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勇者召喚・地獄の炎

アギレスの国


ここは帝国との境である


帝国はここ100年で4つの国を飲み込んでいる

その全てが呪われた国を吸収する形で行われている


アギレスの国は呪われなかった

それは、天使伝承にあるのかもしれない


「かつて、この国の祖は天使の子と言われております。それ故に天界の手厚い保護下にあったとされており、強力な聖国として栄えました」


そう語るのはこの国の王子だ

ソル・フォン・デーヌ

若干20才にして剣と魔法の天才


彼が語っている相手はまだあどけなさの残る少女だ

目をどんよりと濁らせてその話を聞いている

その横には目を輝かせ、俺の時代がきたぜと荒ぶる鼻息で続きを聞こうとしている男の子達の姿もある


特徴として、男の子は黒髪黒目でだらしなく着ているブレザーの制服。女の子は若干校則で許される程度の茶髪といった所だ


「おおおおお!!!すっげ!これってあれだろ、勇者召喚!いやー俺って勇者だったとは!!リキヤ、この展開は熱いねぇ!」


「あーもう、カケルくん声がでかいっ。そりゃこの宮殿にキラッキラの王子様、あときれーなメイドさん達みてテンションは上がるけどさー」


「カケルもリキヤももう少し話きこうよ・・・・」


「チョウジは嬉しくないのかよ!異世界だぜ異世界!みろよ、ステータス一覧にスキルとかあんじゃねぇか!俺勇者だってよ!」


はぁ、とため息をつくソル王子

話には聞いていたが、勇者償還で現れた者はやたらと煩いと。

だがそれも仕方あるまい。剣と魔法の天才とは言え、目の前に現れた6人の男女には既に敵う気がしないのだ

それほどまでに強い魔力を感じる

過去現れた「白金」の冒険者達の再来だ


なにせ彼らは圧倒的な力と魔法を使える。それは天使の恩恵だ

アギレスの国が帝国に侵略されないもう一つの理由、それが「勇者召喚」だ


ただ、今回はいつもと毛色が違う

なにせ今まで、1人か2人しか召喚されないのに今回は6人も居る


もしかしたらそれ程までに帝国の脅威と言うものが押し寄せてきているのかもしれないと、ソル王子は思った


「それで、あなた方にはこの国を守っていただきたい」


「なんだよ?世界じゃねえの?」


カケルは王子相手にも臆することなく話す


「ええ、それが強いては世界を守る事と同じですから」


「それにしても・・アカリ達大丈夫かな・・・」


この場に居るのは4人男子3名女子1名だ。残り2人も女子なのだが、先程貧血で倒れてしまった


「ナナミ、お前のステータスにある職業はなに?」


リキヤが言った


「んと・・・魔女・・ってある」


「はっ!魔女か!似合ってるねぇ・・・なぁ王子、魔女ってどんな職業なんだ?」


「魔女・・ですか。それはなんとも言えませんね、伝説上の存在ですから」


「おおお!?それもなんか凄そうだなー。俺らが思っている魔女とは違うのかもしれないな」


カケルは腕を組み考えるように言った


彼らに与えられた役割は

カケルー勇者

リキヤー勇者

チョウジー勇者


アカリー勇者

シズクー賢者

ナナミー魔女


だった

4人の勇者と1人の賢者と1人の魔女

これだけで何か物語が始まりそうな予感がすると、ナナミを除く5人はその夜の歓迎会で大いに盛り上がった


勇者組4人は、ゆわゆるオールマイティだ

ありとあらゆる武器を使いこなし、回復も出来るし強力攻撃魔法も使える

ステータス欄のすべてはそれらが使えることを暗示していた


賢者ーシズク

彼女は千里眼・予知・そして勇者ですら行使できない魔法が使える


魔女ーナナミ

精霊と話ができる・さらに古の魔術が使える


そんな振り分けだった


まあ、彼らの常識に照らし合わせてわかりやすく言えば

5人は優秀なジョブで、1人はハズレ

じゃあどうするか?


