021話 一人ぼっちの戦場
ゆっくりと目を開けると、食堂のモニターで見た惨状が、そのまま目の前に広がっていた。
事件発生からすでに2時間経っているはずなのだが、まるで収集できていないようで、各地でテロリスト達の用意したであろう対能力者用の軍事兵器が猛威を振るっている。
対能力者と言っても、別段、能力を無効にできるとか、そういう事はなく、単に通常の兵器より機動性に優れていて、堅固な装甲と強力な武器を装備しているというだけなのだ。
「ここは…」
送られた先は、ぱっと見ただの住宅街で、周りを見回すと、俺やタカアキ、アヤネが住む地域の最寄駅の一つ隣の駅の近くなのがわかった。
「なるほど、こんなの誤差に入らないっしょ…天才だ、あの娘っ」
彼女が危惧していた副作用についても今の所、特に変わったところはない。
当然この惨事じゃあ電車は動いてないだろうと、自分達の家のある地域を目指して、テロリスト達の闊歩する住宅街を走り出した。
地元に近づくにつれて、どんどん爆発の音や被害の煙と炎が大きくなっていってるように思えて、不安が募っていく。
ようやく最寄駅の商店街まで来たと思ったら…
商店街の広がる十字路を抜けた先にあるはずの駅が、半壊していて見る影もなかった…
「嘘…だろ…?」
半壊した駅のそばに、幾人もの人が倒れているのが見える。
「おいおい、冗談やめろよ…」
通学にこの駅を使った時に巻き込まれたであろう、俺が入学するはずだった高校の制服を着た二人組が倒れているのも確認できた。
「はぁはぁ…はぁ……」
慌てて駆け寄ろうとしたその時、俺が走ってきた方向とは逆の道から男性の声がした。
「ん?まだ動けるやつがいたか…」
2台の人型軍事兵器を引き連れたテロリストと広いバスターミナルを間に挟んで向かい会った。
2台の兵器の真ん中には、フード付きの真っ黒なローブを着込んだ軽装の人影があった。
よく見ると先日の能力者を狙ったテロ事件の時、最前線で戦っていたローブの人影と被って見えた。
「あんたらの目的はなんなんだ?能力者のいないこの地域にどうして…」
「そんなこと、今ここで消えるお前に話してもしょうがねぇだろ?」
そう叫ぶと、中央の男は長い両腕をおもいっきり広げて、目の前で交差するように、勢いよく振り抜いた。
俺は咄嗟に、兵器への攻撃の合図と踏んで、銃口に視線を向けて警戒すると、俺の目の前、約1メートルくらい前の、何もない空中で火花が散った。
(おかしい…人型兵器は微動だにしていないはず…)
「くっ、間に合わっ…」
次の瞬間、轟音とともに、俺を中心に半径5メートルくらいの範囲で爆発が起こった。
火花が見えたその瞬間、会長と対峙した時のように、自身を氷で包もうとしても、さすがにもう遅い。
一瞬の間で全身は覆えず、爆発とともに後方に吹き飛ばされた。
(一体何が起こった…?)
(信じられないことだけど、あの中央の男は能力者なのか…?)
爆風でフードが外れ、見えた顔は、とてもじゃないが子供とは言えない。
少なくとも18歳以下なんてことはないだろう。
それでも、超能力以外に、今、目の前で起きた現象を説明できる概念を今の俺は持ち合わせていなかった。
「よく死ななかったなぁ、あの一瞬で氷を張るなんてな」
吹き飛ばされた俺は、ゆっくりと瓦礫の中から立ち上がって、まぁ答えてはくれないだろうと思いつつもローブの男に尋ねた。
「あんた、まさか能力者なのか…?」
ローブの男はキョトンと拍子抜けしたような顔をして話し始めた。
「何もわかってねぇ様子を見るに、お前相当下位ランカーか?それにしちゃあ、氷の造形なんて、ずいぶんと良い能力じゃねぇか?」
どうやらこのテロリストは俺より、よっぽど能力者の世界に詳しいらしい。
混乱している俺を置き去りに、ローブの男は、兵器の操縦士に、とてもわかりやすい指示を出した。
パチン!と指を鳴らして、ただ一言「殺れ」と。
兵器は2台とも装備した鉄製の巨大なマシンガンの銃口をこちらへ向けて、ローブの男の合図とともに何十発もの弾丸を発射した。
後ろには、たくさんの人が倒れていて、とても避けられたもんじゃない。
「氷の壁っ!!」
(マシンガンの弾道的に、高くする必要はない。とにかく厚くっ!)
前に造ったやつより低く、厚い氷壁を作り出した。
当然、実弾相手に使ったことはなかったが、さすがに能力者の炎を打ち消しただけあって、マシンガンの弾丸を全て弾いた。
「はぁはぁはぁ…どうやら全弾防げた…かな…?」
ふと後ろを見ると、一瞬、倒れている人達の中の一人が動いたような…
(そうだよっ!倒れているからって死んでるとは限らないっ)
(ここを乗り切れば助かる可能性は十分にあるっ!)
「だとしたら…」




