表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

金toダグダート

「以上が、アクアスの復興の報告、事の顛末となります」


ぱさりとメイミは書類の束を置く

部屋には数人の男性がいる

ラインフォードの国の重役達だ

先日の騒ぎで半数以下になってしまったがまだ補充は追いついていない


「グラン卿、貴方は実際アクアスを目にしたんだろ?」


若い男性が言った


応えたのは長い髭を蓄えた初老の男性だ

額には大きな傷跡がある


「そうだな、あの温泉は素晴らしかった。新型船の定期便も運行が始まったし、1日あれば着くのも素晴らしい。これで遠くの湯治の村まで行かなくて済むのはありがたいよ」


「はぁ・・湯治ですか」


「アレン、君はまだ若いからわからんかもしれないが年寄りにはありがたいのだよ。それにあの宿だ。そうだな、ゆっくり1か月は住みたいと思っておる」


アレンと呼ばれたまだ若い男が、よくわからないといった感じで言った


「それはともかく、経済効果が凄まじいことになりそうですよ。国営の定期便の収入はもちろんのことアクアスの経済それそのものがラインフォードに統合されているわけですからね。この20年間のアクアスの国民への支援金などを指しい引いても1年もすれば元が取れる計算です」


今までラインフォードに移住していた人間の実に半数以上は働いていなかった

それは国が支援と称してお金を支給していたからだ


「先王の・・義理から始まった支援だったが・・・最初は反対したものだ。呪われた国など帝国に明け渡してしまえとな。だがいまとなっては・・・間違いだったと言える。あの世に行ったら王には謝罪をせんといかんな」


「それよりもです。この偉業を成し遂げた二人・・シュウ様とカイ様についての処遇ですが」


「ああ、ほかの国へ奪われてはかなわん。とてつもない我が国の財産といえるだろう・・・伯爵の地位でも与えるか?いや、まだ若いのだったな」


「そうです、本人達は鋼の冒険者・・・のつもりです」


「・・そうだな、実績だけみても銀・・・いや、金が妥当だ」


「ギルド協会からは既に金の冒険者に指定してはどうかとも来ていますね」


実は銀以上の冒険者と言うものは国の承認がなければなれない

また、貢献度と言うものが考慮されるようになってくる

ギルドから依頼は出されるが

街を襲うモンスターだったり、学者が見つけた古いダンジョンの探索であったりが実は国が出している事も少なくない


それらをキチンと解決できる能力がある人間が銀以上になれるのだ


「ですが、彼らが冒険者になってまだ2か月弱です、次期尚早との声も出ていると聞きます」


「ふむ・・だが、他国に流出する恐れもあるのだろう?」


「ええ・・彼らの目的はいずれ世界を見て回る旅だと言っていました」


「それじゃあ、わが国で金を与えておかねばならんな」


ここで話はまとまる


メイミはため息をつきながら・・・

国を救った英雄・・しかもこれで2国目だ

金どころか白金でもいいのではないかと、言いかけてやめた


かつて白金になった冒険者は歴史上僅かに6名だ


皆、勇者や、英雄と呼ばれた存在ばかりだ


メイミは、その白金でもまだ彼らには足りないのではないかと思っている




----------




そんな事になっているとは知らず、俺達はラインフォードへ向かっていた


「あー景色に飽きてきた」


「シュウいきなり何言ってんの!?」


「だってさー、見渡す限り水しかないんだもん」


「そりゃそうだよ、世界最大の湖だもん」


「まあ、分かってるんだけどさ」


俺とカイはのんびり馬車で移動中だ

テレポートは風情がないからな

そんなだらだらした旅ももう6日目になろうものなら、飽きて当然だろう?


