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王女toデーモン



「フロウ!」


俺の魔法が馬車にかかる

これは物に、浮力を与えて自由に操る魔法だ

普通のウィザードなら人間1人を浮かせる程度だが、俺の魔力ならば多分1トンくらいは余裕だ


ふわりと浮き上がりそのまま猛スピードでラインフォードに向けて移動を始める


俺達の馬車に全員乗り込んで、ラインフォードに行く事にしたのだが、

そのまま行けば2日はかかる

だから魔法で時短することにした訳だ


「落ち着いたか?」


馬車の荷台にいるメイミとディアナに声をかける

カイル達の亡骸も一緒に乗せている

ラインフォードに連れ帰って、弔ってやりたいらしい


「はい、わがままを言いまして申し訳ありません。それに命まで助けて頂いて」


俺はメイミの頭をぐしゃぐしゃに撫でながら


「違うだろ、ありがとう、で良いんだよ」


俺がカッコつけてそう言うとメイミはまた、涙を浮かべた


「私からも礼を言います。ありがとうございます」


ディアナが深々と頭を下げる


「いいんだよ、あんなとこに放って置けないしな」


「それにしても、凄い魔法ですね。こんな馬車ごと飛ぶなんて」


「そうか?まあいいだろ。早くつくしな」



あー。やっぱやりすぎかコレ。加減とかしてる場合じゃ無さそうだしなあ・・

メイミが恐る恐る聞いてきた


「カイ様も、シュウ様も一体何者なんですか?さぞかし名のある冒険者・・いえ、どこかの国お抱えのウィザードと思いますが」


「いや?俺らは別に冒険者でもウィザードでもないぞ。つい数日前まで田舎にいたしな」


うん、牧場で暮らしてたし。

ミル姉元気にしてるかなぁ


「え!?それにしては、その、妙に戦いなれしていますし、その、人が死んでいるのに・・・」


ああ、そう言うことか・・


「まあ、戦い慣れって言うのは田舎にいたからさ、暇だからカイと剣術や魔法の修行してたんだ。あと、人の死には慣れてしまっているから・・・かな」


そう、カイと見下ろして見ていたこの世界

何度も、何度も戦争があったのを俺達は見て、知っている

だから、優しい人も悪意ある人もたくさん見てきたんだ

みんな、亡くなっていった…


「そうですか・・・大変だったんですね」


「あ、いやまあ。そう、大変だったのかな」


俺は頭をかきながらそう言った


「シュウ、そろそろ着くよ」


カイがそう言う


「分かった、魔法解除な」


俺は魔法を解除(ディスペル)する


ゆっくりと馬車は地面に降りた


そこはラインフォード城下

見渡す限り地平線が見える巨大な湖の横に、街がある

そのまま街を抜け、湖の傍にその城はあった


頑丈そうな壁に守られた城は侵入者など寄せ付けはしない。


がー


「中に入られたら終わりだからな」


しかも怪しまれず、宰相なんて地位に居れば尚更だ


ディアナとメイミは馬車から降りると、そのまま城門へと歩いていく

俺達も後ろについて行った


城の衛兵に、何やらメイミが話している

慌てて衛兵達は城門を開けた


俺達はどんどん進む2人に置いていかれまいと付いていく


それを見た城の兵士達も、その後からぞろぞろと付いてきている


玉座の間へ辿り着くとー

バタンと、扉が閉まるー


その真ん前にラインフォード王が座るはずの玉座があり、今は主は空席のはずだが……


「メディア!!」


走り出すディアナ

王座に腰掛けるはまだ小さな姫であった


そしてー


「良かっー」


妹を抱きしめたハズのディアナの背中から

長い、長い剣が生える


「かふ」


か細く、そして何が起きたのかわからず


ディアナは口から血を流しながら、ずるりと倒れた


「ひ、姫様あ!!!」


駆け寄るメイミ、だがカイがそれを引き止める


