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魔王・魔神

ゴアアアアアアアアアアアアッ!


抱きついていた俺に直接巨大な火球をぶつけようとする赤ミル姉


「ちょ!自分も燃えちゃうじゃん!!」


「あ・・・しまった」


ぽそっとミル姉が言った

ダメじゃん・・・自爆じゃん


だがもう向かう火球は止められないので


「凍れ・・全ての物よ・・ホワイト・ローズ・マイン」


俺の右手に生まれた小さな氷の種を火球に向けて飛ばす


衝突した瞬間


キンッと甲高い音を立てて氷結した


「なっ!?アレを凍らせるだと!!」


赤ミル姉を左手で抱きしめている俺は、そのまま赤ミル姉の目を見つめて


「大丈夫か?怪我はないか?」


そう言った

すると


顔を真っ赤にして


「あぅぅ・・」


おや?ちょっとまて顔が・・ちょっと違う?


「あれ?誰?・・・・」


俺がそう言うと、バッと離れ


「我が名はアイナ・シュタイバード・・魔族の王だ。貴様こそ何者だ?人間の様だが先ほどの魔法、只者ではあるまい。名乗れ」


そう言った

俺はつかつかとアイナに近寄り


「いや、人違いだった。ごめんごめん。俺はシュウ、人間で冒険者だ」


そう言って再び抱きしめた


「何をしている?」


アイナが声を震わせながら言った


「いや、これが俺たちの挨拶なんだ。親しくしたいと思っている人にはこうやって挨拶するんだよ」


そう言って体を密着させる


「ほお、変わった事をするのだな」


おお!アイナの顔真っ赤!こいつ可愛いぞ!

楽しんでいるとカイに引きはがされた。何しやがる!


「初めまして、アイナさん・・っと魔王様の方が良かったかな?」


そういってカイは挨拶する


「アイナ様でしたか、お久しぶりです」


様子を見ていたベイガーも前に出て話しかける


「おお!ベイガー!やはり帰っておったか。お前の魔力を感じてな!懐かしいと思ってわざわざ飛んできたのだ・・・・で・・、この人間共は何だ?私の魔法を打ち消したぞ・・・」


「シュウ様とカイ様でございますな。人間でございますが、その力は底が知れませぬ」


「むう・・・人間共はこんなに強い物だったのか」


「いえ、この二人が特別かと思います」



ベイガーはかつて、魔王様の側近として働いていたことがあるらしい

その縁で魔王は訪ねてきたのだとか


淹れ直されたお茶を飲みつつ、アイナとベイガーの話に耳を傾ける


「実は来たのにはもう一つ理由があってな・・・どうやら人間界に行くことになりそうだ」


「なんですと?ですが封印結界があるではないですか」


「うむ、それなんだがコレを見てほしい」


そう言って地図と手紙を取り出した

それにはこう書いてある


デモンに寄る人間界の支配率がもうすぐ5割を超える

之を持って、封印結界は意味を成さず魔界は人間界と同一になるだろう


そして人間界の地図には帝国支配地が北ではなく「南と東」に伸びている事を示している


「デーモンですと!」


「ああ、デーモンを使って人間界を支配しようとしているようだな・・あやつらに倣えば、デモンと呼ぶのだろうが」


「それでどうなさるおつもりで」


「人間界に攻め入れば天界が黙って無かろう、この3世界を巻き込んだ戦いになる可能性もある」


「それってさー、止めたほうがいいの?」


俺は話に割って入り、アイナの手を握りながら言った


「あぅ・・・う・・うむ、戦争となれば其れは魔界の意思ではないからな・・握らないでもらえるか?」


「これって、誰が行ってるかわかるか?」


「あぅ・・ふ・・太ももはさすらないでくれ・・恐らく南の魔王がやっているのだろう。過激派というやつだ」


うーん・・・南の魔王ね・・・アイナも魔王だから、魔王って複数いるのかな・・

いや、人間の国王みたいなものか。魔族の国も複数あり、その国の王が魔王なのだろう


「カイ、どうする?」


「んー・・僕らが前にでるのは避けたいよね。ってことでアストを探しに行こうか彼ならなんとかできるだろうし」


あー。アストか・・会ってみたい魔族ではあった


「なっ!?アストだと!?バカな!もう死んでいる!」


「なんで分かるんだよ?」


「当たり前だ!アストは我が祖先だ!しかも80代前のな!」


おーアイナと名前がなんとなくにているのはそういう理由か

だけどちょっと違う

アイツは・・・死ぬような存在じゃぁないからな


「もし居場所が変わってないのなら、フィル・ダガにいる筈だ。フィル・ダガの地下奥深くになー」


「ちょっと待って下さーい!」


「ティナ!?どうしたんだよ」


「ちょっとアクアスで問題なんですけど・・・えっとお兄ちゃん行ける?」


問題ってなんだ?呼びに来るって事は一大事?