決まっているだろう、一人を残して冒険に出かけるのだ








それから三ヶ月後

彼らは順調に冒険を重ねた


カケルとアカリ

リーダー格の彼は、同じ勇者のアカリと金の冒険者2人を連れてモンスターを狩り、強くなった

最近ではついに、ドラゴンを打ち倒したらしい


リキヤとチョウジ、シズク

彼らはあらゆるダンジョンに潜る日々だったが、ついに伝説級の武具を手に入れる


そしてナナミ


3ヶ月目、彼女は1人何処かへ消えた





----------




私が足を踏み入れたそこは、悪魔デーモン魔族グリムと呼ばれる種族達の住む世界だった


彼らは非常に友好的で、その見た目の恐ろしさと裏腹に穏やかな種族のようだ


私は彼らと友好を築くべく1年ほど旅をさせてもらった

特にアストと言う魔族には世話になった


旅の中、妖精に騙されたどり着いた場所であったが、また来たいと思える程にこの場所は素晴らしいと思えたのだ



ー世界探訪記・著ケイ・エイブー



「で、彼がフィル・ダガの詳細な地図を残しているんだけど・・・」


「ちょ・・ちょっと待って下さいカイ様!?その本はどこで手に入れられた物なのでしょうか?」


「うん?田舎の村にあったよ」


「信じられません・・・これは・・・」


パラパラとその古い本をめくりベイガーは驚く


「まさか、人間が魔界に足を踏み入れていたのですか・・・」


どうやら書いてあることは真実らしい、その本には天界のことすら書いてあった


今俺達は、ライン湖の底を抜けて魔界に来ている

出入り口は封印されていたが、ベイガーはその抜け方を知っていた


ベイガーの道案内によりフィル・ダガに向かっている道中でのやりとりだ


ちなみにそんな本を見なくても、

かつての見ていた世界で、全てを見て過ごしていた俺たちはこの世界のすべてを知っている

見聞きすることができていたからだ

ただ、俺はカイのように一人ひとりの人生を追うことなど出来ないのでその中で重要人物と見られる人々を注視して楽しんでいたりしたなぁ・・


「しかもアストとは・・・」


「ベイガーさん、その人・・でいいのかな?は、どんな人なんです?」


「ええ、魔界の祖と言われている我々でも伝説の魔族です・・まぁ長寿の魔族ですが、とっくに亡くなっていますが。数十万年前の出来事ですよ・・・確かに、この本には凄まじいまでの状態保存魔法がかけられていますので納得も出来ようものですが。見たことのないような魔法式ですし」


おお・・珍しい、言葉が少ないベイガーさんが饒舌に教えてくれるとか。しかもちょっと興奮気味に


でも待てよ、アストって死んでない気がするんだけど・・・


「これで僕たちが知っていたって事、分かってもらえたかな」


「ええ、納得せざるを得ませんね・・しかしよろしいのですか?今の魔界はこの本にあるように友好的な種族はいませんよ?私は別ですが・・・裏切者と呼ばれていますしね」


それでもベイガーさんは高位の魔族で間違いはないだろう

魔界に入り、封印解除したベイガーさんの力は凄まじい


魔族が人間界に入るときは力を封印しないと、封印結界が抜けられないし、人間界での封印解除は力が抜けてしまうらしく


力が全ての魔界においてソレはデメリットにしかならない


人間界に魔族がいない理由はそれである


ちなみに封印結界は天界がしかけたもののようである


それもあり、天界と魔界はいがみ合っているのだ


「それにしてもお2人の魔力は底がしれませんな」


「そう?」


「ええ、飛行魔法でそこまでの速度、この距離を飛んで全く衰えが見えませんし・・ティナ様においては魔力すら使わずに飛んで居られるようにも見えます」


まぁティナはデフォで飛べるからな・・・

既に半日ほど魔界の空を飛んでいる

かなりの辺境につながっていたらしく、フィル・ダガまではかなりの距離があったのだ


「それでは、もうひと踏ん張り行きましょうか」



ベイガーがそう言った時

そらからふわり、ふわりと何かが落ちてくる


俺はそれを





抱きしめた





「あれ?」


思わず抱きしめちゃったよ


おおっ!?柔らかい!?こ、これは素晴らしいですな!


