過去。現在に至るまで 11
長くなりましたが、前話はこれで終わりです。
翌朝。
高校の入学式。
俺は集会が始まる前に職員室へと赴き、入学式が始まる前に退学届を学校側に提出した。
俺の退学を知った妹達は当然驚き、退院後にそれを知った(快復に支障が出ると思い退院するまで敢えて知らせずにいた)翡翠さんには……
『どうして退学なんてしたの!?』
泣きながら叱られた。
予想はしていた。
が、分かっていても大切な人に泣かれるのは辛い。
彼女が泣いているのは、他ならぬ俺のせいなので尚更だ。
『それについてはゴメン。でも、これから先のことを考えるとコレが最善だと判断しました』
『そうかもしれないけど……でも、でも……路陽くんには輝かしい未来が……!』
『未来のことなんて誰にも分からないです』
『でも、路陽くん絶対にプロのサッカー選手になるって……大好きなサッカーをあんなに頑張っていたのに』
『元々、俺がプロになりたいって思ったのは、いつも俺達の為に頑張っている翡翠さんに楽をさせたかったからなんです。確かにサッカーは好きです。ですが、俺には家族以上に大切なものはありません。仮に高校卒業してプロになれたとしても、その為に翡翠さんや千隼達に辛い思いをさせるようなことはしたくないんです。先の事も大事ですが、それ以上に今が大事です』
『ゴメンナサイ……!路陽くん、私が弱いばかりに……』
『翡翠さん。あなたが謝ることなんて、何一つありません。それに弱くなんてありません。だって、今の今まで俺達を守ってくれたじゃないですか。翡翠さんは俺の誇りです。今度は、俺に翡翠さん達を……一番大切な家族を守らせてください』
『路陽くん……』
翡翠さんは自身に出来る全力を尽くした。
俺はその姿に大きな勇気をもらった。
彼女の家族を守る強い意思を引き継いで、選手交代。
そうして、俺のフリーター生活は始まった。
俺が高校中退してから、5年経った今現在。
『今年も始まりましたワールドカップ!今年の日本代表は、プロ2年目の若手が5人も入る異例のメンバー構成となっております!その中でも、スタメン確実と言われているGKの流央選手とFWの蔵間選手は中学時代同じ学校出身で、それぞれキャプテン、副キャプテンを務めており、夏冬合わせて全国大会4連覇という快挙を成し遂げ……』
夕暮れ時の街中を歩いていると、ビルの上に取り付けられた巨大なモニターから大音量でニュース番組が流されていた。
「…………………………」
(2人共頑張ってるな……俺も頑張らないと!)
先程聞こえてきた、かつてのチームメイトの名前に懐かしく思う。
それと同時に、気持ちが自然と高揚する。
夢に向かって邁進を続ける旧友に顔向けできるように。
(さてと……次のバイトに向かうとしますか!!)
俺は今日も働きに行く。
全ては愛する家族の為に。
次から本編です。




