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冒険者to感謝

今日も空が青い

天気が俺の気持ちを表しているようだ


「よっしゃ、そんじゃ冒険者ギルド協会に行こう」


朝食を終えて、身支度を終えた俺達は昨日受付嬢に言われた通り冒険者タグを受け取りに行く事にした



宿からギルドまではほど近い。ギルドの扉を開けて入ると


うう、やはりこの視線は慣れないな

こえーな!

荒くれ共がこっちを見ている!



「シュウは何でそんなにビクビクするんだ?」


ライアが言った


「いやだって、怖いじゃないか。イカツイ冒険者が睨んでるんだぜ?」


「お前の方が強いだろう?」


ライアはそう言うが、そういう事じゃないんだよなあ

受付嬢の前まで行くと俺は手を挙げて


「おはよ、冒険者タグを貰いに来たぜ」


俺がそう言うが、

受付嬢が目を逸らして


「それが、その、あの、お渡し出来ないんです」


「あ、まだ出来てない?早すぎたかな」


「いえ、その・・・不正があったと匿名で通報がありまして、冒険者にあるまじき不正で、その、冒険者資格を与えるのはどうかと・・・」


は?なん・・だそりゃ


「ちょ、ちょっと待てよ!不正ってなんだよ?昨日は買ってきた薬草でも依頼達成になるとか言ってたじゃないか!!」


「シュウ!声が大きいよ」


「カイ!だってよ!」


くすくすと笑う声がするー


見てみると、あの冒険者見習い達だ


タイル、とか言ったか?


『金持ち』の道楽冒険者ーなるほどな

アイツらか!


俺はタイル達の元に歩いて行く

するとタイルが言った


「おいおい、見苦しいね。君達、受付嬢が困っているじゃないか。だけど残念だったね、不正があって冒険者になれないそうじゃないか」


よくもいけしゃあしゃあと!!お前が言わせてるんだろうが!


俺は右腕を振りかぶって


「おっと、暴力は辞めておいた方がいいんじゃないか?冒険者に本当になれなくなってしまうよ?」


「かんけーねーな!」


俺は拳に力を込めて振り上げる


「お、おい、あんたはそれでいいかもしれないがお仲間はどうなんだ?まとめて冒険者になれないぞ?」


ちっー!クソ野郎が!!


俺は右腕を下ろす

溜めた力の行き場が無くなる


「シュウ、もう良いよ・・私達は別の街で冒険者になる事にするから」


「ライア!」


そういう事じゃねえだろう!くそっ!


「おやおや、お仲間は別の街で冒険者にね、慣れると良いなぁ。まあ、冒険者ギルド協会が成らせてくれるならね」


なん・・だと?

ギルド協会・・・

なるほど、ギルド協会は繋がっている

だからこの街でなれなければほかの街でも当然


「いやあ、良く聞くんだよ。この街でなれなかったヤツらが他の街で冒険者になろうとしてなれないとかさぁ!あはははは!」


あーだめだ、マジクソだ!


俺は再び右腕を振り上げ、力を込める


もうカイも止めようとしない


心を決めてぶん殴ろうとしたその時


バガっ


タイルが吹っ飛んだ


あれ!?まだ殴ってないんですけど!?


「はあ、はあ、はあ、はあ」


見るとライアとサーシャが


タイルをぶん殴っていた


「お、く、このクソアマ!誰に手を挙げたか分かってんのか!?」


「くすくす、タイル、カッコ悪いわよ?でもあなた達もう終わりね、彼のお父さん。この国の12貴族なのよ?」


女ウィザードがそう言った


パァン!


起き上がったタイルが仲間の女ウィザードを叩いた


「このクソアマ、調子に乗って要らないことをベラべラ喋るんじゃねぇよ。お前はベッドの上でだけ喘いでりゃいいんだ、少し黙ってろ!」


ライアがキッとタイルを睨む


「おーおー、何睨んでんだ?話聞いてたのか?親父は12貴族なんだぜ?確かお前、ライアとか言ったな。孤児院の出だったなぁ」


「それがどうした」


「いーや、どうもしねぇよ。だだな、あれだ薄汚い孤児院、燃えちまうかもしんねぇなぁ!ギャハハハハハ!」


マジでクズだな。


ライアは青い顔をして


「ま、まて孤児院は関係ないだろう!!」


そうタイルに言うが


「あー、関係ない、関係ないよ。俺にはちーっとも関係ないね。だから燃えた所で関係ないしな?」


だめだ殺す!!


俺がキレかけたその時だ


ギルド協会の扉がバンッと開いて


「あー!!やっと見つけましたよ!!変態(シュウ)様!」


「あれ?メイミ?何でここに」


つかつかと歩いてきたメイミは


「はあ、あのですね、報奨を渡すって約束だったじゃないですか!なのにいつ行っても宿には居ないし、昨夜連絡を受けたので今朝行ってみればもういないしで大変だったんですよ!」


ああ、すれ違ってたのか……


「悪かったよ、でも今ちょっと立て込んでてな、待ってくれよ」


周りがざわざわと騒ぎ出している…


「お、おいあれ銀のメイミじゃないか!?」


「あ、ああ王家に使える貴族の娘にして冒険者、限りなく金に近いと言われる銀のウィザードメイミ・・」


え!?え?