頭をパンと叩かれて我に返る


「シュウ、何してんのさ・・・」


「か、カイどうしよう、柔らかいんだ!」


「相変わらず気を失った相手には容赦なくセクハラするよね。この変態!」


「・・・気を失わなくてもするよ」


「黙れ変態」


「はい」


最近カイが厳しい

牧場にいた頃はミル姉に何しても笑ってたのになぁ

それにしても、何故女の子が降ってきたんだ?

ん?マントの下にブレザー??


日本人?


思わずカイを見るが、ぶんぶん首を振る


「ん・・・んん」


目を覚ます


「よう、大丈夫か?って暴れんな!落ちるぞ!」


女の子はそう言われて下を見ると

また気絶した



「あーどうするかな、これ」


「私の友人の屋敷に寄りましょう。彼ならば人間にも危害は加えません」


ベイガーの友人は街外れに1人住んでいるそうで、着いてみればそれなりに立派な屋敷だった


「やあ、いらっしゃいベイガー。来ると思っていたよ。人間、たくさん連れてきたね、お入りよ」


のほほんとした感じの彼はベイガーの友人、サラス

見た目はベイガーと同じで筋肉モリモリでかなり顔も怖いが、物腰は柔らかくそして優しい気配を漂わせている


ブレザーの女の子をソファに寝かせると、サラスは手作りの食事を出してくれた


なにこの無駄に女子力高いムキムキ魔族

すげえ美味いんだけど?


全員が食事を食べ終わる頃、女の子が目を覚ました


ぐぎゅるる


盛大に腹の虫が鳴いた


「ごはん・・・」


「うん、君のもあるから食べなさい」


サラスが言うのが早かったか、女の子が出された食事に飛びつくのが早かったか


「美味しい!」


凄い勢いで食べ始め、一瞬で食べ終わる


「ごちそうさま」


なんかもう、ずっと食べてなかったみたいな感じだ


「あれ?なんで私生きてるの?」


「覚えてないのか?」


「ううん、まって・・・確かに崖から飛び降りたのに・・・此処は天国?」


「強いていえば地獄かな?魔界だし」


「なんだ、じゃあやっぱり私死んだのね。良かった」


何が良かったなのか


「あんた、名前は?」


「私?えっと、生前はナナミって言う名前でした」


「いや、あんたまだ死んでないから。ちなみに俺はシュウ、あれはカイで、執事がベイガー、ベイガーの友達のサラスな」


「え・・・。死んでないの・・・」


ナナミの瞳はどよんと濁る


「なんで飛び降りたんだよ」


「あー、うん・・・友達がね、みんな勇者で賢者なの。でも私は魔女で、置いてけぼりで・・・妖精さんに案内されて、飛び降りたら幸せになれるよって言われて飛び降りたの」


「へ?」


「飛び降りたら、妖精さんに・・来世に期待って言われて・・ああ、死ぬんだなって。まぁいいか、それならって来世に期待したの。あのクソ妖精共・・・死ねてないじゃない・・・」


妖精に騙されたとかれまるであの本のままじゃないか


見ればベイガーが関心を示している

あの本通りの話だからか


「つか、勇者とかってなんだ?そう言う遊びでも流行ってんのか?」


ナナミは先程の明るい感じと変わって、ボソボソと話し始める


「アギレスの国が行った勇者召喚・・帝国との闘いに備えて、異世界からギフトをもった人間を呼び寄せたの・・」


「え?そんな事できんのか?つーか・・・勇者?え?」


何その生きたままで異世界転移とか・・・勇者とかチートじゃねえのか?

