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アクアスto復興

アクアスの国-湖の傍にあるその首都は

ラインフォードと同じく栄華を誇っていた。

とはいえ、ほんのわずか20年前迄の話だ


デーモンによって滅ぼされるその日まで栄えた


その20年後の今は人口は激減、その広大な城下町に残ったのは僅か数百人に満たない人だけだった



「あーこっちの建物とか使えるんじゃないかな?」


「あまり広かったり豪華なのはいらないしね」


今日は住むための物件を見て回っている

といっても、既に廃墟と化した街の建物を直して使おうっていうだけなのだが

既に役場と言った機関人口や税の管理機関はこの街には既に存在していない


かと言って治安が悪いこともない

やはり悪党も呪いは嫌だということだろう


師匠をこの街に住めと、ティナが命令して連れ帰ってきている


「はぁ・・・まだ呪いがあるんじゃないかとビクビクですよ」


とは師匠だ

その気持ちはわからんことないけど


「復興と言う目標が出来たことは非常にありがたいんだけど・・はぁ・・」


なんかウジウジしている師匠をとりあえず孤児院に連れて行って、そのあと住む場所探しである


「そういえば土地の利権とかどーなってるんだろうな?」


「その辺りはぐちゃぐちゃになってそうだけど・・・役場にいけばなにか資料が残ってるんじゃないかな?」


そうか、一応それも確認しておかないといけないな

それに気づいたらとりあえず役場で土地の権利が確認できる書類を探す事にした



結論を言えば確認は出来た・・資料をパラパラめくりながら


「住んでるかどうかもうわかんねぇしな・・・むしろ生きているかどうかも」


これである

そもそも人気があまりなく、殆どが空き家なのだから権利があろうが無かろうが誰も住んでいないのである


「そうか、ラインフォードが管理しているはずだからそっちに聞きに行くのもありかもね」


「ああ、そっか。んじゃちょっと行ってくるわ。カイは帰っててくれ。いくぞ、テレポート!!」


俺はラインフォードに飛んだ

苦手なテレポートでも得意になる瞬間はあるのである




----------





「え?」


目の前に居るのはメイミである


おっと、と、よろけた振りをしてとりあえずメイミに抱き着いておく。


「うむ、柔らかい、最高」


すると即座にメイミの右腕が降りあがった気配を感じた


「ごめんごめん。慣れない魔法使ってヨロケチャッタヨ?」


「へぇ、一体どんな魔法なんですかね?王城の執務室まで侵入してくるなんて……」


そう言ってメイミは気づく

そもそも王城には魔法結界があり、上空や地下からの侵入は不可能だ


大魔法で結界を吹き飛ばしたのならば入ってこれるが、そんな気配はもちろんない


「ほ・・本当に一体どうやって・・?」


「テレポートだよ?」


「ああああああああああ!そうだわ、それよ!思い出した!テレポートなんて魔法なんで貴方がたは平然と使えるの!?てゆうか教えて!その魔法教えて!!!」


俺はメイミに両肩を抑えられ、ガシガシと揺らされる


「ああああああ・・わかった!今度教えるよ、今度な!!!今日はちょっと用事があってきたんだよ」


「なに用事って。まさか私の体に用があったとか言わないでしょうね」


「うわ自意識過剰じゃね?ある意味そうだけど」


「やっぱり。前々からシュウ様の目線は私の体を舐め回していましたし、やたらと体を触ってくる変態だと思っていました。そうですか、遂にそれだけでは我慢が出来なくなり私を襲おうと言うのですね?いいでしょう、受けて立ちましょう。たとえ私が死んでも必ず貴方を死刑に追い込んで見せます」


「いや怖いよそれ!それに襲うとかしないし。触るのは好きだけどさ」


「ついに自白しましたね、それだけでも死罪にしたいのですが命を助けられた恩が・・ぐぬぬ」


メイミは目に力を入れて俺を睨んでくる

だけど今日はそうじゃなくて


「遊んでないで本題ね、アクアスの国に行ってたんだけどさ、あそこの土地ってどうなってんの?民家とか人が住んでないじゃん」


変顔していたメイミがふっと普通の表情に戻る

そしてソファに座るように促され、アクアスの担当官を呼んで来るようにメイドに言った


「アクアスの呪いはご存知だと思いますが、あそこの土地は既に価値がゼロです。それゆえ、正式な手続きはありませんでしたが、ラインフォードに移住した人々の土地はラインフォードの管理扱いです。一部の残っている人は別ですが」


