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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第三章 二度目の異世界
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123 参加表明

 謁見の間を後にして、俺達は王城の食堂に集まる。王に「今一度戦うかどうかじっくり話し合ってくれ」と言われたからだ。


 そして、俺達は雄大を中心として話し合いを始めている。さっきまで使い物になった物ではなかった雄大も、戦争が始めるとしては黙っていられなかったらしい。


「さて、これからのことだが、どうする?」


 雄大がクラスメイト達を見回す。流石に初日は勢いに任せて参加すると言った彼らも、今、本当に戦争が始まったと宣言されたら決心が鈍ったらしい。何人か顔を背けているものがいる。


「僕はこの戦争に参加するよ。」


 雄大の力強い宣言に、顔を背けていた生徒の一人が問いかける。


「お前は怖くないのか?」


「怖いさ。でも、僕には困っている人を放っておくことはできない。それに・・・。」


 雄大はもう一度全員を見回す。


「僕は、君たちと元の世界に帰りたいんだ。今のところ帰る宛は戦争の報酬しかない。それなら、僕は戦うよ。この世界の人のため、そして君たちのために。」


 俺は笑いそうになるのを必死にこらえながら、雄大の言葉を聞く。しかし、完全には隠しきれなかったらしい。雄大が鋭い目つきで睨んでくる。


「何がおかしい?」


「ああ、悪い。表情に出ていたか。いや、ただあまりにもめでたいなと思ってね。」


 俺はそこで、笑みを顔に出した。雄大は俺をさらにきつく睨む。


「どこがめでたいって言うんだい?」


「おまえ、戦争がどんなものか分かっているか?」


 俺は雄大の問いを問で返す。


「・・・軍と軍の戦いだろ?」


「違う。」


 俺は雄大の答えを即座に否定する。


「じゃあなんだっていうんだ?」


「軍と軍の殺し合いだよ。」


 俺は雄大に戦争とは何かを伝える。


「自分が殺さなきゃ殺される。そうでなくても、流れ弾で死ぬものも大勢いる。少し油断しただけで死ぬ。ほんの一瞬目を離しただけで隣にいたやつが物言わぬ屍になる。それが戦争だ。」


 雄大は俺の言葉を聞き、瞳を泳がせる。


「そ、それは分かって・・・。」


「わかってないから言っているんだ。」


 俺は雄大のセリフを遮ってそう言った。


「お前、さっきまで自分が死ぬなんて思ってなかっただろう?」


「ぼ、僕は勇者だ。僕はこの世界でも上位に入る強さだと団長が言っていた。」


「でも、お前は俺に負けた。」


 俺の言葉に、雄大は息をのむ。


「お前は確かに勇者だ。確かにステータスの数値は高い。でも、それでも届かない高みがある。」


「君はその高みにいると?」


「いいや、違うな。」


 俺は雄大の言葉を否定する。


「俺はその高みをさらに上から見下ろしている。」


「な!?」


 俺の傲慢な物言いに、雄大が驚愕の声をあげる。


「それは・・・、傲慢だ。人間には限界がある。僕はその限界に今一番近づいている。」


「だろうな。でも、俺達はその高みを超え、人外の領域に足を突っ込んでいる。」


 まあ、俺の場合は完璧に人外認定されているが。


 俺が「俺達は」と言ったのが気になったのか、雄大が眉根を寄せる。


「「俺達」?」


「ああ、雪姉達はお前より何倍も強い。」


 俺の言葉に、食堂ないが静まり返る。彼らは分かっていたのだ。それどころか、彼らは合点がいったと言ったような顔をしていた。


 彼らは見ていたのだ。あのトーナメントを。そしてあのトーナメントを見ていた者ならば分かったはずだ。雪姉達の圧倒的な実力と、それを軽く凌駕する俺の力を。


「それでも!」


 俺が話し終えると、雄大が食って掛かる。


「僕たちはやらなくちゃいけないんだ!」


 俺はもう反論しない。こいつには無駄だと悟ったからだ。


「だって、僕らは勇者なんだから!」


 雄大の口から謎理論が飛び出る。これに賛同する奴がいるとは・・・。


「そ、そうだ!俺は勇者だ!」

「私も、聖女だわ!」

「俺はやるぞ!なんてったって、俺は勇者なんだから!」

「俺もだ!俺もやる!」

「私も!」

「僕も!」


 ・・・・・このクラスにはバカしかいないらしい。とりあえず俺は雪姉に向き直り、指示を仰ぐ。


「雪姉、どうする?前にも言ったけど、俺は雪姉をの意見を全面的に受け入れる。」


「私は戦うよ。あの子たちが心配だし。それに、危なかったら椎名が守ってくれるでしょ?」


「まあな。せ、お前たちもそれでいいか?」


「いいですよ。」


「いいわ。」


「いいよ!」


「同じく!」


 俺達は確認が取れたことで、改めて戦争に参加することをクラスメイトに伝える。


 俺達は戦争に参加するための装備を整えることになった。勿論、作るのは俺だ。


 さて、この戦争、どう転ぶにせよ厄介なことになりそうだな。

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