ちょっと行ってくるか


「分かった、んじゃアストはカイに任せるとしてちょっと戻ってくる」


「あのぉ・・私はどうしたら・・・」


おっとナナミ忘れてた。

俺はナナミの肩に手を回して


「一緒に戻るか?アクアスならここよりは安全だし」


ドヤ顔でキメてみた

するとナナミはこくりと頷いた





----------




「こんな所に入口が!?」


フィル・ダガの旧市街

今は使われなくなって久しい井戸の底にその入口があった、と言うべきだろう

確かに横穴はあるが崩落し、道は塞がれている

それらを綺麗に避けてはいるには流石に量が多すぎる


薄暗い横穴の中で、カイとアイナはどうしようもない壁を前に立ち止まっていた


「まさかまいったね、この様子じゃけっこう先まで詰まってそうだし・・・」


「だがどうする?その、本当に地下があったとしてもこれではいけないぞ?」


「アイナさん、これから先は他言無用でお願い」


「む・・・まぁいいが・・・」


カイは目の前の瓦礫に手を当てると、何かをつぶやいた

すると、不思議なことにその瓦礫すべてが消え去る


「な・・・」


「ちょっと消滅させたからこれで大丈夫かな?じゃあ先に進もう」


「バカな・・消滅の魔法など・・・」


アイナは魔王だ、だからこそ火の系統魔法は極めた

ただしその代わり、真逆である水系は弱い。相性のいい風などはそれなりだ

そして闇と光の魔法

これにおいては一部のわずかな魔法のみが残っている

その中でも伝説となった魔法の一つ・・・消滅

目の前でされた事の一切がその魔法の証明なのにアイナは信じられなかった


カイはアイナと共に足早に奥へと進んでいく


その無言の時間が2時間は過ぎた頃


アイナはシュウを思い出していた

氷の魔法・・・極めた火の極致をいとも簡単に凍らせたアレ・・


胸・・・揉まれて手を握られた・・・・あぅ・・・

シュウの顔が浮かんできて、顔が赤くなる

幸い、ここは暗いので誰にも見られずに済むのが救いだ


「カ・・カイ」


「はい?なんですか」


アイナはカイの瞳をじっと見つめる

それは今まで無かった感情の発露の先を求めているものであり、カイ自身に向けられたものではないとわかってはいても

ちょっとドキっとする色気がそこにある


「シュ・・シュウは恋人とかいるのだろうか?」


もじもじとしてようやく吐き出した言葉がそれだ


「は!?えっと・・い・・いないけど・・」


「そうか!」


パァっとアイナの顔色が明るくなる

だがカイは


「えっと・・・なに?惚れちゃったとかそういうこと?」


「うむ・・そうらしい」


たったあれだけの接触でか!

ちょろい!ちょろすぎるよ!


「アイナさん、年齢・・いくつ?」


「ん?80だが?」


「・・・もうちょっとアレだ・・・きっとシュウは若い子が好きだから諦めてもいいんじゃないかなぁ」


カイは自分の口から出た言葉に少なからず動揺する

アレ・・?なんで僕はこんな事言ってるんだ?


「な・・・っく・・そうか・・だが・・だけど私はこの感情を・・シュウ言いたいんだ・・」


あの短時間でそこまでか!?

