023話 本当の能力
轟音が止み、ゆっくりと、少しずつ爆煙が晴れていく
「はっ…?」
煙の中から先ほどと変わらぬ風貌の人影が見え始め、ローブの男は愕然とした。
「テメェ……何しやがった!?今のは流石に、ただの氷で防げる量じゃねぇだろっ!」
「こっちも一つだけ…」
「あぁ?」
「多分まだ、俺しか知らない話をしよう。俺の能力はただの氷の造形なんかじゃない、氷は単に『水の状態変化がイメージしやすかった』ってだけだからさ…試してみないと正確には分からないけど、この世の様々な物、事象に対して、『変化を操る』それが俺の能力…」
その言葉の意味をすぐに理解したらしく、ローブの男の顔が驚きと恐怖で歪む
頭で分かってはいても、そんなもの認められないといった感じで
「はぁ…!?何だそりゃ…そんな能力あるはずねぇ!チートすぎんだろ」
「別に信じなくたっていいさ」
『変化を操る』というのは、変化させるもさせないも自由ということで、その能力を使って逆に変化できなくすることも可能で、先ほどのローブの男の爆破の大技の時には、「絶対的な時間」で俺という存在への干渉を無効にした。
これだけ聞くとただのチート技だけど、全身から能力を解放し続けるのは相当困難で、ものの2〜3分が限度だ、というか3分持てば良い方じゃないだろうか
そのうえ、この技を時間いっぱい使った後は、体力的にも精神的にもスッカラカンで、多分ぶっ倒れてしまうだろう。
言うなれば『諸刃の剣』、そこで決めない限り勝ち目はない。
(本来なら2〜3分使えるはずだけど、今の体力じゃあ、もってせいぜい1分ってとこか…)
「あいつをぶっ飛ばすまで、もってくれよっ…『絶対的な時間ッ!』」
再び、能力を全身から解放し、綺麗な白銀の色に染まったオーラのようなものに包まれていった。
誰にでも視認可能なようで、ローブの男の目にもはっきりと映っているみたいだった。
俺は能力を発動しつつ、全速力でローブの男との距離を詰めた。
男は、俺が光を纏うなり即座に、取り乱したまま、雑な攻撃を再開した。
「くっそっ、俺の能力が効かないなんて…そんなことがあってたまるかよっ!!喰らえ喰らえ喰らえぇっ!!!」
俺の走る道に次々と起こる爆発を全て素通りして、男の目の前まで迫った。
「あんたが傷つけた人達の分、まとめて返すっ!!」
これまで普通の高校生として生きてきた者が、テロリストとはいえ『生きた人間を殺す』なんて選択できるはずもなかった。
しっかりと助走をつけて前に飛び出し、遠くから氷の弾丸を打ち込むのでも、先ほどの人型兵器のように全身を凍らせるのでもなく、固く握りしめた右拳を、ローブの男の顔面めがけて、ただただ全力で振り抜いた。
自身の能力が本当に効かないことに動揺した男は、本来なら余裕で躱せるであろう高校1年生の右ストレートをモロに顔面にくらい、鈍い音とともに、後方に勢いよくとばされた。
「はぁ…はぁ……はぁ…」
「お前まさか…『ナチュラル』……なのか……」
ぶっ飛ばされて、逆に正気を取り戻した男は、倒れたまま、信じられないといった表情でボソリと呟いた。
俺はというと、一気に能力をかなり使ったせいで、フラつきながら地に膝をついた。
「ちっ、だったら尚更、まだここで終わるわけにはいかない…あいつらに伝えねぇと…」
そう言うとローブの男は、ゆっくりと起き上がり、「はぁっ!」と叫びながら勢いよく左手を前に突き出した。
俺とローブの男を結ぶ直線上で、爆発が起こり、動けず見ているだけの俺を置き去りに、爆煙が上がっていく。
当然、煙が晴れた先にはすでに人影はなかった。
俺はゆっくりと、瓦礫の山と化した駅、未だ炎と煙の絶えない街並みを見回し、薄れゆく意識のなか、最後の一滴まで使い切る勢いで、もう一度だけ能力を発動させた。
変化の能力によって降り出した雨は、雲ひとつない青空の上から、太陽の陽射しが照りつける中、被害の炎をゆっくりと消していった。