なるほど、空き家は全てラインフォードの物って扱いか


なら話は楽そうだ


「んじゃさ、勝手に土地とか建物使ってもいいのかな?」


「え?ああ、シュウ様なら構いませんよ。ただいずれ帰りたいと思っている人も居るでしょうから、あまり無闇には困ります。呪いを解く研究は進められていますから」


「あ、呪いはもう解いた」


メイミは続けて


「本当に呪いがいつ解けるかわかりませんが、忌々しい事です」


「いや、呪い解けてるから」


「シュウ様、遂に頭がおかしくなりましたね・・・変態が過ぎましたか?すこし触らせてあげましょうか?」


「いや、マジだって!触らせてくれるのはうれしいが、おかしくなってないからな!おーい、ティナはいないか!?」


俺が呼ぶと


「はーい。お兄ちゃん呼んだ?」


ティナがすうっと現れた

どうも俺とティナは繋がってるらしく、精霊であるティナはどこに居ても傍に現れる事が出来るらしい


「コイツに言ってくれよ、呪いは解けたって」


ティナはちょっと考えて


「呪いは解けた!」


と言った


「いやいや!!誰ですかその人!何処から現れたの!?またテレポートですか!?」


あ、ヤバ。説明めんどくさい。

ティナのこと知らないのか。まあ20年前だしなあ

分かっても面倒臭いか


「まあ、アクアスの人だよ」


「簡単すぎる説明なんていりません。でも、呪いが解けたとなると一大事です。証拠はあるんですか?」


「証拠はまだないが・・ああ、さっき言ってた解呪研究してた人らを連れてけばわかるんじゃないかな?」


「なるほど、名案ですね。それでは調査団を出しましょうか。本当であれば元アクアスの国民も帰りたいでしょうし」


話がなんとなく纏まったようだ


じゃ、帰ろうかと立ち上がると


「じゃあまたなーって・・ねえ、なんで俺の掴んでるの?メイミさん?」


「ええ、早く行きましょう」


メイミが俺の腕を掴んで離さない。いや、組んできやがった

あ・・・胸を押し当てるな!クソッ!確信犯だな!!ありがとうございます!!


「まぁいいか・・・てゆうかメイミ仕事あるんじゃねぇのかよ・・・テレポート!」



----------



孤児院の傍まで転移する


「ああお帰りシュウ。あれ?メイミさん?」


「おお・・・これですこれ。やっぱりすごいですね、テレポート」


そう言ってメイミは辺りをきょろきょろしている


「じゃ、私もう少し探してくるねー」


ティナは孤児を集めて回っている

孤児院に居ない、子供たちだ


「邪魔して悪かったな」


大丈夫~と言ってまた出て行った


「で、呪いを解いたのは誰ですか?シュウさんですかね?カイさん?」


「あー俺とカイです」


ことの成り行きを説明させられてしまった

何度話せば済むんだこれ


「なるほど・・・デーモンですか・・・」


「そうだ。ティナの話じゃ、その後ラインフォードに行ったらしい。倒したけどな」


「ラインフォードも危ないところでしたしね。ここ百年で国が幾つか滅んでいます。その裏にデーモンが絡んでいたとなると・・・怪しいのは帝国ですね」


「帝国?」


「はい、アクアスの国はラインフォードと双子国と言われるだけあり、ラインフォードが統治・・いえ、管理していましたが、その他の滅んだ国などは全て帝国が引き受けています」


「呪われた国などどこもいらないんじゃないか・・・」


「ええ、ところが帝国には解呪する方法があるようで、それゆえにラインフォードも研究していたのです」


「ラインフォードは結果は出ず・・か」


メイミがこくりと頷く


ただ、今それを論議しても仕方がない一先ずは呪いが解けたアクアスの復興が先だろう


「どうするカイ?とりあえず家とか直して回るか?」


「そうだね、修理は任せてよ」


「じゃぁ俺は畑だな」


いつもの役割分担をする。牧場での二人の役割だ


俺は畑に行くと、いま育てられているひょろっとした作物を見てげんなりする

調べると土には栄養がある、それどころか水もなにもかも完璧だ

なのに育たない・・これが呪いか

しかし、その呪いはもうないので俺はクワを並べると魔法を使う


「フロウ」


ふわりと並べられたクワが浮き、畑を一気に耕した


うん、上出来だ


種をまた、魔法を使い均等に埋めて


からのー


植物育成魔法!


僅か数時間で収穫可能なこの農業!

必要なのは魔力!


