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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第三章 二度目の異世界
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121 返却勧告

 トーナメントは、俺の予想通りに進んだ。つまり、俺の優勝である。


 内容は、あまりのも一方的だったので書かない。紫音を始めとした、俺のパーティーメンバーは他のクラスメイト達と比べ、かなりの実力を誇っていたぐらいだ。まあ、その紫音達も俺には手も足も出ずに負けたが。


 とりあえず終わったトーナメントだが、王国民にとってはかなり複雑だろう。俺という、二文字が『聖なる勇者』を下し、優勝したのだから。


 しかし、それ以外にも問題はあった。そう、葉隠れだ。後から知ったのだが、葉隠れはこの国の国宝になっているそうだ。


 俺が作った中で最弱の刀が国宝とは、笑わせてくれるがこれは面倒なことになる。


 というかなった。


「葉隠れを返してもらおう。」


 俺は今、謁見の間で王と向かい合っている。先ほどの王の発言から分かる通り、王は葉隠れの返却を求めている。


 しかし、俺が作って、誰にも譲渡していないものを我が物顔で「返せ。」とは何事か。少しイラっとした俺は、絶対に返さないと誓った。


「いいですよ。」


「おお!本当か!」


「ただし!」


 王が少し嬉しそうな声をあげるが、俺が続けたことで黙る。


「ただで、とは虫が良すぎませんか?」


 俺はニヤッと笑いながら王に問いかける。


「何を言う!葉隠れは我が国の国宝だぞ!そもそもお前に所有権などない!」


 王は顔を真っ赤にさせてそう言うが、それがあるんだな~。


「これが俺が作った刀だと言っても?」


「何?」


「それで、誰にも譲渡していない、無くしたものだとしても?」


 本当は捨てたのだが、そこはどうでもいいだろう。


「バカな!その刀は神より授かりし聖刀!お前ごとき二文字が作れるはずがない!」


 まあ、さすがに信じないか。やろうと思えばこの場で葉隠れ以上の刀を打つこともできるが、面倒臭いのでやめる。その代わり、俺が葉隠れを持つ正当性を主張しよう。


「この葉隠れは、雄大の力を強化するために与えたんですよね?」


 俺は確認するように王に尋ねる。


「ああ、そうだが。」


「それじゃあ、それは一番強い勇者を強化しようとしたってことですか?」


 王は俺が言いたいことを悟ったのだろう、悔しそうに言葉を紡ぐ。


「・・・そうだ。」


「じゃあ、その雄大を倒した俺が持つのが一番よくないですか?」


「ダメだ!聖刀は勇者が使ってこそ真価を発揮する!お前ごとき二文字に葉隠れを使いこなせるわけがない!」


「まあ、使わねぇしな。あんな鈍ら。」


「は?」


 俺の発言に、その場にいた大臣や兵士たちは目を見張る。


「あんな鈍ら、使う事なんて武軍で国を攻めるときぐらいだ。」


「武軍?」


 俺が言った一言に、謁見の間にいた一人の大臣が反応する。


「ああ、俺のスキルだ。来い。」


 俺は説明するより見せたほうが早いので武兵たちを呼ぶ。


「これが武軍だ。」


 音もなく姿を現した武兵たちが、謁見の間に立体的に展開する。たった千しか存在しないが、その存在感は世界を敵に回して勝ったもの頷けるほどの存在感を放っていた。


「な・・・、は・・・。」


 謁見の間にいる者は皆、武軍が放つ覇気ともいうべき雰囲気に当てられ、腰を抜かしてしまっている。


「戻っていいぞ。」


 俺はそう言って、武兵たちを収納に戻す。


「あ、あれが武兵か。」


「ああ、俺のスキルで人格と疑似的な肉体を得る。勿論俺に絶対的な忠誠を誓っている。」


 俺の説明に、王を含め、大臣や兵士がざわめき立つ。彼らは遅まきながら理解したのだ。俺、繭澄椎名にはこの世界を亡ぼす力があるという事に。


「武兵に加えるには自分で作った武器じゃないといけないんだが、葉隠れも俺が作ったから武兵にできたんだ。お前たちも見ただろ?」


 俺の言葉に、王は黙り込む。彼は見ていたのだ。試合で、葉隠れが突然光ったかと思えば、幽霊の体を得ていた時のことを。


「もう帰っていいよね?」


 俺はそう言って謁見の間を後にする。つい先ほど俺の圧倒的な力を見せられた面々は、俺を見送ることしかできなかった。

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