「メイミさん、落ち着いて!誰かいます!姫を刺した奴がまだ!」


ぬっと玉座の後ろから現れたのは1人の男


「ランドルフ宰相!!」


「はあ、おやおや、メイミどうしてこんな所に?ああ、これはおかしい、偽者かな?これは不幸な事故だね?まさかの偽姫が死にかけているよ」


ドカッ


ディアナを蹴り飛ばす

だが悲鳴も、うめき声さえ発さない


血まみれの玉座にまだ剣が刺さったままの小さなメディアが座っている


「はあ、おや?賊に刺されておりますな!これはいかん・・・ですね!」


ランドルフはわざとらしく言って剣を引き抜き


「ハイ・ヒーリング」


メディアに回復魔法をかける


「はあぁ、これでもう大丈夫だよ、姫様」


ニヤニヤと笑いながらランドルフは言った


「ランドルフ!あなたは!ディアナ姫様にもヒーリングを!」


メイミが叫ぶ


だが


「はー、バカを言うな、ディアナ姫は今試練に出ておられる。偽者だろう?それにーこれくらいの年になると洗脳もできないからなあ。いらないよ、そんなゴミはねぇ」


ランドルフがにやりと笑う


カイが走り出し、ディアナを抱き上げて後ろに下がる


「なんだ、ゴミ回収にきた業者かい?賊になる奴らの分際でなかなか役に立つじゃあない。ついでにこれも、捨てておいてくれるかねぇ?」


そう言ってランドルフは鎖を持ち


じゃりん・・・


ごとん・・首輪をされ、口から血を流した全裸の女性を投げ捨てた


そして剣を、その倒れている女性の頭目掛けて投げつけ


ざくり


「あ、あ、あ、あ、あ!お、王妃様!」


決まりだ、こいつはクソ野郎だ。


「はあ、いやあ、昨夜は色々楽しませてもらったのだがね、今朝起きたら舌を噛んで死んでいたんだよ」


「な、なんてことを!」


「はぁ、私にはメディア姫が居れば十分だからね。君たちにあげるねぇ、あ、罪人は君たちだからーよろしく」


「ランドルフぅー!!」


メイミが泣きながら叫んだその瞬間

ランドルフがニヤリと、笑い


がたん


床がパックリと空いて俺達は落下する!

そう簡単に落とされて・・・たまるかよ!


「フロウ!」


だがしかし魔法は発動しない

発動しかけた魔法が、魔力が霧散していく


「シュウ、魔法避けの結界だよ!人の魔法は使えない!」


そうか!それならば


「×××××××××」


人の魔法と異なるロジックの竜の魔法なら


発動するだろ!


ヴン・・全員を包み込む光が俺達を浮かせて落とし穴を避けて浮かび上がる


ふわりと再び玉座の部屋に降り立ち


「あんたが宰相?流石に許せんな。もちっと女性は大切にしろよ。カイ、姫さんは大丈夫か?」


「ああ、まだ気を失っているだけだよ」


カイの抱き抱える姫さんを見て大丈夫だと言った

助けた瞬間にヒーリングをかけたようだな


あの役は俺がやりたかったなー

そしたらまた合法的に触れたのに


そんな俺達を見てランドルフは驚く


「な、な、何者だ!?落とし穴にはアンチマジックの結界があったろう!?魔法は使えないはずだねぇ!?」


「ああ、そうだったよ!使えなかったさ!」


俺は素早くランドルフの足元に移動して


ガリッ


剣を振りぬき、すれ違いざまにランドルフの頭を切り落とした


「くひゅう!」


ランドルフの呼吸が漏れる

だがランドルフは落ちそうな頭を持ち


「ひゃはあひはひははは!」


笑った


「なんだなんだ、やる気だな、いいやぁやりましたね、私のあたまをね!」


目が・・眼球が真っ黒になる


「人じゃ、ない」


メイミが言った


そしてその姿を見てメイミはパタリと倒れ気を失う


ニヤニヤとランドルフは笑いながら


「はあ、人ねぇ。そんな下等な生き物と一緒にされても困りますねぇ」


「じゃあ何なんだ?」


「はあ、人間よりは高等な存在なんですがね?聞いた事がありませんか?」


バカにした態度取りやがって!


