、言葉そのままの意味で受け取るとは。


「僕はこの国で一番強い!僕といたほうが安全だし、僕の容姿だって美しいじゃないか!」


 デュークは段々ヒートアップしてきた。今にも俺に殴りかからんばかりになっている。いや、何故俺なんだ。ここはレナだろう。まあ、たとえレナに襲い掛かっても一瞬で塵にするが。


「俺は認めないぞ!こんなこと!もしこいつをそばに置くというのなら、そいつを殺して・・・。」


 刹那、二つの影が俺達とデュークの間に割って入った。


 それは、レムナットでもレナと出かけた時に何度か目にしたカップルだった。


 しかし、驚くべきところは他にある。そのカップルは、虚空から現れたのだ。そう、転移魔法だ。まさか俺以外に転移魔法を使える者がいたとは驚きだ。


 とにかく、俺達の間に降り立ったカップルは、デュークに殴りかかる。いや、デュークに殴りかかったのは女だけだ。男は、三十五人の取り巻きに突撃している。


 しかし、そこは王国最強の男。すぐに剣を抜き放つ。何せ、ここはぎりぎり王宮の中だ。そんなところに転移魔法でいきなり現れたとなると、警戒もするだろう。


 とにかく、女はデュークに殴りかかる。その拳は音速を余裕で超えており、辺りを衝撃波が蹂躙した。男の方は三十五人の取り巻きを、一人ひとり確実に殴り倒していく。取り巻きと言えどある程度戦えるようで、一発でとは言わないが二、三発で取り巻きを沈めている。


 女はデュークが振るう剣の腹を殴り、その軌道をそらす。さらに追撃でデュークの腹に全体重の乗った右ストレートを放つ。どういうことだ!?全体重を乗せた一撃のはずなのに、モーションがほぼなかったぞ!?


 男も男で、取り巻きの一人から剣を奪い、一振りで六人は切っている。あっという間に取り巻きは全滅した。


 と、思ったらデュークも男が女に投げ渡した剣でズタズタにされていた。


「くそぉぉぉぉ!」


 デュークは雄たけびを上げながら女に突っ込んでいくが、女はそれを華麗にかわすと、デュークの首を峰打ちして、気絶させた。


 俺達は呆然と成り行きを見ていたが、すぐに気を取り直す。


「あ、ありが・・・。」


 カップルはデュークが倒れるのを見ると王城の壁に向かって走り出す。そして、壁を走って越えていった。


 俺はお礼を言いそびれてしまった。


「何だったんだ。あのカップルは。」


「さあ?」


 さらに、成り行きを見守っていたレムナットからの転生者が良い顔でサムズアップしている。本当に何なのだろうか?





 そして、この世界でも『救恋の英雄』は伝説を作った。

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