どれだけ免疫なかったんだこの人


「いや、辞めてほしいなぁ・・いやだなぁ・・」


カイの心音が少しづつ早くなる


「どうしたのだ?カイ?そこまで貴方が嫌がる理由が分からないんだが?」


アイナは不思議に思う

そう、カイとシュウはまるで親友という雰囲気があるためここまで露骨に嫌がられると思っていなかったのだ


「いや・・・だってさぁ・・」


シュウに恋人ができたら、カイはまた一人ぼっちになってしまうのではないかという心配がある


今まではそれでも大丈夫だと、たかを括っていたのだが最近のシュウの変態ぶりを見る限り

だんだんと不安が大きくなってきたことは確かだ


両手を組み、思案するようにしてどんどんどんどん前に進んでいくカイ

目の前に時折邪魔な岩などがあるのだが、問答無用で進む


バガン・・バガン・・・と岩を砕きながら


「ちょっ!カイ!早い!ちょっとまって!」


だんだん速度を上げていたカイは


「ああああああああああああああ!ダメ!信用してないわけじゃないけどダメだ!」


「なぁあああにがだめなんだああああ!」


二人とも全力で走りながら叫ぶ


「ボクが!僕が!シュウと一緒にずっといたいんだぁ!」


ドンッ!と立ち止まるカイにぶち当たるアイナ


「がはっ!」


「そうか・・僕は嫉妬していたんだ・・」


自問自答に答えが出たカイは心が晴れやかになる


カイもまた、初めての感情に戸惑っていたのだ

長い間、そんな感情など必要なかったが故に知識では知っていても自分に当てはめることなどできなかったから


「な・・なんだカイ・・お前もだったのか・・」


アイナはそう言ってカイを見た


「うん、ごめんアイナさん。急に取り乱しちゃったね」


「でもカイ、いくら顔が綺麗でもお前とシュウは同姓だろう?」


そう、誰もがそう思っていた


「いや?ボクは女だよ。今までシュウと「友情」を育むために男の振りをしていたけど、もう限界みたいだ」


「え?」


「胸はないんだよね・・・この体。だけど大丈夫のはず。だってシュウの本性は・・・・・」






----------





そろそろ、地下への入り口にたどり着く

あたりの温度は冷え、そして明るい先が見えてくる


おかしいとアイナは思った


地底とは普通、温かいものだろう?


暗いものだろう?


だがここは常識外の場所だ


なにせ、


「アストってさ、魔族の祖にして魔族の国の初代国王なんだよ、その言葉通りの意味するところはなにかわかる?」


カイが言った


「ん?祖にして国王・・なんだろ?」


アイナが答える


「それは正しくもあり、大きな意味は欠けているんだよ」


大きな意味とはなんだろう

考えているうちに、あたり一面が氷に覆われた世界に出る


空も・・ある。太陽はないが明るい


「まぁアストの居場所はすぐそこだから、行こう」


そこには巨大な墓標があった


あまりの巨大さに驚いたアイナは震えさえ来る


「な・・なんだこれは」


「封印だよ。っと、アストー居るんだろー出て来てもらえるかなー?」


そんなんで出てくるのかと思ったら


一人の真っ赤な魔族がどこからともなく現れた


「なんだテメェら・・せっかく寝てんのに邪魔すんじゃねえよ」


そうぶっきらぼうに言い放つ魔族・・・こいつがアストか?


「アイナ、これが「すべて」の祖にして君らのご先祖様のアストだよ。いやぁ、本物はやっぱカッコイイね」


本物はというあたり、偽物もいるのだろうかとアイナは思う


「ああ?なんで知ってる。俺の名を。もうあれから何年たってるとおもってんだ魔族も人間も、伝承すら残ってねぇだろうが。つーか俺は用はねえ、帰れ」


そう言うとアストは手をあっちいけとひらひらさせる


「つれないこと言わないでくれよ、ちょっと最近デーモンが悪さしてるからアストにどうにかしてもらおうと思ってさ」


「はぁ?デーモンだと・・・そんなハズはねえだろ。あいつ等は無害だ。」


そう言って取り合おうともしないアストにカイは


「足元に封印されてる人らがデーモン使ってるんじゃないかと思うんだけどね?」


そう一言言うと


「なんだテメェ・・・何を知ってる」


「いや・・知ってるっていうか、見てたっていうか・・・」


二人の会話に着いていけないアイナが言った


「二人とも一体なんの話をしているんだ?それよりも本当に貴方がアスト様・・ですか?」


「ああ、そうだぜ・・・ふうん、お前中々良い魔力してんな。直系の子孫か」


「はい、アスト様は80代前になります」


随分と時間が流れたなとアストは思った

子孫が繁栄するのは

たが、足元の奴らが原因でデーモンが変化した?


まさかと思い、念のために足元を調べる


すると、全20の反応のうち一つが消えていた

さらに残りの19の反応が薄い・・・


「ちっアイツら何やりやがった。確かに、反応が薄いし一つは消えてやがる」


「反応が無いのは倒したやつだろうね」


「肉体から出て不死性が失われたか・・・馬鹿な奴だ」


「アスト、なんとか出来ないかな?人間に取り付いて悪さしているみたいなんだ」


「人間界にいるのか・・。厄介だな。俺は人間界には行けねぇ。よし、娘、お前が行ってこい。んでとりついてるヤツを引きはがす魔法を教えといてやる」


「わ、私がですか!?」


「ああ、いいだろ?」


「ええ、ですがしかし結界がありまして、人間界にこのままは行けません」


「そうか。まだアレ残ってたのか」


アストは指輪を取り出すと


「これ付けていけ。通行証みたいなもんだ」


そう言って放り投げた


「そんじゃ、また倒したら来い」




「あ、アスト!」


「ああ?まだなんかあるのか?」


「良かったらサインくれない?僕君のファンなんだ!」



カイはどこからともなく色紙とペンを取り出していた















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