「なんか面白いことないかなぁ」


「なんもないんじゃないかなあ。この国は平和だから、まあモンスターは少ない代わりに山賊なんかは居るんだけど」


そんな事を言ったからか、辺りの風がざわりと騒ぐ

一瞬、緊張感が包む


ぞろぞろと汚い武具を纏い、髪はボサボサな連中が馬車の行く手を阻んだ


「カイ、取り囲まれたぞ」


「シュウ、見たらわかるよ」


「お兄ちゃんぴんちー?」


ティナが気配を察知してひょこりと荷台から顔を出した


「ティナ、まだ大丈夫だよ」


「はーい」


ティナはまた荷台に引っ込む


さて、山賊でも片付けますか

感知魔法でみると、5人だけの山賊だった


「おい、馬車から降りろ」


剣を突き出し凄む山賊A


勝手に馬車を除きこむ山賊B

おお・・デリカシーのかけらもないな


「おお!キレーな姉ちゃんがいるじゃねぇか!ぐへへへェ」


テンプレートの塊かコイツら!?


俺とカイは馬車から降りると、すらりと剣を抜く


「お?やる気か小僧ども」


「良かったじゃないか、シュウ。変わった景色が見られて」


「いやーあんまり良くないかな。嫌いなんだよ山賊とか盗賊って」


ああ、とカイは思い出す

牧場での出来事を

あれ以来、シュウは山賊に容赦しない節がある


そう、シュウはこの手の輩は許す気など毛頭ない

だがイレギュラーがいるとなると話は別だ

くるりと山賊を見回すとー


「ん?んんん?」


山賊Cに向かって俺は歩き出す

あれえ?

なんか見たことあるなあ


「なあ、あんた」


「知らん!」


じっくりと顔を見る・・やっぱりそうだろ・・


「いや、タイトだったか?」


「タイルだ!!」


やっぱり。あんた何してんだよ


「いや、マジ何してんの?無一文になったからいきなり山賊はないんじゃない?ってか転身はやくね」


「き、貴様のせいだろう!お前さえ、お前さえ居なければ!」


タイルはそう言って睨みつけてくる

装備は薄汚れ、顔も洗ってないみたいだ


「はあ、人のせいにしたらダメだろそれ。そういや親父さんはどうしたんだ?一緒に出たんだろ?」


「お・・・親父はどっか行っちまった」


だがその視線は山賊Dをちらちらと見ている

俺は山賊Dに話しかける


「なあ、親父さん。あんたら親父に同情しちまいそうなんだが、諦めて逃げるか出頭しないか?」


親父さんは息子、タイルをキッと睨みつけ


「バカな息子でも可愛いもんでな、俺たちはお前のせいで食っていけないんだ」


「自業自得じゃねぇか・・・」


「う、うるさい!みんな!やっちまえ!」


タイルが号令をかけると、全員じりじりとにじり寄ってくる


「ふん、こう見えても親父はもうすぐ銀の冒険者と言われるまでだったんだ・・・てめぇら如きが敵うわけない。諦めて死ね!」


「やだなぁタイルさん、山賊になってまで親頼みですか?いい加減親離れするか実力をつけたらどうだよ。まぁもう山賊だし無理だろうけど」


「っく・・・・・・・・・!」


言い返せないのかよ!つーかマジだめだろ


親父が切りかかってくる

殺意のこもった本物の刃だ。そしてその剣はもうすぐ銀だったと、言ったとおり相当なレベルで洗練されている


「お・・。おお!親父さん本当に強いんじゃないか?」


かわせないタイミングで打ち込んでくる剣もある

本当に熟練といった感じだ

かわせないだけで、防げるんだけど


ギィン!ギィン!


「ばかな!なぜこれが防げる!いや、かわせないはずだ!目だけで防御しているのか!?」


「あーまぁそうですね。長引くといろいろ持ってそうなんで、倒させてもらうよ」


俺は軽く全力を出す

親父さんの剣筋はかなり鋭いからな


「がはっ・・・見え・・なかった・・・」


「よし、親父さんダウン」


するとそれを見ていたタイル以外の山賊が逃げの体制にはいる


「逃がさないよ。コールドライン!」


カイの唱えた魔法が逃げようとした山賊に向かって氷の糸となって絡みつく

その糸に捕らえられた山賊達はどんどん動きが鈍って、止まってしまう


うっすらと氷漬けになってその場に氷像となった


「どうしたタイルさんよ、あんたは逃げないのかい?」


「キサマラ・・・絶対に殺してやる!!」


タイルは胸元に手を突っ込み、そこから取り出したのは

マズイ、あれは・・火珠か!爆発する!