「デーモン・・・か・」


カイがつぶやく


「デーモン?なんだそりゃ?」


聞いた事ないが?悪魔ってことか?


「シュウ、いたじゃないか。あの黒いやつらだよ。魔界の」


「ああ、あれかあ!いたいた!」


たしか、霧みたいな奴らだったっけ


「はあ、ご存知であるみたいでなにより。それよりもこのランドルフの望みを邪魔するなんてダメじゃないですか。もう何者でもいいです。所詮人間ですね、死んでください」


ランドルフが言うやいなや、辺りを黒い霧が覆う


魔法感知はダメか


一切の光はないー


なるほど、ライティングもダメ

風魔法でも吹き飛ばせないか


だが


俺の瞳には


デーモン・ランドルフの姿がはっきりと見えている


人間・ランドルフの後ろに立ち、まるで糸で操っているような奴が


「とりあえず、霧が払えないなら吸い込む迄だな」


俺は剣先で魔法陣を描き


暗黒ブラックホール


霧よりもまだ黒い穴を生み出す


霧がすうっと全て吸い取られていく

魔法の終わりと共に辺りに再び光が戻る


「バカな?お前ら本当に何者だ?」


「誰でも良いだろう?」


ランドルフの後ろのデーモンに近づいて

宰相の後ろにある糸を切り裂いた


バタリと倒れるランドルフ


「切れるはずが無い!!」


声が空間から発せられた


宰相ランドルフを見ると、しゅうしゅうと黒い煙を上げてどんどん痩せこけていく

既に死んでいたのか……


俺はデーモンをそのまま切り裂くがダメージを与えられない


だがデーモンも俺にさっき切った糸を伸ばそうとしているが、そんなものは全て切り裂いてやる


打つ手がないなと、思ったその時


「シュウ、光の魔法だよ!」


カイが言った

なるほど、デーモンは影みたいなものだ。だから光と!


「おい、国にかえれよ!ライトニング・バースト!」


本来はアンデッドを切り裂く魔法だが

やはりデーモンにも効果があったらしく、その存在ごと、輝く光にて消し飛ばす!


