表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
101/148

98 決勝戦

 『さあ!ようやく待ちに待った卒業トーナメントの決勝戦だ――!』


 と、いうわけで俺は今決勝の会場にいる。


 ・・・・・言い訳をさせてほしい。三回戦からは、一応戦ったのだ。だが、対戦相手が俺のことをバカにし、紫音たちがブチ切れ速攻で瞬殺してしまい、おれの事をチビと言ったやつは俺が瞬きするよりも早く終わらせてしまったのだ。なので、特に印象に残る試合もなく決勝まで来てしまった。


 『さあ!この決勝ですが、Bブロックを勝ち上がってきたのは勿論この人!式神においてはプロすら凌ぐ!正に神童!三条一馬!』


 おっと。もう選手紹介が始まっているようなので、俺はとりあえず考え事をやめる。


 『そしてそのチームメンバーも一流中の一流!まずは砲術の名家、雑賀家の次期党首間違いなしと呼ばれているこの男!雑賀祖商さいがそしょう!』


 スナイパーライフルを持った男が前に出て左腕を掲げる。


 『その詠唱はまるでマーメイドが奏でる歌のよう!魔法の歌姫三沢香蓮みさわかれん!』


 金髪を後ろでひとまとめにした可愛いというより美しいと言った感じの少女が一歩前に出て、優雅に一礼する。


 『その防御力はまさにアイギスの盾!さらに盾だけでなく、ありとあらゆる武器に精通している魔闘士!優牙瞬ゆうがしゅん!』


 背がたかく、ボディービルダー並みの筋肉を纏う男が両腕をあげる。


 『さあ!続いて第五十一チームの選手の紹介です!』


 次に俺たちの紹介がされるが、それは一番最初の試合でされたようなあざけるような紹介ではなかった。


 『もうこの三人を落ちこぼれという者は一人もいない!入学したころの狂気はどこへやら!今では優雅に射撃をこなす大和撫子!佐村紫音!』


 紫音の紹介に、彼女は一礼で答える。


 『本来罠や単発の魔道具などに使う魔方陣を戦闘で使う新しいスタイルで戦う魔術師!その頭脳で描かれる魔方陣は一つの芸術のよう!神藤楓!』


 楓も紫音と同じように、一礼する。


 『攻撃の札は使えない!しかし付与札を使えばサポートのエキスパートと化す!いつも笑顔の陰陽師!夢宮スミレ!』


 スミレも前の二人と同じようにただ一礼する。


 『そしてこの人!入学初日のあの強さはラッキー!?いや、その実力はすでに証明されている!若くして若くして魔術師免許を取得し、さらに『武軍』の二つ名を持つ異端児!正に天才!繭澄椎名!』


 俺が紹介されると、五組のクラスメイト達がいるであろう観客席から割れんばかりの歓声が上がる。だが、俺はその歓声を無視する。


 「こほん!」


 俺はわざとらしく咳払いをする。


 「マイクをもらえるか?」


 俺の発言を聞き、係の人間がマイクを持ってくる。


 「お前らは、入学初日に行われたあのゲームのことを覚えているか?」


 俺はマイクを受け取ると、会場にいる人間に問いかける。


 会場には魔術師や、魔法学院の生徒たちがいる。俺と同じ学年の生徒たちは覚えているだろうが、他はどうかわからない。が、みんなそのことについては知っているようだ。


 「あのゲームのことをよく思い出してほしい。」


 俺は三条を含め、会場にいるすべての人間にいう。あの時のことを思い出せと。


 「思い出されるのは俺の圧倒的勝利か?三条の敗北か?大規模な集団戦闘か?」


 俺はなおも問いかける。


 「よく思い出せ・・・・・。」


 俺はそこで言葉を切ると、息を大きく吸い込んで、言葉の続きを口にする。


 「俺があの式神と戦っている時、一歩でも動いたか?」


 俺は会場にいる俺の知り合い以外が見落としているであろうことを指摘する。


 会場にいる観客たちは、二年前に開催されたゲームの映像を必死に思い出す。そして、記憶との照合が終わったのか、唐突に沈黙する。それは、三条たちも一緒だった。


 「嘘だろ。」


 それを言ったのは誰だったか。それは定かではないが、静寂が支配した会場にその声は大きく響いた。


 「俺は三条にとどめを刺すとき以外一歩も動いていない。」


 俺は響いた否定の言葉を斬って捨てる。


 「でも今回は一種の見世物だ。」


 俺はいまだ静まり返った会場に向かって宣言する。


 「俺は、武軍を使わずに、俺の武技だけでこの試合を制してやる。」


 それは、絶対の自信からくる宣言。式神ごときが何人掛かってこようが、俺には関係ないと、言外にそう言い放ったのだ。


 「勿論、今回は動かせてもらう。」


 俺はそう言って、係にマイクを返す。


 「あ、ちょっと待て。」


 俺は係にマイクを返す直前に、大事なことを伝え忘れたことに気が付いた。


 「この試合、俺一人でやるから。」


 俺の二度目の衝撃の宣言に、会場は唖然とし、その後大歓声に変わるのだった。


 この無謀としか言えない宣言は、会場の観客たちには受けたらしく、皆が早く試合が始まらないかと心待ちにしたのであった。

感想待ってます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