「メイミ銀の冒険者だったの?」


「そうですが、何か?」


メイミの後からゾロゾロと騎士が付いてきて入って来る。どうやら騎士を再編したらしい


取り囲まれてしまった


「あ、ああメイミ様!お、お久しぶりです!タイルです」


タイルがピシッと立ち上がりメイミに挨拶する


「あなたは?何処かでお会いしましたか?見覚えはなんとなくあるんですが?」


「あ、いえ、その、ダ、ダグダート家のタイルです!」


「ああ、あの12貴族の。申し訳ありませんが今はこちらのシュウ様とカイ様に用がありまして」


すると騎士の1人がメイミに耳打ちをする


あっ!受付嬢さん!

受付嬢がこちらを覗くように、心配そうにして見ていた


「はあ、成程。好き勝手していたようですね」


うわあ、あの目は俺を変態と罵る目よりもまだキツイ目だよ!?まさに汚い汚物を見る目だ……



「え、いや」



「受付嬢、ひとまず彼らに冒険者タグを。え?鉄ですか。似合いませんね。なんなら金でも白金でもいいんじゃないですか?」


メイミが騎士と話をしている


タイルは放置されている……


「はあ、ならば仕方ありませんね。ひとまずは鉄の冒険者タグを渡しておいてください」


話がまとまり、受付嬢さんが俺達に冒険者タグを配ってくれた


「それでは、城までお越しください。あ、お連れの方も一緒にどうぞ」


「は、はい」


ライアと、サーシャも一緒にか、確かに残しておくには心配だからな


そしてすれ違いざま、俺はタイルに


ペッ


唾を吐きかけてやったが、タイルは微動だにせず青い顔をしていた


きっとこれから課せられる処遇に青ざめているのだろう

自業自得だな


ギルドを出るとそこには馬車が用意してあったので皆で乗り込む


リムジンみたいだなーと思っていたら、そこには氷で冷やされた酒があった

多分上等な酒だろうか


「ちょっとまてカイ、お前は飲むな」


「え?なんでさ」


「なんでもだ、飲むんなら夜にしよう、な?」


しぶしぶグラスを戻すカイ

飲んだら寝ちゃうだろ。まったく、酒の味を覚えた途端にこれだよ……まさか酒好きなのに弱いとはなあ


「それにしても、あのメイミ様とお知り合いだったとは……無事に冒険者にもなれたし、

ただ、アイツがまたなんかしてくるかもしれない」


ああ・・執念深そうだったしなあ

あれくらいじゃまたなんかしてきそうだ


「ご心配ですか?」


「そりゃ、まあ、サーシャも私も孤児院出の身分だから、です」


「そうですか、ならばダグダート家は取り潰しましょうか。あまり良い噂はありませんでしたし、12貴族に欠員がでたので補填で貴族になった文字通り成り上がりなのです」


「ああ、そりゃ良かったなーって・・は?と、取り潰しって?」


メイミがニヤリと笑い


「この度、私ラインフォード家の宰相、補佐になりまして、その位の権限はございます」


ちょ??ダメだよ?この人に権力与えたら!!怖いよ!?


「シュウ様、私のお尻を先程から・・当たった振りをして触るのはやめてくださいね?死刑にしちゃうかもしれません」


ふぁっ!!バレてたか!!


「もー、シュウはメイミさん好きだよねー」


うう・・カイ?しゃべり方が・・

俺はお姉さんが好きなんだよ!

ああっ!酒は飲むなと言ったのに!


見るといつの間にかグラスを持っていた


「すかー」


そして寝るのはや!!


城にはすぐ着くんだぞ!!起きれるのか!?

まあ、いざとなれば解毒ポーションでアルコール排除するか?


「ふふ、楽しそう」


サーシャはそんなやり取りを見て楽しそうに笑っていた

なんとなくだが、最初に会った時よりも笑顔が増えた気がする


この馬車は揺れがあまりないそれなのに、速度はそれなりにでているので

かなりの高級仕様だとわかるなー


ラインフォードの城に着いた

門が開かれると、馬車はそのまま入っていき城の入り口まで進んだところで馬車は止まる


カイに解毒薬ポーションを突っ込んで起こし、俺たちは案内されるまま中に進んでいった

メイミと別れ、俺たちはメイドさんに超豪華な応接室に案内された



「おお・・このソファすげぇ・・・完璧だ」


沈まず、反発もせず・・それでいて体の負荷はない


「あー・・・まだちょっと残ってる・・でも・・悪くないよ・・うへへ」


カイはだらーっとして項垂れている

まだ酔いが抜けていないのか


ライアはやっぱりと言うか、カチカチになって緊張しているし

サーシャもフードを深く深くかぶって顔は見えない様にしている


そこにメイドが入ってきて


「おまたせ致しました」


メイドが入口を開けたまま頭を下げている

そこから姫さんとメイミが入ってきた


さすがに姫さんの恰好が、今までと違い超ゴージャス

最初は冒険者っぽい服装してたもんな。豪華だったけど姫ってわかるくらいの物だった

それが今は完全ドレス

そう、完全体姫さんだ!


