011話 情報
午後になって移動すると、担任が
「今日は試合も近いから初めにチームを決めてもらおうと思う。今から少し時間とるから話し合って決めてくれ」
そう言うとみんな一斉に話し始めた。
「なぁ、アヤセ!俺たちと組もうぜ!」
「いいえ、私達と組みましょう!」
いろんな人達に囲まれそうになった時
例によって二人がやって来て
「この面子に加わる度胸のある者は?」
とファーレンハイトさんが聞くと、一斉にみんな散っていった。
「じゃあ、この三人で決まりだな」
カガリさんが言ったので
「そうなるね」
と同意し、担任を呼んだ。
チームを組むことを報告すると
「ほーう、昨日の今日でもう組ませたのか?フッ、なかなかやるじゃないか」
軽く肩を叩くと、これまた嬉しそうに
「ふむ、承諾した。こっちできちんと登録しておくよ」
と言って離れていった。
「それで組むのはいいんだけど、俺まだファーレンハイトさんの能力見てないんだけど…」
能力を見せてくれるように誘導した。
「そうでしたね。では、今からお見せしますわ。」
「ですが、その前に」
そう言うと近寄ってきて
「いちいちファーレンハイトと呼ぶのは大変でしょう?私のことはアリスでいいですわよ」
と耳元で囁くと数歩下がって、左手を開いた。
するとそこから、水流が上空めがけて螺旋状に吹き出した。
「私の能力は水の操作ですわ」
と上品な笑顔で答えた。
なるほど水と火は確かに相性悪いな…
「本当、忌々しい能力だよなぁ」
カガリさんが水流を見ながら聞こえるように呟いた。
本当に、この面子でうまくやっていけるか心配になる。
「だいたい皆決まったようで何よりだ。今日から試合が終わるまで、午後の実技はチームごとに自主練という形にする!クラス内でもライバルだからな」
「自主練か…どうする?」
「チーム戦といっても、戦うのは1対1ですし、各々自分の能力を磨くのに使うのがよさそうですね」
「そうだな」
カガリさんもこれには、素直に同意し、
「あの金髪野郎の対策もしねーとだしな」
と去っていった。
「確かに…」
というかあの金髪、なんだっけ?
ウィラードなんとか?
の能力についても、もう少し情報が欲しいよな…
「ファーレンハイトさん、俺はちょっと情報集めに行ってくるよ」
そう言うと彼女はこっちを睨みながら、ニコッと笑って
「ア・リ・ス とお呼びください」
「ア、アリス…」
「ふふっ、そうそうチームメイトなんですから、名前で呼び合いませんとね」
笑顔で言うと満足そうに演習場をあとにした。
「お前すごいな」
一人になると、いきなり見慣れない男子生徒に話しかけられた。
「えーっと…」
「あぁ、俺は同じクラスの朝霞レン、日本人だ」
「よろしくな」
「俺は綾瀬リン、こっちこそよろしく…?」
握手と挨拶をしてから、話し始めた。
「本当にあの二人とチーム組むなんてすごいことだぞ?」
「やっぱり有名なの?」
「そりゃあ、ウチのクラスの最上位ランカーだからな。それにあの二人、入学式の時からすげぇ仲悪くてさ…いろいろ大変だったんだよ…」
「その図は簡単に想像できそうだよ…」
「その二人がチームメイトになるってんだから、リンは相当すごいんだよ」
「その点については、共通の敵を見つけたのが大きかったね」
「なんだよ?共通の敵って」
「Sランク能力者のウィラードってやつ、知ってる?」
そう言うと驚いた顔で少しフリーズした。
「いやいや、知ってるも何も、今年の新入生に二人しかいないSランクだろ?あの二人よりはるかに有名だよ」
「やっぱりそうなんだ…」
「なるほどなー、ウィラード・カルヴァーニかぁ…てことは、リン達の目標はウィラード達に勝つことなんだ?」
「んー、まぁ、あいつと当たるまで残れるかわかんないけど…一応そうなのかな」
「そうすると最大の難関はもう一人のSランク能力者だな」
「あぁ、そういえばもう一人ってどんな人なの?」
「それっ!」
「へっ?」
「そのもう一人のSランカーについての情報が何もないんだよ!」
いきなり熱弁し始めた。
「おかしくね!?たった二人しかいないのにまったく情報がないんだよっ!!教師陣に聞いても何も教えてくれないし
さー」
「結構調べたんだ?」
「んー、俺は戦う可能性のある相手はとことん調べて対策するタイプだからねー、ゲームとか、ボス戦の前に必ず攻略チャート見るからね」
「なるほど…じゃあ俺たちの情報も結構集めるかんじ?」
笑いながら聞くと
「ん?いや、リン達とは多分決勝いかなきゃ当たんないと思うし、決勝なんて行けないから必要以上に調べたりはしないかな」
「そうなの?というか対戦表ってもう出てるの?」
「いや、まだだけど、トーナメント方式ってのは決まってて、各クラス、チームの登録するときに強い順に番号つけるんだよ、それで1番と2番は山が別れるはずだから、リン達が俺たちの組の1番で俺たちが2番だから十中八九当たんないよ」
「なるほど。本当に詳しいね…」
同じ日本人ということもあり、すっかり名前で呼ぶほど打ち解けた。
それにしても、もう一人のSランクっていったい…