そういう意味では自分もチートなのだが


「ふふふ・・・みんな楽しそうだったなぁ・・・呪いたい・・・」


ゾクリとする笑みを浮かべるナナミ


「ほら、落ち着いて。お茶飲んで?」


サラスが全員分のお茶を淹れてきてくれたので、ひとまず飲みながら話をする


「これからナナミはどうするんだ?俺たちは首都のフィル・ダガに行くけど」


「フィル・ダガ?どこなの・・・・もらった地図には載ってないみたいだけど」


そう言って地図を取り出す

そこには帝国の大きさが良くわかる地図があった

その北にはラインフォードの国がある。いくつかの国を挟み、アギレスの国があった


「へぇ・・ラインフォードこんな北になるんだな」


「ええ、ですから安全のはずだったのですが。アクアスの国が襲われましたからな・・・」


ベイガーが言った


「うん、ラインフォードも襲われたんだけどな。そう言えばデーモンってこっちの奴らだろ?なんで向こうの世界に居るんだ?あの黒いガスみたいなやつ」


「ふむ・・・デーモンですか。向こうですと私の力がほぼ使えませんから分からなかったのですがアレの仕業でしたか・・」


腕を組み、考えるベイガーそこにサラスが


「デーモンねぇ・・あのしかも肉体持ちじゃなくてガス生命体の奴らだよね?ここしばらく見てなくて、たしか先日絶滅したって話が出てたけど・・人間界に逃げたのかな」


「え?こっちにいないのか?アテが外れたなぁ・・昔はすごいいっぱい居た気がするんだけど」


「シュウ様よく知っていますね。確かに数百年前であれば魔族よりもはるかに多い数が居ましたが力を得た個体はどんどん物質化が進んで魔族と変わらない肉体を得て、純粋なガス生命体のデーモンの個体数は激減したのです」


うーん。デーモンの謎・・・メモだな


「あのぉ・・みなさん何の話をしているんですか?」


おっと、ナナミが置いてけぼりだったか

話が脱線しすぎたな


地図を前に考えていたが、人間界は後回しだ

後であの地図複製させて貰おう



「ナナミさん、ここは魔界なんだ。紛れ込んだみたいだね」


カイがフォローしてくれた


「そう、なんですか、そう言えば図書館にそんな本があった気がします」


さて、これからどうするか・・・デーモンの調査をするべきなんだろうが、どこから調べるべきか・・


「おーい!サラスー!」


ん?外からでかい声が聞こえるな。客かな?


「はいはいー」


サラスが慌てて玄関へ向かう

ほんの少しして、すぐに帰ってくる


「ベイガー、ちょっと来てもらえない?客だよ」


「む、私ですか?」


先ほど着いたばかりのベイガーを訪ねてくる客とはあまりいい気はしないな

見張られていたのか?


玄関にいくと、そこに居たのは・・・見覚えがある!


「ミ・・ミル姉!?」


そう、それは髪の色はぜんっぜん違う真っ赤だがミル姉じゃないか

俺が条件反射の様に飛びつき、そして胸に顔を埋める


「おおおおお!!!ミル姉~~!!」


はぁはぁ、このサイズはミル姉に間違いない!

なんで髪真っ赤にしちゃったの?不良なの!?


「な・・・なんだこの無礼者は・・・し、死ねぇええええええええ!」


「え?」


見るとそこには巨大な火球を生み出したミル姉がいた

俺をキッと睨み付けると


「地獄の炎に焼かれろ・・メギドフレア!」



えええええええええええええええええええええ!








以下次回予告



シュウ 「え?ミル姉じゃないの?」


魔王「誰だそれは・・・ええい、乳を揉むな!・・アン‼」


なんだ可愛いじゃないか

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