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俺、高校中退フリーター  作者: 八鈴 京
11/22

過去。現在に至るまで 9

もう少し上げてきます。

『はい。小日向と紫藤です』


俺がその電話に出ると、


『アンタ、小日向さんのトコの息子さんかい!?』


電話に出ると慌てた様子の壮年の女性の声が響いた。


『はい。そうです。ヒス……母に何か?』


いつもの癖でつい『翡翠さん』と言いそうになり、言い留まる。


『何かもクソもないよ!小日向さん、突然倒れちゃったのよ!!』


『!!』


それを聞いて、俺の息は止まりそうになる。


が、なんとか踏みとどまる。


『落ち着いて、状況を詳しく教えてください。今、母はどうなっているのですか?』


今、意識を手放している場合ではない。


現状を的確に把握しなければ、と己に言い聞かせ、努めて冷静であるよう心掛ける。


『救急車呼んで、湯浅総合病院に運ばれてるトコロよ!アタシも付き添いで乗ってるんだけど……』


『湯浅総合病院ですね。失礼ですが、貴女のお名前と電話番号を窺っても構いませんか?』


『アタシはカラオケボックス『ヘヴンレイブン』の時間帯責任者の安斎。電話番号は……』


『有り難う御座います。スグに向かいます』


俺は、電話を切るとダッシュで玄関に向かう。


『ただいまー』


玄関の前に着いた時、丁度妹達が帰ってきた。


『兄さん、そんなに慌ててどうしたの?』


俺の様子を見て、只事ではない何かがあったのを察したのだろう。


上の妹、千隼が聞いてくる。


無論、俺は伝えるべきか迷った。


が、この場合、後になって心配させる方が悪いと判断した。


『2人共、落ち着いて聞いてくれ。翡翠さんがバイト先で倒れた』


『『え……?』』


『近くの総合病院に搬送されているみたいだから、俺は行ってくる。2人は家で待ってて!』


そう言って、玄関から飛び出そうとしたが、


『『待って!!私達も行く!!』』


小学生の妹達の真剣な声に止められる。


どうやら表情を見るからに決意は固いようだ。


『分かった……俺はタクシーを呼んでおくから、それまでに翡翠さんの着替えとか、保険証を準備しといてくれ』


『『分かった!!』』


2人は一言答えると、急いで行動に取り掛かる。


彼女らおかげで少し頭が冷えた。


冷静でいようとしても、家族の危機を前に頭が回っていないのに気付かされた。


(保険証もなしに病院行ってどうするつもりだったんだ、俺は)


軽く自己嫌悪に陥りながらも、俺は電話を手に取りタクシーを手配する。


(翡翠さん、どうか無事でいてくれ!)


それだけを切に願いながら。

前章が長いですがお付き合いください。

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