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第6話 強さを求めて

入れるつもりもなかった話が、というかキャラができてしまった。しかし、今後出番はおそらくない。

 剣を回収から数日経ったころ、剣太郎から英雄に連絡が入った。その連絡の内容は、非公式の個人戦であるが初めて地方大会で優勝したとのことだった。ラミに伝えると剣が役に立ったのならよかったと呟いた。

 魔法道具である剣は元々兵器として造られたものだが、剣術の体感を獲得するのに一役買ったのである。ラミは考えようによっては、危険な兵器としか言えない様な道具も平和的な利用価値があるかもしれないと認識を新たにした。


 一方、英雄は圧倒的なラミの力を目の前にし、焦燥感に駆られていた。ラミは本当に良い奴なのだろうか。もしかして俺たちは危険なことに加担しているのではないだろうか。もし、それが本当だとして魔王に勝てる見込みがあるのだろうか、と。しかし、それでも強くなる、あるいは魔王に勝つ方法は思いつかなかった。


 ある時、英雄は試しにラミにどうやって強くなるのかを聞いてみた。


「強くなる方法? 私に聞かないでよ。私はほぼ最強の状態で生まれてきたんだから」


 生まれてきたときから最強が何を意味しているのかは分からなかったから何とも言えなかった。


「……あぁ、そう」

「でも、一般的な魔力の増やし方なら知ってるわよ」

「教えてくれないか?」


 少し、がっついて聞く。


「そんな近くに寄らないで。飽く迄、一般的な方法よ。個人差も大きい」

「それでもいいから」

「原理から説明するわよ。基本的に魔力は生まれた時から体内に保存できる量と生成できる量が決まってるわ」

「それじゃあ、増えないじゃないか」

「話は最後まで聞きなさい。だけど、心肺機能が上がるとそれに連れて魔力が増える……傾向があるわ」

「なるほど。要は運動すれば魔力が増える可能性があるということだな」

「必ずとは言えないわ。仮に増えたとしても僅かなことも多いから」

「わかったよ。サンキュー」


 英雄は、早速ある場所に向かおうとした。


「ちょっと、待ちなさい」

「何だよ」


 英雄は振り返る。


「何のためにそんなことを聞いたの?」

「強くなりたいからじゃ、駄目か」

「……わかったわ。碌な事を考えていないようだったら、私が止めるからね」

「はいはい」


 英雄は「それはこっちの台詞だ」と心の中で思っていた。


 英雄が早速向かったのは、古道流道場だった。


「久しぶりにここに来たけど相変わらずだな」


 高台にある古風な雰囲気が漂うその道場には、木製の看板に古道の文字が書かれている。門をくぐると学校に設置してある道場の二倍ぐらいの大きさの道場がある。

 道場の中からは気合の入った声が二人人分程度聞こえてくる。

 英雄は道場の中を覗いた。中では、桃覇の父親であるたけると門下生一人が正拳突きを繰り返していた。

 武は英雄が覗いているのに気付き、その動きを止める。


「久しぶりだな! 英雄君」


 続いて、門下生が押忍オスと声を挙げる。


「久しぶりです。古道さん。ただ、その呼び方はやめてください」

「ははは! それは悪かったな! それで何かようかね?」

「その……実はですね。俺もここで鍛えようかと思って」

「本当か!?」


 武は英雄の肩を持ち、揺さぶりながら尋ねる。その目には涙すら浮かんでいた。


「君には昔から我が道場に来てほしかったんだ! 何度誘っても断られたからもうダメかと諦めていたのに、一体どうして!?」

「強くなりたい理由ができたから……では駄目ですか?」

「いや、構わない! 君に道場さえ継いでもらえたらそれでいい!」

「え、いや、別に継ぐ気は全くないんですが」

「皆まで言うな! 桃覇も君となら望んで結婚するだろう」

「別にそんなつもりでここに来たわけでは……」

「いいや、分かっているぞ! 君の決心は!」


 英雄は一体何が起きているのか理解しかねていた。


「古道師範! お客人が困っていますよ!」


 中学生ぐらいの門下生の男の子が、武を注意した。


「おっと、少し興奮しすぎてしまったな。何せ久しぶりに会えたものだから」


 英雄は嘘を吐くなと心の中で毒づいた。


「それで、桃覇にはばれない様に鍛えたいと思っているんですがどうしたらいいですかね?」

「何故だ? 桃覇も君と一緒に鍛練できるなら喜んで毎日組み手でもなんでもすると思うぞ」

「今まで避けてきただけに少し恥ずかしいんですよ」

「うむ……そうか。ならば、トレーニングメニューを私が作ろう。とりあえずはそれをこなすといい。技の習得は後から同じように教える。わからないことがあれば直接来るといい」