それをひょいっと取り上げるのは


「ティナ!」


「危ないですよーこれ。爆発しそうです」


赤く暴走寸前だった火珠から魔力をすうっと吸い取って暴走を止める

その間に俺はタイルに近づき、剣の柄で首を打って気絶させた



縛り上げたタイル親子と、氷像の盗賊を馬車に詰め込む


「とりあえず、山賊全員は警察にでもつきだすか」


「こっちも氷漬けだけど、すぐ溶けちゃうからね。早めに突き出しちゃおう」


だがまだラインフォードの街までは遠いから


ハイ・フロウ!!


普段なら2日の道のりを僅か30分で到着した

まぁ予定より早くついたけどいいだろう、ちょうど飽きてたし


街に着くと、衛兵が門番をしていたので


「山賊捕まえたんですけどー」


突き出しておく


「ありがとうございます。コイツら10日前くらい前から出てきて、困ってたんですよ。逃げ足だけは早いヤツらで」


「まあ、とりあえず罰でもなんでも与えといてよ」


「ああ、死刑ですから、山賊は」


え?厳しいんだなぁ・・・

この辺りの治安が良い理由が分かった気がするよ

タイル親子をチラリと見ると震えている

あーなんだ、自業自得だな・・・





「あーあ、やなもんみたなあ」


「そうだね。でも仕方ないよ、シュウのせいじゃないし」


「まあねえ」


俺はラインフォード不動産に向かっている

そこはアクアスに行く前に冒険者ギルド協会であったあの女性のいる不動産屋だ

そう、ココに来ればラインフォードでの拠点を手に入れることができる


のは建前で、メイドさんだ!俺はメイドさんに会いたいんだ!


「すみまっせーん!」


「あ、いらっしゃいませシュウ様」


ぱたぱたと先日の女性が近づいてくる


「お待ちしておりました。早速、物件の案内をさせていただきますね」


「ああ、頼むよ」


「シュウ、物件てなんのこと?」


「ああ、そういえばカイは居なかったか。とりあえず見に行く道中に話すよ」


そう言って、女性が案内してくれる道中に話して向かう事にした


「なるほどねぇ・・・シュウ、なんかそれメイミさんにはめられているよ」


「そうかなぁ・・・」


いや、分かってるんだがメイドがな?


「あ、シュウ様つきましたよ」


そこは巨大な家・・家かこれ?城かなんかじゃないの?


「ここがお譲りする予定物件1です。150部屋ほどの物件ですね」


「で・・でかすぎる・・物件1ってことは、他にもあるの?」


「ええ、ありますよ。まぁここは今国が迎賓館として借り上げていますので、実際にお住みになれるのは難しいかもしれませんね。じゃ、次に行きますか!」


元気だなー


そして次も・・・その次も・・全て100室を超えるような巨大な屋敷ばかりだった


「正直いらないよな・・・」


「そうだね・・でかすぎるし・・誰が住むんだよこんな家ばっかり」


不動産屋の説明では、そもそも家とはいえこの部屋数になれば維持する為の使用人の数も膨大なのだとか

そしてそこに住む家族も、当然三世代に及ぶ大家族と親戚などがまとめて住んでいるらしい


で、ダグダート家ってのはそう言う家を好んで集めて貸し出していたらしい。

実際今日見た物件の殆どは誰かが住んでいたしな

まあ、古い歴史ある家ばかりらしいが



金持ちって多いんだなあ


で、当のダグダート家が住んでいた屋敷に案内される


おお!?焼け・・てるなあ。

そういや焼き討ちで追い出されたんだったか


その敷地はかなり広い。今日見た中でも一番広いんじゃなかろうか?

