桜咲く入学式
若葉の緑色
桜の桃色
晴れ渡った空の青色
春めいた風が吹く中、私、八坂なずなはーー。
とても慌てていた。
なぜなら入学式の今日に限って寝坊をしてしまったのだ!
徒歩20分はかかる高校への道を全力で走る
あたりに人影はなく、自分と同じように寝坊した人はいないらしい
住宅街を抜け、街路樹が見える
そこも抜ければ、
…見えた!校門だ!
近くの時計を見てみると、
短針は8、長針は10を指差している
…よかった。開始は9時だからギリギリセーフ!
走る速度をゆるめ、体育館へ向かう
すると、前方に髪の長い少女がいた
もしかしたらあの子も寝坊したのかな
なんて希望を抱きながら、その子の近くに走り寄った
「ねぇ!あなたも新入生?」
結いあげた黒髪がゆれる
宝石みたいな目が私をうつした
「そーだよ。ね、南第一高校ってここで合ってる?」
すごい、きれいな子だなぁ…
「…きーてる?」
「へあっ、ごめんね!合ってるよ!」
見惚れてて無視しちゃってた…!
あれ、笑ってる?
「えーと…?どうしたの?」
「ふはっ!ふ、ふふ」
なんだろう、変なことしちゃったかな
ちょっと困ってると、ひとしきり笑った美人さんがこちらを見ていた
「ふふ、ごめんね?へあっ…なんて驚き方初めて聞いたから」
顔が熱くなる
そんな声だしてたんだ
「…忘れてね」
赤くなったであろう顔を手で隠す
ちょっとうつむくと上から声が降ってきた
「忘れられたらね、それよりさ、いーの?」
「何が?」
「いや、あんたも新入生でしょ。そろそろ…」
…キーンコーン
鐘の音?
恐る恐る時計を見る
「入学式始まっちゃったぁ!」
「あーあ。間に合わなかったか」
美人さんは呑気にしている
なんでそんなに余裕なんだ!
美人さんの手をとる
「はやくいこう!入学式、終わっちゃう!」
驚いた顔の美人さんを引っ張って、体育館へと走った
…これからの高校生活、本当に大丈夫かなぁ。