「ありがとうございます! それでお願いします」

「少し待ってなさい。今、メニューを作ってくる」


 武は道場を出て行った。


「あなたは一体何を考えているんですか?」


 先ほど、武を止めた門下生が英雄を呼びとめた。


「君は?」

「申し遅れました。僕は、飾木紀彦かざりぎのりひこです」

「丁寧にどうも。小郷英雄こざと ヒーローだ」

「その名前、本名なんですか?」

「認めたくないがその通りだよ」

「桃覇さんが、いつもその名前を口にするのでどんな人かと思っていましたが、期待外れですね」


 英雄はいきなり失礼なことを言う奴だと思った。


「古道流は甘くないですよ。簡単に身に付けられるものではありません」

「知っとるわ、そんなこと。あんな人間離れした力を簡単に身に付けられるわけねぇだろ」

「ご存知だったんですか」

「あぁ。古道武とその娘、古道桃覇に勝てる奴はいないだろうよ。例えそれが、どんな格闘技の世界チャンピョンだろうとな」


 あいつを除いてと口に出しそうになるのを止めた。


「ですが、それを身に付けられるのは代々古道家の人だけだそうですよ」

「それも知ってる」

「それでも、ここに入るんですか?」

「俺は別に古道流を身につけに来たわけじゃない。それを越えなきゃならないんだ」

「古道流を超える?」

「ちょっとわけありでな。どれくらいかかるかはわからないが、すぐに桃覇は超えてみせるぜ」

「無理だ! そんなの絶対に!」

「そうだとしても、それを目指すんだよ」

「無謀なことを言っているのがわからないんですか?」

「何をそんなむきになってんだよ」

「あなたにはわかりませんよ!」


 紀彦は英雄に飛び掛かった。英雄はそれを避けた。


「いきなり何すんだよ!」

「そんな戯言を言うのは、僕を倒してからにしてください!」

「別に言うのは自由だろ……」

「うるさい!」


 紀彦は再び英雄に襲いかかった。


「ちょっと待った!!」


 道場の扉の前で、武が声を挙げた。


「勝負なら私が見てやろう。英雄君が今どれくらいの実力なのかを見ておきたいしな」

「別に僕は構いませんよ」

「俺は嫌なんですが……」

「まぁ、そう言うな。男の真剣勝負だ。逃げたら男じゃないぞ」

「男じゃなくていいんで帰らせてください」

「待ってくれ。いや、待ってください。お願い。あ! 言うこと聞かないとこのトレーニングメニューは渡さないぞ」

「くっ、仕方ない」


 英雄と紀彦は向き合い畳に引いてある線の上に立つ。柔道と同じ様な線である。


「いいか。怪我はしてもらいたくないから、寸止めにしろよ。拳や蹴りが当たった時点で止めるからな」


 英雄と紀彦は肯く。


「それでは、はじめ!」


 紀彦は構えを取る。英雄は構えを知らないのでそれっぽく構えておく。


「なんですか、そのふざけた構えは?」

「えーっと、孫悟○流?」


 英雄は中腰ぐらいで左腕を相手に向けて伸ばし、右腕をその逆方向に伸ばしていた。


「馬鹿にしているんですか?」

「ちっとも、そんな気はない」

「……行きますよ」


 構えたまま直行し、拳を英雄に連続で突きだす。英雄は危なげにそれを避けた。


「危なっ」

「くそっ」


 偶然、全て紙一重で避ける形になっておりそれが紀彦を苛立たせた。

 英雄は避けるのが精一杯で、手を出す暇がなかった。


「でやぁあ!」


 渾身の右の正拳を突き出し、またそれをなんとか避ける英雄。紀彦はその一撃で疲れたのか、攻撃の手が止まった。


「本当に寸止めする気あるか?」

「当たらないんですから、その必要もないですよね」


 紀彦は再び、猛攻を繰り返す。それを先ほどと同じように避ける。しかし、疲れているのは英雄も一緒だった。理由は、ただの運動不足。本来なら、圧倒的有利である状況を活かせそうになかった。


「はぁ、はぁ。どうして、はぁ、攻撃してこないんですか?」

「はぁ、攻撃を出す、はぁ、隙がないんだよ」


 二人とも息切れを起こし、そのまま似たような状況が十分程続いた。


「はぁ、はぁ。ゲホッ。いいかげん、やめないか?」

「はぁ、や、やめません」


 紀彦はもう一度、これで最後だと言わんばかりに全力の拳を突き出した。英雄はもう一度、同じ様に避けようとするが足が既に限界が来ており、膝が動かなかった。咄嗟に掌で受け止めようと手を顔の前に出した。紀彦の拳が、英雄の掌に当たった瞬間――紀彦は尻もちを付いていた。


「え?」


 英雄は確かに掌に拳が当たった感触を感じた。もしかしたらそのまま手の甲が顔に当たるのではないかと思った。しかし、結果は紀彦をはじき返したのである。いや、その表現は少しおかしい。はじき返すというよりかは、なにかが押し返したと言うのが妥当だった。