その広い敷地の中に、三つの屋敷があった

一番でかい屋敷はまるで小さな城だが、半分焼け落ちている

少し離れた場所にある二番目にでかい屋敷も同様だ

3番目は、かなり離れた隅にあり小さな屋敷だ。だがそれでも30部屋はある様だが・・・


「今日見た中では一番小さいな。でも俺達にはデカすぎるなあ」


「そうだね、でもシュウここがなんか一番雰囲気はいいかな」


同感だ。その小さな屋敷が一番落ち着く気がした

なんだか空気感が優しい気がする


不動産屋の女性に、そこに住むと伝えるとすぐに使用人を派遣すると言って帰って行った


馬を屋敷の横にある馬小屋に連れていく

そして馬を丁寧に洗い、ブラッシングしていると


「ねぇ、あなた達この屋敷の使用人?」


背のあまり高くない女性?女の子がそこに居た

髪の長い、綺麗な女の子だが来ている服は質素で少し汚れていた


「ちょっと聞きたいんだけど、この屋敷の主人はどんな人なのかしら?」


何となく気品のある話し方だな


「えーと、誰かな?」


「あ、ごめんなさい。私の名前は・・ニーナよ」


「俺はシュウ、こっちはカイだ。で、向こうにいるのがティナ」


ふうん、とニーナは品定めする様に俺を見て


「あなた、いい人みたいね。馬が物凄く信頼してるわ。それにティナさんか・・あの人はこの屋敷に住むお嬢様なのかしら?」


「どうしてそう思うんだ?」


「気品があるもの。所作も美しいから高度な教育を受けたんだなって思うの」


そう、笑うニーナは少し綺麗に見えた


「屋敷の主人に何か用があるのか?」


「ええ、この中に・・・そう、友人の大事な忘れ物があって、それだけ引き取らせてもらえないかなって」


「そうなのか、いいよ。鍵はあるから行こうか」


「いいの?怒られない?」


「大丈夫だよ、カイ、あと頼む。俺は嬢ちゃん連れて屋敷に行ってくる」


「了解だよ」


扉を開けて、屋敷に入る

ひと月以上人は居なかったせいか、ほんの少しだけ空気が澱んでいる


窓を開けながら、ニーナが行きたい部屋に向かう。二階建ての建物の一番右奥の部屋だった

中に入ると、そこにあったタンスの二番目をニーナは開けた


そして二段目に手を入れて一段目の下側を探るように触っていて


「あった!」


取り出したのは、小さな額に入った絵だった


「ありがとう」


ニーナはホッとした表情で絵を撫でる


その絵を覗き込むと、とても美しい女性と小さな女の子が描かれていた


「へぇ、優しそうな綺麗な人だな」


「ええ、そうね。優しかったわ」


「大事な物みたいだな、ニーナと・・お母さんの絵か」


「うん・・・あっ、と、友達よ!って、バレちゃうよね。ごめんなさい」


「良いよ、ニーナはここに住んでたのか?」


「うん。ここはお母さんの部屋だったの。私はあの焼け落ちた屋敷に住んでいたわ」


え?って、ちょっとまて!それだとニーナは


「まさか、ダグダート家の」


「ええ、私の名前はニーナ・フォン・ダグダートだったの」


「だった?」


「名前は取り上げられたから。でもいいの、今はニーナ・アル・フルテシアって母の性を名乗れるから」


あー。マジか。


「じゃあタイルは」


「兄よ。クズ兄ね。あのタヌキ爺もろとも死ねばいいわ」


うわっキツ!

でも言わなきゃいけないよなあ

言った方がいいよなあ


「あのさニーナ、実は俺が・・・」


冒険者試験の事から、あった事を全てをニーナに話した。


「そう、あなたが・・・お礼を言うわ。あのクズ親子と離れられたのは私にとっては僥倖だから」


えー!?な、何があったんや!


