表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
102/148

99 決着

 俺の宣言を聞き、紫音と楓とスミレは後ろに下がる。俺は収納から布魂御魂を取り出し、それを構える。


 「ふふ、ふはははははh!」


 しかし、それを見て三条は笑いだす。


 「一つ君に絶望的なことを教えてやろう。」


 三条は得意げに笑うと、ポケットから二つの式神を取り出した。


 「右手にあるのがあのゲームで使っていたもので、左が今回使うものだ。」


 三条は得意げに言葉を続ける。


 「この右手にあるのは、初心者が使うような低レベルの式神なんだ。」


 三条はそう言って左手に持つ式神を掲げる。


 「そしてこれが最上級の式神なんだが・・・・・。」


 三条は、一回ここで言葉を切る。


 「あの時と同じ十三万用意させてもらった。」


 三条はそう言って胸を張る。


 「そうか。ならば俺もお前に絶望的なことを教えてやろう。」


 俺はそう言って、ニヤリと笑みを浮かべる。


 「あの時俺は、自身に五十七Gの重力を掛けていた。今日はそれを解こうと思う。」


 小学生の頃は二十数Gが限界だったが、最近になってようやく五十台に入った。普通ならこのGに耐えられるはずはないのだが、俺の場合は強化魔法などを使うことによってその辺の問題もクリアーしている。


 俺の発言に、会場は一気にざわめく。


 「じゃあ、そろそろ始めようぜ。」


 俺はそう言って、三条たちと向き合う。その言葉を聞いて、実況が我を取り戻し、開始の合図を送る。


 『試合開始!』


 その声が会場に響き渡ると、それぞれ行動を開始する。


 俺は腰を落とし、布都御魂を地面に水平になるように構える。一見すると素人の構えに見えるが、俺の場合これで長い間戦ってきたので違和感はない。


 「いくぜ!」


 まずは瞬が片手剣を持って突っ込んできた。しかし、俺にとってはその動きは遅すぎる。


 「ふっ!」


 瞬は俺に向かって片手剣を振り下ろしてくる。俺は布都御魂を瞬が持っている片手剣の腹に当て、軌道をそらせる。


 「なっ!?」


 瞬はそれを予測していなかったのか、一瞬動きを止める。しかし、その一瞬は俺にとっては十分だ。


 俺は瞬の頭をつかむと、地面にたたきつける。


 「がっ!」


 瞬は顔から地面に突っ込んで、ぐったりとしている。


 「スタン。」


 だが俺は念のため雷魔法でとどめを刺しておく。勿論、意識を奪うだけにしてある。


 瞬は戦闘不能となり、会場外に転移した。


 俺はそのまま走り出そうとするが、何かが俺に向かって飛んできた。それは魔法でできた弾丸だ。


 俺はそれを余裕をもって回避する。


 「避けただと!?」


 祖商は驚きはしたがすぐに平静を取り戻し次弾を撃とうとする。


 「させるわけないじゃん。」


 俺は布都御魂を持っていな左手に銃を収納から取り出した銃を取り出し、祖商に乱射する。ただ適当に撃っただけ見えたその攻撃は、一発も外れることなく祖商を貫く。


 「がふっ!」


 祖商はそれだけで戦闘不能になった。俺は香蓮のいるほうへ振り向き、走り出す。


 「こ、来ないで!」


 香蓮は必死になって俺に魔法を打ってくるが、俺に効きはしない。全て布都御魂で防いでいる。


 「いやあああ!」


 香蓮は悪く言えば魔法だけが取り柄のただの女の子だ。至近距離に接近した俺の攻撃を防げるはずがない。俺はただ布都御魂を上から下に向かって振り下ろしただけだ。


 香蓮を戦闘不能にしたところで三条に視線を向けると、そこには龍、武者、大狼、九尾狐など、見るからに強そうな式神が召喚されていた。


 「まじかよ。」


 俺がそう呟くと、それを聞き取った三条がニヤッと笑い言ってきた。


 「降参するなら今のうちだぞ?」


 「いや、もうちょっと解放したほうが良いと思って。」


 俺はそう言って、自分にかけていた重力の枷を取り外す。三条は今の俺を本気だと思っていたのか、一瞬ポカンとした後、また式神を召喚するのに戻る。


 「二十G。」


 俺は今掛かっている重力の枷を二十Gまで下げる。


 「い、いけ!」


 三条は俺にむけ式神を放ってくるが、今の俺には関係ない。龍は布都御魂で切り伏せ、武者とは一合も刀を交えることなく相手の武器と鎧ごと一刀両断する。ほかにも魔法を使ったり、陰陽道で倒したこともある。とにかく、俺は一切の傷を負わずに式神を蹂躙していった。


 「終わった!」


 しかし、式神を三百ほど倒したあたりだろうか突然そんな声が聞こえた。勿論その声をあげたのは三条だ。三条のほうを見てみると、俺は身を見張った。


 そこには、十万の式神がいた。


 会場は決勝用に特別広くなっているのだが、それでもなお狭く感じるほどに式神の数は多かった。


 「このままじゃちょっとやばいな。」


 俺はそう呟くと、枷をすべて排除した。


 「行くぞ!」


 俺は勢いよく地面を蹴る。その速度は人間の目では負えないほど早く、あと少しで音速に到達するほどだ。


 「無駄だ!」


 三条の式神が俺に向かって殺到する。俺はそれを一体一体全て切り伏せていく。


 しかし、五分ほどそれを続けるとさすがに俺の体に傷ができてくる。


 「がっ!」


 そこに、初めて俺に攻撃がクリーンヒットした。武者が放った攻撃を避け切ることができなかったのだ。


 「やっぱ無理だったか。」


 俺はおきあがりながら呟く。


 「そうだ!お前のような奴がこの俺に勝てるわけが・・・・・!」



 「強化魔法無しじゃあこれが限界か。」



 「何?お前、これまで強化魔法をかけていなかったのか?」


 三条の問いに俺は正直に答える。


 「ああ、かけてない。」


 「バカな!」


 三条は驚愕に目を見開く。


 「まあ、強化魔法無しは無理そうだからかけさせてもらうわ。」


 俺はそう言って、金色の魔力を放出する。そしてその魔力を自分に絡ませていく。


 「死ね。」


 俺はそう言って腕を振るう。たったそれだけの動作で、俺の前にいた式神は消えた。


 「うそだ!」


 三条は俺に向かって式神を全方向から攻撃させる。


 「無駄だよ。」


 俺はそれを布都御魂で切り捨てていく。


 「何なんだお前は!?」


 その後は自然と入学初日のゲームと同じ結果になった。俺が三条に近づいていくと、三条は震えながら聞いてきた。


 「ただの転生者だよ。少し過激な過去を待っているがな。」


 俺はそう言って、今回は布都御魂を三条に振り下ろす。


 『試合終了!この年卒業トーナメントを制したのは第五十一番チーム!』


 耳が割れんばかりの歓声を背に、俺と紫音達は会場を後にしたのだった。

感想待ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