124 魔王
戦争に向けて俺は雪姉達の装備を準備し始めた。はっきり言って、雪姉達に王国から支給された粗悪品(この世界では最上級の装備)を使わせられないと思ったからだ。
武軍の中からあてがうことはできない。なぜなら、武軍に加えるとその武器は俺以外には使えないようになるからだ。
とりあえず、俺は雪姉達五人の装備を作り終えた。ランクは全てゴッドだ。性能の方は実際に使っている時に説明しよう。
さて、次に俺のステータスだ。これは説明するより見せたほうが早いだろう。
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姓:繭澄
名:椎名
職業:雷帝
レベル:377
種族:・・・ノーコメントで。
生命力:∞
魔力:勘弁してください。
力:SSS
速さ:SSS
耐久:SSS
賢さ:SSS
オリジナルスキル:武軍・血
収納
重力眼
武器系スキル:武器術
体術
魔法系スキル:全属性魔法
身体強化魔法・神
生産系スキル:武器作成
防具作成
魔剣作成
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ステータスが仕事をしていない。何だ、「ノーコメントで。」と、「勘弁してください。」って。意味は分かるが、ひどすぎじゃないか?
まあとりあえず、俺はこの力を使って雪姉達を守る。戦争に勝つとは言っていないことがみそだ。はっきり言って、この戦争なんてどうでもいい。ただ雪姉がこの戦争に参加すると言っているから俺も参加しているだけだ。
だが、雪姉がこの戦争に参加する限り俺はこの戦争に人間側として参加することになるだろう。もし俺がこの戦争を下りるとすれば、それこそ死後の世界から彼女たちを引っ張て来なくてはいけないだろう。事実、俺は彼女たちに言われたら迷わずにこの戦争から降りるだろう。雪姉達の事なんてどうでもいいとばかりに。
とりあえず、俺はこの最前線の砦で準備を進めている。この砦の名前は『ミガット砦』この王国の最前線の砦として三百年間国境を守ってきたらしい。
真偽のほどは分からないが、本当だったとしても頷けるほどの外観をこの砦は誇っている。
まずこの砦の外壁だが、ざっと五十メートルはある。さらに、砦の本丸も城のように巨大で、かなりの食料を貯蓄できるであろうことが伺える。さらに外壁は傷だらけで、その戦いの歴史を物語っている。
戦争はこの砦からの籠城から始まる。こんな砦を攻めるのだから、魔族と亜人たちはさぞ苦労することだろう。まあ、俺だったら一瞬でこの砦を落とすぐらい訳はないのだが、一応この戦争は人間側で参加しているので、そんなことはしない。
さて、砦に入ってもう五日だが、一向に魔族たちが攻め入ってくる様子はない。どころか、まだその魔族ですら目撃した者がいない。そのため、暇を持て余した俺は自宅の家具や、地下の工房などをまとめてこの砦の地下に移し替えた。特にやりたいことがあったわけではなく、自宅のほうがリラックスできるだろうという俺の配慮だ。
今日も今日で五人でゴロゴロしていると、俺達に与えられた部屋に伝令が来たのが、カメラのような魔道具越しに分かった。俺達は転移で部屋に戻る。
「どうした?」
さもノックの音に反応して出てきたようにドアを開け、俺は兵士に問いかける。
「魔族が来ました。聖女様方、準備を。」
兵士はそう手短に言うと、去っていった。俺はついに来たかと思いながら、雪姉達を見据える。
「聞こえたね?戦闘準備だ。」
俺の言葉でささっと戦闘準備を整え、俺達は砦の防壁の上に立つ。
さっきの兵士が言った通り、魔族と亜人たちの混成の軍がこの砦を目指して進行している。
砦から三キロほどのところで、混合軍は進軍をやめる。
その時、俺は混合軍から魔力を感じた。だが、警戒はしない。恐らくこれは拡声の魔法だからだ。
俺は『身体強化魔法・神』を使って視力を強化、混合軍を見据える。
ほどなくして、混合軍の隊列を割って一人の少女というべき年齢の女が出てきた。
・・・その女には見覚えがある。しかし、俺が知っている彼女とは少し違う。それも当然か俺が知っている彼女は当時はたったの八歳なのだから。彼女の見た目はどう見ても十五歳は超えている。
しかし、偶然という物は恐ろしい。もう少しで全面降伏するところだった。
俺がそんなことを考えていると、その少女が名乗りを上げる。
「我が名は|レニーナ・ヴォン・デハート《・・・・・・・・・・・・・》!ゴーリアの地よりこの地に降り立った魔王のである!」
その名乗りに、俺の時間が止まる。
なぜならその名前は、俺のたった一人の主。生涯ただ一人の王。
「レナ・・・・。」
俺の王は、この世界に転生していた。