「ビックリしてるみたいね。でも大丈夫よ、怒ってないのは本当よ」


そこにティナがやってきた


「あ、お兄ちゃんいたー。あれ?どなた?」


「ああ、この子はニーナって言う・・」


「ニーナちゃんの傍にね、綺麗な人がいるよ?あ、もう死んでるのね。え?うん、少しだけならいいよ!」


「な、何言ってるんだティナ」


するとティナはがくりと膝をついてニーナを見て優しく笑う


「ニーナ、大きくなったわね。ごめんね、寂しい思いをさせて」


そう言うティナは、なんだがまるであの絵の女性に見えて


「え?あなた何を?」


「ふふ、相変わらず慎重なのね。ニーナ、その絵の裏を開けてみて」


ニーナは、言われるまま後ろを開けようとするが、開かなかった


「あら、忘れてたわ。合言葉は「可愛い私の花よ」って魔力を込めてみて」


ニーナは震える声で


「か、可愛い、私の花、よ、」


そう言って魔力を込めると

カチリ

絵の額の裏蓋が空いた


そこには女性が、赤ん坊を抱く絵が隠されていた。横には背の高いキリッとした男性の姿が描かれている


「ニーナ、それが貴方の本当のお父さんよ。もう死んでいないけど。私もそろそろ行かなきゃいけないけど・・・」


「おかあ、さん」


ニーナはボロボロと涙を流しながら

絵をガタリと落として

ティナに走り、抱きついた


「お母さん!お母さん!」


「ごめんなさいね、ニーナ。一緒に暮らせなくて。私が病弱で、ごめんなさいね」


「いいの!私はいいの!おか、あさん!!」


ニーナは、抱きつきながら泣いて、お母さんに会えたと、嬉しくて悲しくて


横を見たら精霊化をしたティナがいた


「なあ、あれどうしたんだ?」


「んと、あの子の周りを不安そうで、悲しい色の魂が居たから話しかけてみたの。そうしたら、ちょっとだけ直接話したいって言うから体を貸してあげたの」


「そうか」


「でももう、魂の力が尽きちゃうかな。ニーナちゃんが、ちょっと可哀想かな」



言葉通り、ニーナの母親は


「ね、ニーナ。幸せになってね。私はこのティナさんにわがまま言ってちょっとだけ体を借りたの。だからもう会えないけど、幸せになってね」


泣きながらそう言った


「うん、分かった!私幸せになる!だからお母さんも!」


「ええ、私は今、物凄く幸せよ」


そう言って、消えた


「お母さん・・・」


「ニーナちゃん」


ティナが元の体にもどる


「ありがとう、ございます」


ああ、なんだこれ。胸が、イライラする


ゆっくりとティナから離れるニーナ

そして落とした絵を拾い上げると、ぎゅっと抱きしめた


そして小さな声で、ありがとうと言って部屋から出ていく


王家はダグダート家から全てを取り上げた

だからニーナも、何も財産はないはずだ

あの小さな絵だけがニーナの財産だ


俺はニーナを追いかけて、その手をとる

振り向いたニーナの目には力なく、涙を流していた


「なあニーナ、頼みがある」


「なに?」


「この屋敷は、俺とカイ、ティナだけじゃ広すぎるんだ。だからあの部屋に住んでくれないか?」


くそう、くそう、イライラする理由は分かってる!


「頼むニーナ!住んでくれないか!」


俺は頭を下げて頼む


「どう、して?」


そんなモン決まってんだろ


俺がこの子を


大嫌いな、大嫌いな一人ぼっちにしちまったからだ!



「俺のわがままだ!でもそうしなきゃお前は、ニーナが一人ぼっちになっちまうだろ!」


俺は泣きながらそう言った


それを見たニーナは笑いながら、目に光を宿して


「うん、仕方ないから住んでもいいかな」


そう言ってくれた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