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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第三章 二度目の異世界
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120 究極の武器

「ぷっ。」


 雄大が高らかに宣言した直後、俺の口から空気が漏れる。


「アハハハハハハハハ!」


 俺の笑い声がコロシアムに響く。


「聖刀って・・・ごほっ!葉隠れが!?ぶっ!ははははははははは!」


 突然大爆笑し始めた俺に、会場は困惑する。なぜなら、その葉隠れは見るからに神聖で、さらに力の波動とでもいうべき物を会場中の人間全員が感じているからだ。


「な、何がおかしい!」


 雄大は笑い転げる俺に顔を真っ赤にさせながら問いかける。


「いや、悪い。まさかその刀をお前が持っているとは思わなかった。ぷっ!」


 俺の答えに、雄大は困惑する。


「君はこの刀を以前見たことがあるのかい?」


「ああ、あるぞ。」


 本当は見たことあるどころか、作ったのは俺なんだがそこは言わないでおく。


「それにしてもお前・・・。」


 おれは、先程から疑問に思っていたことを雄大に聞いてみる。


「そのなまくら、何処で手に入れた?」


 俺の体から魔力が吹き荒れる。しかし、その魔力は先程の物と違い、威圧が乗っており、俺の魔力に触れたものすべてを屈服させる。


「お、王様にもらった。」


 確かに、さっき雄大は「神から授かったという・・・。」と言っていた。恐らく、カミュラ辺りが王に与え、それを雄大が貰ったのだろう。


 しかし、一つ不可解な点がある。葉隠れのランクについてだ。以前の葉隠れのランクはレア。ぎりぎりで武軍に入れることができないため、俺は葉隠れを手放した。しかし、今の葉隠れのランクはレジェンド。ランクが一つ上がっている。


 俺は魔力の放出を止め、雄大と向き合う。


「来いよ。試合はもう始まっているぜ?」


 俺はそう言って雄大を挑発してみる。


「行くぞ!」


 俺の挑発に、雄大は乗っかった。凄まじい(一般的に見て)加速で一気にトップスピードになった雄大は、葉隠れを抜き、俺に斬りかかってくる。


「はっ!」


 雄大は鋭く葉隠れを振るう。俺はそれを最小限の動きで躱す。


「はぁあああああ!」


 雄大は葉隠れを何度も振るい、俺を斬らんとしているが、葉隠れが俺に当たることはない。


 早々に飽きてきた俺は、決着をつけることにした。


「よっ。」


 俺は軽い掛け声とともに葉隠れを蹴り上げる。あまり力はいれていないが、葉隠れは雄大の手を離れ、宙を舞った。


 雄大は驚きに目を見開くが、俺は葉隠れを蹴った勢いを殺さずに空中で一回転をして、サマーソルトキックを雄大の顎に叩き込む。


「くっ!」


 腐っても勇者。雄大は俺に蹴り飛ばされた後、空中で体制を整え、華麗に着地する。


 そして、俺が蹴った葉隠れは雄大を挟んで俺の向かいに突き刺さった。


「くそっ!」


 雄大は俺に背を向け葉隠れを取ろうとする。俺は雄大を追わずに、スキルを発動させる。


「武軍、発動。」


 俺がスキルを発動させるのと同時に、葉隠れが眩い光を放つ。


「何だ!?」


 あと少しで葉隠れを掴めた雄大の手が、突然の発光によって引っ込められる。


 しばらくすると、その発光も納まった。そして葉隠れが刺さっていた地面には・・・・。


「幽霊?」


 そう、幽霊がいた。それは武兵と同じように白い靄が集まったような姿をしている。


「お前は誰だ!?」


 雄大がその幽霊が葉隠れを持っているのを見て、そう問いかける。


「私は葉隠れ。マスターによって自我を与えられ、マスターの敵を排除する者。」


 葉隠れは雄大の問いにそう返す。雄大はそれをどうとったのか、ニヤリと笑う。


「じゃあ、葉隠れ!最初の命令だ!あいつをぼこぼこにしろ!」


 雄大は葉隠れに命令するが、葉隠れがそれに答えるわけがない。


「どうした!?早くやれ!」


 命令を聞かないことに少しいらだったのか、雄大の語気が少し荒れる。


「葉隠れ。」


 その時、ずっと閉じたままだった俺の口が開かれた。


「俺の収納内で待機していろ。」


「了解しました、マスター。」


 そう言って、葉隠れは俺が作った穴に飛び込んだ。


「は?」


 その光景に、会場中の人間が口をポカンと開けた。若干五名、呆れのあまりため息をついた者たちもいたが・・・。


「お前、それが究極の武器だと思っていないか?」


 先程から見ていれば、雄大は葉隠れに絶対の自信を持っており、戦い方も葉隠れに頼った物だった。


「そんなものは究極の武器ではない。本当の究極の武器っていうのは・・・。」


 だから俺は雄大の自信を打ち砕くようにそう言って、空間を殴りつける。すると空間に罅が入る。その罅はどんどん大きくなっていき、刀が一本通れる大きさになると、罅は広がるのをやめた。


「こういう物のことを言うんだ。」


 そう言って俺はその罅を少し拡大させながら一本の大太刀を取り出す。


「は・・・、あ・・・・。」


 俺が取り出した大太刀、雷帝が放つ存在感に当てられ、雄大は尻餅をつく。


「こういう物を究極の武器って言うんだ。覚えておけ。ド三流が。」


 俺はそう言って、雷帝を雄大の脳天めがけて振り下ろす。


「うわぁああああああ!」


 勿論殺すわけはなく、俺は雄大の頭の皮膚を少し切ったところで雷帝を止める。雄大は情けない悲鳴をあげ、意識を失う。


 雄大が負けたことで、コロシアムは静寂に包まれる。ある一角だけ溜息の音が聞こえるような気がするが、気のせいだろう。


「担架お願いね。」


 俺はそう言い残して、コロシアムを後にする。コロシアムには、状況についていけない王都民、貴族、王族だけが残された。

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