三章 二度目の異世界 104 異世界再び
不覚だった。床が光っていたことにはすぐに気が付いたが、それが魔方陣だという事に気が付くのが遅かった。その結果、二回目にもかからずまんまと異世界に召喚されてしまった。
どうやら俺が最後に起きたらしく、他のクラスメートたちはすでに起きており、この場にいる無駄に着飾った中年の男性のほうを向いていた。
この中年の男性は、煌びやかな装飾を施したド派手な服を着ているが、それがなかなか似合っていた。さらに、顔は少し老けているが、その佇まいは凛々しく、正に王者と言った雰囲気を纏っていた。
「私の名前はガオン・レナス・サラハード。このサラハード王国の国王だ。まずは、召喚に応じてくれたことに感謝する。」
中年の男は俺達に向かって頭を下げる。
「なっ!?陛下、あなたは一国の王なのですよ!そんなに簡単に頭を下げないでください!」
その時クラスメイトの物でも、勿論この中年男――いや、この声の主が言うには国王か--の声でもない。その時、俺は初めて辺りを見渡した。
ここはまるで・・・いや、本物の王城なのだろう。煌びやかな装飾品や、絵画が飾ってある部屋だった。色々と違うところはあるが、デハートの王城や、グローリアの王城と言った俺が言ったことのある王城に似ているところもある。
「いいのだ。こやつらはこの世界に来たくて来たのではない。私たちが誘拐したようなものだ。それならば、誠心誠意謝罪をするのが礼儀というものだろう。」
しかし、俺は背が低いからか、王様の顔が少しだけ見える。そしてこの時王様は笑っていた。面白くて笑ったような顔ではない。それは、とても人には見せられないような邪悪な笑みだった。
「顔をあげてください。陛下。」
雄大がクラスを代表して発言する。
「それで、何故僕たちを呼んだのですか?」
雄大が早速本題に入る。
「うむ、それはだな・・・・。」
そうして説明が始まったのだが、長い。校長先生の挨拶よりも長い。なので、重要なことだけをピックアップした。
曰く、この世界には亜人と呼ばれるエルフやドワーフ、獣人などの種族と、魔族と呼ばれる者たちがいる。
曰く、それらの種族は、長年対立していた。
曰く、いわゆる亜人たちが国を作り、魔族たちも国を作った。これが三百年前の話。
曰く、つい最近王になった獣王キアと、魔王レオが手を組み、人間を亡ぼそうとしている。
曰く、彼等だけでは亜人や魔族たちを撃退することは難しいため、俺達が勇者として呼ばれた。
曰く、俺達を返す術式は世界のどこかにあるが、何処にあるかはわからない。
うん。怪しさ満点である。
「どうか、この国を救ってくれ!」
そう言って王様は再度頭を下げる。今度は止める者はいなかった。
俺は雪姉のところまで近づいていく。
「雪姉。」
俺は俺が起きた時からずっとオロオロしている雪姉に話しかける。
「な、何?椎名。」
「雪姉はどうする?」
俺は雪姉に問いかける。
「え?」
「雪姉がここでこの国を守るために戦うのなら、俺もそうする。戦うのが怖いと言って逃げるのなら、俺は雪姉を守るために一緒に行く。雪姉、決めて。俺はどんな選択を雪姉がしようと、、ついていくから。」
「私は…。」
雪姉は少し考えた後、覚悟を決めたような顔をする。
「やるよ。この国を守る。今はそれしか選択肢がないからそうするけど、いつかこの世界中を回って、元の世界に帰るすべを探す。」
「分かった。じゃあ、俺は雪姉についていくよ。それで、お前らはどうする?」
俺は後ろを振り返って問いかける。そこにいるのは、紫音、楓、スミレ、詩帆のいつものメンツだ。
「私たちもここで戦います。けど、いずれ必ず元の世界に帰ります。」
紫音がそう言うと、他の三人も力強く頷く。
「そうか。」
俺はそう言って、話を切り上げる。
そうして、俺達は自分に割り当てられたメイドに連れられ、自分に用意された部屋へと向かったのだった。
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