 英雄は自分の掌を見た。何の変哲もない自分の手だ。でも、英雄はこの感覚を知っていた。

 紀彦はその間に立ちあがっていた。英雄は身構えるが、もう疲労困憊で動けそうにない。紀彦は息こそ上がっているが、体力にはまだ余裕が見える。しかし、その目から猛々しい戦意の目は感じられなかった。そして、頭を下げていた。


「参りました」

「え? いや、俺はなにもしてないけど」

「いいんです。何となくわかりましたから。あなたなら桃覇さんを超えられるかもしれません」

「そ、そうなのか?」

「もちろんだとも!」


 武はそこに割って入ってくる。


「君の才能は桃覇どころか私すらも超えるポテンシャルがあるぞ」

「本当ですか?」

「本当だとも。筆舌にし難いことなんだが、特別な者しか持ちえない力を私や桃覇は持っているんだ」

「なんですか? それは」


 紀彦は尋ねる。英雄はその力は魔力なのではないかと思った。


「言葉に表せないからなんとも。ただ、英雄君はそれを私よりも多く持っている。それがさっきの戦いでわかった」


 英雄は、武をじと目で睨み、武はすまんと小声で言った。


「僕にはそれが無いんですか!」

「無いと思うし、これから身につけるのも無理だと思う。その正体がなんなのかはわからないが、生まれついての素質としか言えない」

「……そう、ですか」

「古道さん、一つ確認したいことがあります」

「何かね?」

「その力は生まれつきだと言っていましたが、これから増やすことは可能なんですか?」

「……どうだろう? 鍛練や体の成長に伴って増えた感じがしないこともないが、感覚的なものだから」

「わかりました。ありがとうございます」

「質問はこれで終わり?」

「はい」

「それじゃあ、これ」


 武は英雄に巻物を渡した。


「ありがとうございます」

「毎日続けるんだよ」

「わかりました」


 英雄は、道場を出た。そこで、紀彦は英雄を呼びとめた。


「小郷さん。古道師範にあそこまで言わせた才能なんですからちゃんとしてくださいね」

「例えあの人が何を言っても努力はするさ。強くなりたいからな」

「……僕はあなたがうらやましいです。あんな凄い人たちに近づける才能があるんですから」

「才能才能言われてもピンとこないから。どちらかと言えば、運動も勉強も駄目な方だからな。桃覇は俺を持ち上げるけど」

「確かにいつも小郷さんを褒めちぎっていますね」

「だろ。あいつの方が、俺よりはるかにすげぇのにな」

「そうですね」

「そこは否定するところだろ」

「すみません」


 紀彦は笑いながら謝る。


「まあ、何にしても頑張るしかないな」

「最後に一つ聞いてもいいですか?」

「何だ?」

「どうして強くなりたいんですか?」

「……魔王を倒すため……なんてな」


 英雄は冗談めかして本当のことを言った。


「そ、そうですか」


 紀彦は引き気味にそう答えた。


「お前が何年ここでやってるかは知らないけど、ずっとやってればその内いいことあるんじゃないか?」

「そうかもしれませんね」

「それじゃあな」

「はい、ありがとうございました」


 道場を出て、長い階段を降りると桃覇が居た。


「よ、よぉ」

「あ、英雄。どうしてここに?」

「こ、古道さんにちょっと用事があってな」

「へぇー。でも、随分動いたみたいだね。汗がすごいよ」

「いきなり、勝負を挑まれてな」

「もしかして飾木君?」

「そうだけど、どうした?」

「あの子、少し喧嘩早いところがあってね。見学してくる人とかに勝負を仕掛けることがあるの」

「真面目そうなのに意外だな」

「まだ、うちに来てから一年も経ってないのにね」

「は?」

「知らなかった? 飾木君はうちの道場で鍛練するようになってから一年も経ってないよ」

「……マジか」

「どうしたの?」


 才能才能言ってた割に対して努力していないこと、桃覇にはかなわないけどそれなりの実力者かと思っていたこと。いろんな意味でショックな英雄だった。


だいたいしかあってない次回予告


英雄「しかし、巻物で渡すなんて古風すぎやしないか?」


ラミ「何見てんの?」


英雄「べ、別になんでもねぇよ」


ラミ「ふーん。それより、この漫画面白いね」つハ○レン


英雄「また勝手に……」


ラミ「これみたいなことできる魔法道具もあるんだよね」


○○「はーはっはっはっはっは! 俺は錬金術師! この世の森羅万象の真理を解き明かす者だ!」


ラミ「何あれ?」


英雄「気にするな。ただの思春期特有の病気だ」


○○「病気じゃねーーーー!」




天城「だいたいこんな感じかもしれない次回「中二病の錬金術師」見てください」

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