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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第三章 二度目の異世界
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115 身長

 迷宮に潜ってから、俺達六人は王城を出て、城下町で暮らしている。王からは屋敷を与えるという申し出があったが、俺はそれを断り、ただ何もない空き地を要求した。王は訝し無ながらも謝罪として空き地を俺にくれた。そして、翌日には千体の武兵による大豪邸が出来上がっていた。


 これで、俺達は王城以外の拠点を手に入れたわけだが、問題はまだあった。


 俺と、雪姉達の職業だ。俺の職業は、この世界では差別される二文字で、雪姉達はこの世界を救う聖女だ。どうしたって目立つ。


 なので、俺は職業・・・いや、ステータスを隠す魔道具を開発した。俺は今でもレムナットでやっていたように魔道具を作ることができたので、性能も見た目も最高級の物ができた。まず性能だが、ステータスは名前と職業以外すべて隠し、職業も俺が『雷鳴の魔術師』。雪姉が『治癒の魔術師』。詩帆が『魔法の賢者』。紫音が『砲撃の魔術師』。楓が『魔方陣の魔術師』。スミレが『付与札の陰陽師』となった。


 それにより、俺達は平和に過ごせるかと思ったが、この世界にはまず鑑定のスキルが無いらしく、俺の努力は無駄に終わった。だが、他人に見せるときなどもこの魔道具の効果は発揮されるので、有用と言えば有用だ。


 とりあえず、俺達は王城から戻るよう催促され、それを断ったり、生徒たちが雪姉を泣き落としのような形で王城に引き戻そうとして葛藤して、やはり俺達と別れるのが嫌で断ったりと、平和と言えなくもないような日常を送っている。


 そんなある日、俺はあることに気が付いた。世紀的な大発見だ。もう、ニュートンが万有引力を発見したことなど目じゃないぐらいの大発見だ。


 俺は急いでそれを伝えるために寝室がある二階から、皆が集まっているであろうリビングに直行する。


「みんな!大発見だ!」


 俺は興奮しながらリビングに駆け込む。


「ど、どうしたの!?」


 雪姉が驚いて持っていた本を落としそうになりながらそう問うてきた。


「まあ、聞いてよ。実はね・・・。」


 俺は焦らすようにためると、俺が発見した世紀の大発見(・・・・・・)を皆に報告する。


「なんと、俺の身長が二ミリ伸びたんだ!」


「「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」」


 超どや顔(多分)で言い放った俺に、雪姉達五人はものすごく憐れむような目を向ける。


「え?二ミリ?」


「うん!二ミリ!」


「そ、そう。よかったね。」


「うん!」


 雪姉達は、俺の輝かんばかりの笑顔を見て、溜息をはく。


「そもそも、椎名君が背が小さいのは何故なんですか?」


 その時、紫音が何気なく雪姉に問うた。


「さあ?ご飯はちゃんと食べていたよ?」


「牛乳も飲んでたぞ!」


「睡眠だってちゃんととっていたし。」


「授業中にも寝てたぞ!。」


「運動もちゃんとしていたし。」


「常に重力を自分にかけていたから、他の奴より何倍もハードな運動してたぞ!」


「「「「「それだ!」」」」」


 雪姉達五人が俺が言った言葉に、声をそろえて反応する。


「え?」


 俺はわけがわからず聞き返す。


「いい?要するに、あなたが成長しようとするたびに、あなた自身が掛けた重力がそれを邪魔してたの。」


 俺はその言葉に、愕然とする。今まで頑張っていたことが裏目に出たのだ。


 しかし、理由が分かったのなら行動は早い。俺はすぐに重力の枷を解いた。


「どうだ?背伸びたか?大きく見えるか?」


 俺は精一杯背伸びをしながら雪姉達に聞く。


 雪姉達はそんな俺を見て顔を綻ばせる。


「今はまだ小さいけど、すぐに大きくなるよ。」


 そう言って雪姉は俺の頭をなでてくれる。なんかあしらわれたような気もしなくないけれど、どうでもいいかと思ってそのまま撫でられ続けたのだった。

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