過去。現在に至るまで 8
現実は常に非常である。
更に1年が過ぎ、中学に進学した俺は新聞配達のバイトをしようとした。
が……
『お金を稼ぐのは親である私の役目です。路陽くんは自分のやりたい事をやること!』
と翡翠さんに叱られてしまった。
そのとき俺は思った。
いつか、遠くない将来……
自分や妹達を必死に守ってくれている彼女に楽をさせてやりたいと。
故に考えた、早くそれを成す方法はないかと。
(自分に何が出来る?)
必死に考えた。
その結果……
(サッカーだ。サッカーが上手ければ、早くて高校卒業時点でプロ契約が結べるし、収入も期待できる)
元々趣味でやっていたサッカーが頭に思い浮かんだ。
そして、決意した。
一刻も早くプロのサッカー選手になろうと。
それから俺は今まで以上に全力でサッカーに打ち込むようになり、幸いなことに仲間にも恵まれた。
おかげで、中学の1年の冬から3年の夏の間で全国大会4連覇という快挙を成し遂げる。
ついでに、俺自身もU-15の代表選手に1回、U-18の代表選手に2回選出され、高校に入ればU-21への選出もほぼ確実であろうと言われる程度には、次代を期待される選手として成長を遂げていた。
中学3年の春。
多くの学校からスカウトが来たが、仕事で家を空けている翡翠さんに代わり家事を担っている俺は、家の近くの公立高校を受験。
サッカーは手段であって、目的ではない。
俺が一番大切に思っているのは、今も昔も変わらず家族だ。
ギリギリではあったが、何とか合格し、後は卒業式を迎えて高校に進学するその日を待つのみだった。
高校の入学式前日。
最後の転機……
事件は起きた。
ピリリリリリリ!! ピリリリリリリ!!
けたたましい音を発てて、ウチの置き電話が鳴った。
次に来る現実は路陽に決断を迫る。




