010話 能力の限界
〜翌日〜
またもや早起きをしてしまった…
時刻は5時36分と、昨日ほどではないにしろ早すぎる。
昨日の事件を思い出して、もっと能力を使いこなせるようにしようと思い、生徒会長に案内してもらった施設の一つ、誰でもいつでも能力を使っていいという霊鳳堂第三修練場へ向かった。
「本当に5時台でも開いてるんだ…」
呆れながら入ると、開いてはいても、さすがに誰もいなかった。
いろんな部屋があったのだが、一番広く何もない部屋に行った。
「ひろっ!」
あまりの広さに驚き、これはいい練習ができそうだと思った。
「まだ自分の能力についてちゃんと把握できてないんだよな」
部屋には何もなかったので、とりあえず能力で人型の氷を造形して、遠くにまばらに配置した。
先日のカガリさんの技のように、氷を弾丸のように飛ばせないかと考え、人型の造形物をめがけて、氷を飛ばすイメージで能力を思いっきり放った。
右手から放たれた氷の塊は、予想以上に大きく標的をスルーして相当離れた反対側の壁に勢いよく衝突した。
流石に超能力の使用を許可してるだけあって壁は無事だったのだが、このコントロールでは到底使い物にならなかった。
「むず…」
それからしばらくの間、力加減を変化させて、同じように技を練習していった。
途中まで当たった回数やら放った回数やらを数えていたのだが、3桁を超えたあたりから妥協した。
「うん、だいたいこんなもんかな」
どれだけ時間が経ったかわからないまでも、氷の塊に関しては確実に狙い通り当てられるようになった。
「最後に一度限界を知っておいた方がいいかな…?」
「この広い部屋をどれだけ凍らせられるか…」
「ふぅ…」
ゆっくりと深呼吸してから、右手を開いて前に出し、止めた。
「はぁぁぁぁぁっ!!!」
残りの力全部出す勢いで、部屋中を凍らせるイメージで能力を放った。
みるみるうちに、氷が広がっていき、あっという間に部屋中が氷で満たされた。
「ははっ、やればできるもんだな…」
と苦笑いをすると
「あれっ?前が…」
能力を使いすぎたのか、意識が途絶え、その場に倒れこんだ。
「ちょっと!大丈夫!?」
ゆっくりと目を開けると、そこには緑色の髪をした見覚えのある女性がいた。
「あれ?昨日の…うわっ、すみません!」
慌てて起き上がると
「能力の使いすぎね」
「ははっ、どこまでできるのか試してみたくて…」
「そりゃあこんな事すれば無理ないわ。あなた何者?今年の新入生にこんな事できる子がいるなんて聞いてないわよ…」
凍った部屋を見ながら言った。
「俺も今知ったんで…」
と笑いかけると呆れた感じで
「はぁ、まぁいいわ。そろそろ人が来る時間だから早く消したほうがいいわよ?」
「へっ?今何時ですか?」
恐る恐る尋ねると
「8時ちょうどね」
腕時計を見ながら答えた。
案の定、間に合いそうにない時間だった。
「やばっ!すみませんっ、失礼しますっ」
氷を元に戻し、大急ぎで寮に戻った。
「来週の試合、面白くなりそうね」
走り去る俺を見ながらそう呟いた。
昨日とは違って迷わなかった分、ギリギリセーフといったところか、始業2分前に教室についたので担任に皮肉を言われることもなく、無難に午前の通常授業を乗り切った。
それにしても、朝っぱらから重労働だった…