「はあ、バカな・・・・」


そう言い残してデーモンは霧になって消えた



「ああ、もう、なんだこいつ!腹立つな!カイ!こいつら腹立つぞ!」


「ああ、そうだねシュウ・・・」


カイの雰囲気がおかしい気がする


バァンと勢いよく扉が開いた


先程の兵士達が踏み込んでくる

あれ?兵士達の上にも黒い糸が見えるな

だがデーモンは居ない


倒れた宰相を見るや


「賊どもめ!宰相殿に何をした!」


俺達を取り囲む

しかしこれを宰相と分かるのか……カラカラに乾いた死体が


ああ、こいつら宰相(デーモン)とグルだったのか


カイがその瞳で兵士達を見ると


「ああ、なんだ。君たちもか」


そう言って瞳を閉じた


バタバタと、次々と倒れる兵士達

後ろにいる兵士が悲鳴をあげている


ある兵士は頭が吹き飛び脳漿を撒き散らす

またある兵士は下半身が消えてなくなる

内蔵が飛び散る


血が雨のように降り注ぐ様はまるで



地獄



ぶちまけられた臓腑と血の臭いが充満する


「カイまで怒らせるとか、よっぽどだな。アイツら何したんだよ」


メイミとディアナ達が気を失っていて良かったとシュウは思った


そして彼らはデーモンに魅入られた

ただそれだけだ


元から人間だったシュウと違い、カイは竜だった

だからか人間の死には元から無関心に近い

では何に怒りを覚えたのか


それは美しい魂であり、生き様である


魂の色は生き様によって変わる


そして彼らの殆どの魂はー


「汚い。ボクにそれを見せるな」


デーモンに汚染された魂は、カイが嫌悪して、ただそれだけで


破裂した


生き残った数人の兵士がいる


彼らはまだ、汚染されていなかったのだろう


「あ、ああ・・ひぃ・!」


「怯えさせたね。ごめんよ」


カイそう言うと死んだ兵士達は


全てその存在が消えた

体も、臓腑も、血さえも。まるで何も無かったかの様に


「さて、カイ。気は収まったか?ならお姫様を起こそうじゃないか」


俺はカイに羽交い締めにして起こすのを止められた


「君たち、姫様は無事だよ。早く介抱してあげて」


「ちょ!まてよカイ!あ、ああ!姫さんが!つ、連れてくなぁー!!」



-----



ラインフォード城は大騒ぎになった


目を覚ましたメイミとディアナにより、生き残った兵士、城仕えのメイドなどにいきさつが話された


そして、反乱していた兵士達により地下牢には大量の死体が閉じ込められていたそうだ


死体には数々の拷問のあとがあり、とても同じ人間がしたとは思えない所業だったらしい


それは王に忠誠心が厚い兵士だったり、また騎士までもが全て殺されていたのだ


デーモンの力を借りた兵士、またあのウィザード・ダグラスにより行われていたと、生き残った兵士達の証言により明らかになった


だがその犯人は一人残らずに消えていたのだ


でも犯人が居ないと証拠がないわけで、困るのである







「カイがやりました。全て消し去りました」


湖の地平線から登る朝陽を見ながら俺は言った


「や、やりすぎました」


頭を下げるカイ



「いいんです。助けて頂いて感謝しております」


「いいのか?姫さん。犯人いないと示しがつかないんじゃないの?」


俺は頭をかきながらそう言うと


「まあ、正直困りますが」


まあ、命あるだけマシか

この騒ぎで城にいた兵士など、過半数が死んでいる


大変だなー


「妹さん、大丈夫か?」


「まだ、母が死んだ事が辛いようで・・・」


「まあまだ小さいからなぁ。支えてやれよ?」


「はい。それと、シュウ様とカイ様にはこの城に残って頂けないかと」


ああ、まあそれは言うかなと思ってた


「ま、城を宿代わりにさせて貰ったしもう十分だよ」


「そうだね、これから街も見て回りたいしね」


「あ、でしたら案内させます」


「いいのいいの、俺らだけで十分だー」


ディアナが、俺に口付けをした


「ふべっ」


顔が真っ赤に燃えている様だ

うっわ恥ずかしい!こっちからするのは平気なのにされたら超恥ずかしい!

姫さんはさらにとんでもない事を言った


「私の夫になって頂けませんか!」


姫さんが強い口調で言った

でもなあ


「あー、俺はガキに興味ないから」


「私、もう20ですよ?」


あ、俺よりも年上!?

でもその・・。


「私の体がご不満なら愛人でもなんでも作ればいいじゃないですか」


「へ?」


「シュウ、彼女と結婚したら王様になるって事じゃないかな」


いやいやいや!

それは嫌だ!自由がなくなるしまだ殆ど冒険すらしてない!


「あー、姫さん悪い。俺は王にはなれないよ、そんな器じゃあないしな」


断るのは、仕方ない。

姫さんほんと綺麗だし勿体無い気がするけど


「そう、ですか。なら報奨を、ならば報奨を受け取って下さいませんか!」


泣くなよ・・・


「ま、まあまた遊びに来るからさ、通行証かなんかくれよ。次来た時に城の門番に止められないようにさ」


「分かりました。あと、姫さんじゃなくて」


涙を拭いて


「ディアナと呼んでください」


そう言った









裏目標ー


「カイ、今何人かな?」


「えっと、ミル姉、メイミさん、ディアナさんだね」


「隣村のお姉さんを入れて4人か」


「見事に女性ばかりだね・・・変態」


「カイ!?」

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