009話 Sランク
夕食を済ませて、街を案内してもらっている時、立ち寄った店で唐突に銃声が響いた。
「まったく、唐突に銃声が響くとかどこの紛争地域だよ!」
心の中で叫んだ。
これまで普通の世界で生きてきた俺には銃声一つでも大事件だったのだが、二人は「またか」という感じだった。
「動くなっ!全員大人しくしろ!動いたら容赦なく殺す!」
テロリストらしき男が5人で銃器を振りかざして人質をとり、近くにいた人間を集めて座らせた。
まぁ不幸な事にそこに俺たち三人もいた。
「どうする?やっちまうか?」
「でも、一人でも取りこぼしたら人質が危ないんじゃ…」
「アヤセさんの言う通りですわ。それに、許可のない能力の行使はSランク以上の生徒にしか許されていません」
「んなもん、さっさと申請すればいいだろ?」
「そもそも私達の能力では人質に当たる可能性があるわ、少し様子を見ましょう。」
俺は頷き
「チッ」
カガリさんも不満そうにその場に座った。
俺の能力を使って銃器を凍らせる事は出来るかもしれなかったが、いかんせん慣れてないもんだから正確に五人の銃器を凍らせる自信がなかった。
カガリさんの能力は派手過ぎて使おうとしたらバレてしまうだろう。
そういえばファーレンハイトさんの能力ってなんなんだろう?
といろいろ考えていると
ズドォォォッ
突然、地面が大きく揺れた。
気づいた時には、テロリストは5人とも、まるでプレス機で押し潰されたかのように、地面にめり込んでいた。
「キャァァァッ」
騒ぐ人々、逃げる人々。
その隙にテロリストを抑えようと前に出ると
そこに一人、金髪の目つきの悪い男子生徒が立っていた。
「あ?なんだお前ら?」
「あなたこそ何者ですか?先ほどの揺れはあなたが?」
「俺は1年のウィラード・カルヴァーニだ。こいつらは俺が学園に引き渡す。雑魚は引っ込んでろ」
と追い払うような仕草をした。
「なっ、テメェちゃんと学園に能力使用申請だしたのか?」
カガリさんが突っかかった。
「フッ、ハッハッハッ!俺をお前ら雑魚と一緒にするなよ?能力使用申請がなきゃ動けないなんて、なんの役にも立たねぇAAA以下だっ!」
「はっ…?」
「まさかあなた…」
「俺は今年の一年では2人しかいないSランカーだ」
と笑いながらいった。
「コイツが…」
「Sランク…」
「お前ら今度のチーム戦に出るのか?あの状況で何も出来ないような奴らに、万に一つも俺に勝つ可能性はない」
そう言うと地に転がった五人を能力でゴミのように持ち、去っていった。
「なんだアイツは」
カガリさんが言うと
「最初の一撃、揺れは起きましたが人質は全員無傷、テロリスト五人を正確に一撃で仕留めた腕前、Sランクっていうのも嘘ではないでしょう」
「チッ、能力者同士の戦いだったらそんなの関係ねぇさ!あたしの焔で吹き飛ばす」
「いいえ、彼は私が沈めますわ」
「一人で勝てなくてもチームとしてなら、俺ら三人でなら勝てるんじゃない?」
俺が言うと
「何言ってんだ!あいつに勝って、チームとしても勝つ!」
「その通りですわ。ファーレンハイト家の人間として、あんな者に負けるわけにはいきません。」
なんと二人はチームを組むことに同意し、 その日はそこで解散した。
学園都市に来て早々、大変な目にはあったけど、Sランカーという共通の敵を目の当たりにして、彼女達がチームを組むことに同意してくれたので、結果的には良かったのではないだろうか?
いろんな事があり過ぎて疲れ果てた俺は寮に着くなり爆睡した。