ニヤニヤしながら見ていると


「シュウ、あなたこういうのが好きなの?ねぇ、メイミ、そう見えるわよね?」


おっと。顔が緩んでいたか

俺はキっと顔を引き締め真面目な顔を作る


「そうですね、あの変態(シュウ)様はその姫様のお姿に欲情しているのでしょう」


なんて事言うんだろうこのメイミさんは……

さらっと俺を陥れようとしやがって


「そうよね、私が美しすぎるのがいけないのよね」


うんうんと納得する姫さん


その泉の様に湧き出る自信は正直凄いと思う。まあホントに綺麗なんだけどさ



「ごほん、まあでも助かったよ。メイミが来てくれなかったらどうなっていたことか」


俺は冒険者ギルド協会での出来事を思い出す

あのままだと本当にひと暴れしていただろう


「どうもなりはしなかったでしょうね。それこそあの者たちを殺したところで変態(シュウ)様とカイ様はラインフォード王家が、そして私達も擁護した上でダグダート家を弾糾しますので、それこそ問題にすらなりませんね。やはり結果として取り潰しです」


「おおう・・国家が味方だった」


ちょっとこの王家を、いや、姫さんとメイミを甘く見ていたかもしれないな・・


「す、凄いんだ……シュウとカイは王族に顔が効くんだ」


「ええ、本来であればこの程度の変態なんて姫様に謁見など出来ませんから。あ、カイ様は別ですよ!」


今は護衛も少なく、信頼されていると分かる



「そう言えば儀式?とかの時に護衛あんまりいなかったなあ」


「儀式には三名までの護衛しか許されていませんから。あと2度目はご存知の様に人手不足でした」


まあ、メイミが銀の冒険者だから……きっと亡くなったあの二人もかなりの実力があったのだろうな


しかしあんな事があったのに警戒心が足りない気がする

緊急ではあったのだろうが


「で、報酬?預けてくれて良かったのに」


俺がそう言うと


「それは失礼すぎます!私とメイミの命を2回・・いえ、3回も救って貰ったのよ?本来であれば式典、さらには然るべき地位と名声が貴方には与えられるわ」


「ディアナ様の仰る通りです。ただ、貴方はそんなもの望まないと分かっているからこそこうやって内で話を収めようとしているのです」


なるほどな・・・確かに地位も名誉も要らんわ


それならばまだ、お金で済ませたい

だが莫大な報酬はいらない。やっぱ身の丈にあった生活と、たまに贅沢が出来たらそれでいい……てのは既に贅沢だなー


と、話していたら


「はあ、シュウはホントに欲がないわね」


「違いますよ姫様。この変態には限りない性欲のみがあるのです」


「うわっ!さすがにヒドイ!!」


ペッ


メイミが唾を吐いた


いや、室内で何してんのアンタ


「はあ、シュウってばそんなに有り余ってるのなら私が相手になるわよ?そのまま国王にだってなれちゃうわよ?」


「姫様、はしたないです」


バシッ


「いたっ!また叩いたわね!?」


「この変態(シュウ)はおやめ下さい姫様、姫様にまで変態がうつりますから。ただでさえアホなのに変態にまでなると私もこの職を考えなければなりません」


なんだとテメー!


うつるってなんだうつるって!俺はウイルスか何かか!?

そうしていつもの調子で話していると


メイドがやってきて


「姫様、そろそろ・・・」


時間のようだ


「はぁ、シュウ、これが一つ目の報酬のラインフォード王族の許可証。何をするのもそれがあるとできると思うわ。城に入るのも自由、また城下町で商売をするのも自由よ」


「おお・・・ありがたいな」


そうか、商売をするのも許可なんているんだなー。当たり前か


「そして二つ目、幾ばくかのお金ってところ。とりあえず金貨100枚あるわ。また足りなければ好きなだけ私が出すから言ってね」


「ひゃ・・!?」


「まぁシュウとカイなら冒険者をやっていけばそのくらいのお金はすぐに稼げるでしょうけどね」


そ・・そうなのかなぁ・・でも100枚は貰い過ぎな気もするが、さっき欲がないとか言われて悔しかったので貰っておこう

そしてメイミが


「最後にこれは私から。あなた方二人の功績は冒険者に例えるならば少なくとも銀以上が相応しい。だけど、一足飛びに銀にはなれないルールがあるから・・はがねになれる様にギルドに言っておきます」


そう言ってメイミはにこりと笑う


「ありがとうメイミ」


「次に会う時は銀か金になっているかもしれませんね」


そう言ってメイミは深く、頭を下げたのだった


メイミはシュウとカイに、心から・・感謝しているのだ


2人が部屋を出ていくと、ぷはぁ、とライアは大きな息を吐いた


そんなに気にしなくていいのにな





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