「お兄ちゃん無茶苦茶するのねー」


ティナがいつの間にか来ていた


「まあ、農業と呼べないがなー。食べてくには十分よな」


「うん、呪いの影響もないし食べるにはもう問題ないかも。でも収穫はどうするの?かなりの量だけど」


「それは後のお楽しみだ。ちゃんと手はあるんだよ」


俺はこの調子で日が暮れるまで作物を作り続けたのだった




その頃、カイとメイミは、アクアス近くの山にいた


「じゃあ、とりあえず街の掃除とかをするためのゴーレムを作ります」


「ゴーレムですか?岩巨人を生み出す命の魔法の」


「です。でも、戦う訳じゃないので小さめのヤツですね」


そう言うとカイは


「クリエイト・ゴーレム」


魔法を唱えて、高さ1メルのゴーレムをポコポコ作り出す


「うわっ!可愛い!」


小さなゴーレムはゆっくりと整列していく


「簡単な命令が幾つかできるから、掃除と壊れた家の修理だね」


「え!?修理までできるの!?」


「家や街には、そこにあったという設計図があるんだよ。だからその設計図の情報を取り出して元の形に戻すんだ」


カイは何も無い空間に記録された情報を設計図として取り出して


それを修理用のゴーレムに魔法で組み込んだ





「クリエイト・ゴーレム」


またゴーレムをポコポコ・・・いや、ガンガン生成していく


「ちょ!?な、何体作るんですか!?」


どんどん生み出されるゴーレムがとんでもない数になっていく


「うーん。ひとまずは街全体を直すから1万は作りたいな」


「い、1万!?小さいとはいえゴーレムの魔法は消費魔力が凄まじいはずよ?仮初の命の魔法よ!?」


「まあ、魔力は人よりあるから大丈夫だよ」


これは人よりたくさんなんてものじゃないでしょう!?

カイの込める魔力を見た感じ、メイミなら恐らくは10や20は作れるだろう。だが、それは人の数倍の魔力を持つメイミだからだ。


「信じられないわ。この目で見てるのに」


「まあ、慣れかな?シュウは苦手みたいだけどね」


「まさか・・・シュウ様も使えるの?この魔法を!?テレポートと同じ、もはや禁呪の類ですよ!?使える人間は殆どいないのに!」


あははとカイは笑って


「まあ、気にしないでよ。コレで悪さはしないからさ」


ゴーレムの魔法が禁呪扱いなのはまさにそこだ。

簡単に戦力が出来てしまう

ただ、消費魔力が多いのでそもそも大量に作れないのが問題だが

かつてその問題をクリアした国がゴーレムを大量に生産して戦争をした事があるのだ


その戦争の結果、今ではほとんど失われた魔法になってしまったが


僅か数時間後


「よし、1万くらいできたかな?みんな、よろしく頼むよー」


ゴーレム達が片手を上げて進軍を始める


それはかなり壮観な眺めだ

しかも、材料となった山は丘くらいのサイズになってしまっている


「まあ、街全体の清掃と建物の修繕がおわるのは1週間はかかるかなあ」


「なっ!た、たった1週間ですか!?」


「まあゴーレムの寿命もそれくらいにしてるしね」


メイミは戦慄する

シュウとカイ、この2人が本気を出せばこの世界をわりと簡単に掌握してしまうのではないだろうかと

なぜ、田舎に篭っていたのかも含めて、いつか問いただしたいとメイミは思った




その日の夕方、街はちょっとした騒ぎになっていた

それはそうだろう。見たこともない生き物ーゴーレムが、街を掃除するわ建物を治すわ

さらには、シュウが作った作物をどんどん運んでくるわ


「奇跡だよ。モンスターや盗賊に襲われず牧場がちゃんとあったんだ、近くに小さな村も出来ていたよ」


「ああ、牧場は食べていくには困らないからね」


「個体数が減ってるから、ちょっと増やさないと人が戻れば牛は足りないな」


「ミル姉とこの牛を少しばかり貰わないとダメかなー。1から品種改良はキツイから」


「いやいやいや、シュウ様、カイ様この状況はおかしいですって。なんでそんな平然と簡単に出来るんですか!」


「まあ、村ではしていた事の百倍くらいは大変だよ?でも出来るんだから全力でね」


カイは簡単そうに言う


「それにシュウ様もおかしいです。1日で大量の食料を作り出したと思えば、鍛冶まで・!貴方がたは多芸過ぎるでしょう!?」


シュウは鍛冶工房を見つけたので、直して必需品やらを作り出している

鍋やら包丁やらだ。

ついでにとライアの鎧も手直ししたが新品同様になっている


「師匠に貰った鎧がこんなに綺麗に!凄いなシュウ」


「まあ、適当にしたからおかしな所は言ってくれよ」


「問題ない、前より遥かに動きやすいし防御力も上がった気がするよ…ほんとにシュウには頭が上がらないよ」


「そりゃあ良かった。服関係はカイが作れるから孤児達の分は作って貰うといいぜ」


と言った具合だ

色々見ていたサーシャも興奮気味に


「シュウ、凄い・・ゴーレムの魔法、教えて」


「サーシャ、良いけどこの魔法もカイが得意だからさ。カイに習う方がいいと思う」


サーシャはコクリと頷いてカイを探し始めた


「はあ、しかし・・・いきなり城を含めて城下町全てを直すとは二人はとんでもないです・・・食料までも簡単に作り出して・・・」


「メイミさん、カイさんとお兄ちゃんは人間の枠にはめて考えたらダメですよ。人間だけど」


「その様です・・・ティナさんは何か知っているみたいですね」


「言えないけど、知ってるかな」


「そうですか・・・」


もう諦めてきたメイミだった


ラインフォードから調査団が到着するのは1週間後だった


到着した彼らはもちろん驚愕する事になる



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