018話 対戦表
そして翌日、試合本番を3日後に控えた日の午後。
第一講堂と呼ばれる、普段昼食を食べたり、自習をしたりする休憩室のような場所の一席に、チームメイト二人と、ついでに朝霞レンも一緒に陣取っていた。
目的は当然、今日発表となるトーナメント表を見ようというものだ。
通常この時間、講堂にはそこまで人がいないはずなのだが、今日に限っては、ものすごい混雑だった。
出場する者はもちろんのこと、実力的に出場を断念した新入生や、新入生の対戦を楽しみにしている上級生たちも集まりだし、どんどん騒がしくなっていった。
大勢の生徒が群がる中、午後14時ちょうど、メインモニターに組み合わせ表が表示された。
これだけ科学が進歩しているのだからネット掲示にしてくれればこんな混雑に見舞われなかっただろうに…
なんて効率の悪いことだろうか…
以前、担任が言っていた通り、試合はトーナメント形式で、今回は1学年の7クラスのうち、各クラス4チームずつ、計28チームのエントリーとなったらしく、例年より若干多くなっているとか。
そのため、今回は14チームずつAブロックとBブロックにわけられていた。
トーナメントには『シード』というものが決められていることが多く、通常、各ブロック外側の2枠が外シード、内側の2枠が内シードということになり 、Aブロックの一番上に配されたチームが今大会の最有力優勝候補ということになる。
チーム名は事前に番号で知らされていて、俺たちのチームは『F1』らしく、ついでにレンたちは『F2』ということだ。
まぁF組の一番だから『F1』っていうわかりやすく単純な名前だ。
トーナメント表が掲示され、28チーム分のローマ字と数字が並ぶ中、俺はあっさりと『F1』の名前を発見した。
「あっ、あった。」
「どこ?」
『F1』の文字を探して目を走らせていた二人に聞かれ
「ほら、あそこ、Bブロックの内側の二つの下の方」
言いながら『F1』と表示されたところを指差した。
三人の視線が集まり、俺はF1の一つ下に表示されている、おそらく俺たちの初戦の相手である『D4』の名前を見て、どんな能力の人がいるのかなー、何てことを考えいると
「どうやら、あの方と同じブロックのようね」
組み合わせを見て、アリスが嬉しそうに微笑んだ。
「あぁ、こりゃあ、ついてるね」
カガリさんも同意したのを見て、ついつい嫌な予感が眉間の辺りを走ってしまう…
「あの方って?」
恐る恐る尋ねた。
「ほら、Bブロックの一番上」
言われて、ゆっくり目をやると、『A1』と表示されていた。
「あっ…」
どうやら俺の予感は正しかったらしい…
ウィラード・カルヴァーニは確か1年A組だったか…
というか…
俺たちはBブロックの下側だから、『A1』とあたるには、準決勝まで行かないといけないんじゃ…
ふと、こういう情報が公開される時、一番喜んで、ハシャギそうな男が驚くほど静かにしていたので、レンの方に目をやると、あからさまに落ち込んでいた。
「どうした?」
「見てくれ、あれ」
とAブロックの上から3番目に表示された『F2』の文字を指差した。
「あっ、やっぱ俺たちと反対側になったんだっ」
以前レンに聞いた、F組の1番と2番は山が分かれるっていう話を思い出した。
「そこじゃねーよっ!『F2』の二つ上っ!俺たちの二回戦っ!!」
言われて目をやるとAブロックの一番上は『G1』となっていて、レンたち『F2』の二回戦の相手はG組の一番のようだ。
「G1ってやっぱ強いの…?」
「あのなぁ、リン…」
落ち込んだまま、呆れて、俺にモニターを指差しながら、今回のトーナメントについての説明をしてくれた。
「トーナメントの場合『シード』ってのが決まっててな?今回でいうとAブロックの一番上が第一シード、Bブロックの一番上が第二シード、そんでBの一番下が第三で、Aの一番下が第四。リンたち『F1』は内シードって言って、あの位置だと全体で第七シードってわけだ。」
「な、なるほど…」
「まぁ、ようするにだ。『G1』が今大会の最有力優勝候補って訳だ…」
説明しながらどんどん落ち込んでいって、ついには机に伏せてしまった…
思ったまんまに疑問を口にすると
「ん……?てことは…ウィラードより強い奴がいるって事か…?そういえば、もう一人のSランカーはG組って話だったっけ…?」
会長の言っていたSSに限りなく近い新入生ってウィラードじゃなかったってことになるのか…?
「かぁー、はっきり言うなよっ!!」
机に突っ伏し、モニターと一緒に現実から目を背けていたレンが、勢いよく起き上がって突っ込みを入れた。
「腹くくれよ」
カガリさんが笑いながらレンの肩をポンポンと叩きながら言った。
「まったく…他人事だと思いやがって…」
「あたしらだって、あのムカつく金髪をぶっ飛ばさなきゃいけないんだぜ?」
いうと、間に俺を挟んで隣に座っていた、金髪の女生徒が怪訝そうに、これ以上ないくらい嫌そうな顔を向けて
「金髪と、一括りにしないでいただきたいのだけれど」
「ちょっと自意識過剰じゃないですか?金髪さんは」
カガリさんが楽しそうに更に煽りにいった。
この二人は喧嘩しないと一緒にいられないのだろうか…
丸型のテーブルで右回りに、レン、カガリさん、俺、アリスという順に座っていて、俺の前にいるレンが二人の喧嘩を眺めて、呆れながら呟いた。
「そっちもいろいろ大変そうだな……」
「本当にね…」