第5話 剣の魅力な魔力
活動報告で三話更新するとか書きましたけど、無理です。でも、近日中にはなんとかします。
「英雄! 英雄いるー?」
教室に桃覇の声が響く。
英雄は急ぎ足で桃覇の元へ向かった。
「その名前で呼ぶなと何度も言ってるだろ」
「ごめん。でも、伝えておきたいことがあったから」
「なんだよ?」
「ヒ……小郷家の私有地の竹林が伐採されてるらしいよ」
「どうしてそれを俺に伝える。母さんか父さんに言えばいいだろ」
「いや、おじさんたちは知っていると思うよ」
「そうかい。それで?」
「もしかしたら、ラミちゃんが落とした魔法道具が使われたんじゃないかと思って」
「伐採されただけなんだから、関係ないだろ」
「でも、なんか普通じゃないらしいよ」
「普通じゃないって、どう普通じゃないんだ?」
「私にはよくわからないんだけど……」
桃覇曰く、毎日一本ずつ斬られており、竹林は全て真剣で斬られたような切り口だった。最近になって、斬られる本数が増えてきたそうだ。
「試し斬りでもしてるみたいだな。回数が多いから、それだけじゃないんだろうけど。斬られた竹はどうなった?」
「そのまま放置されているよ」
「……今度、見に行くか」
桃覇は驚いた表情を浮かべていた。
「どうしてそんな顔をすんだよ?」
「珍しいな、というか久しぶりにやる気出してるとこ見た気がして……」
「お前は俺を馬鹿にしてるのか?」
「全然そんなことないよ! むしろ、嬉しいなって思っているぐらいだから」
「あっそ」
「私はいつだって英雄の味方だからね!」
「だから、その名前で呼ぶな」
「ご、ごめん!」
意外に思われるかもしれないが、小郷家はかなりの金持ちである。英雄の祖父であるトレイスは資産家で大企業の会長に拾われた養子であったためである。英雄の父親は現在その小郷グループ本社の社長を務めている。しかし、英雄の祖父は女癖が悪くたくさんの女を孕ませた。そのため何度も訴えられ、それを黙らせるために多額の示談金や養育費を払い続けているのである。それでもまだお金に余裕があるが、贅沢するのは憚れるために中流家庭ぐらいの生活をしていた。それでも、昔から持っている多くの土地は残っていた。竹林はその多くの土地の一つだ。英雄達はそこに来ていた。
「確かに、聞いてた通り綺麗に斬れてるな」
素人目にも綺麗な切り口だとわかる。一部の竹は槍のように鋭くなっていた。
「本当ね……」
「っ! お前、いつの間に来てたんだよ」
「最初から居たわよ」
「私が連絡しておいたんだよ」
桃覇は、スマホを振りながら答える。
「いつのまに……というより、どうやって連絡したんだよ。携帯とか持ってないだろ」
「いえ、あるわ。あなたのお母様が、これが無いと大変よってくれたのよね」
ラミはポケットからスマホを取り出してそう答える。
「なにやってんだよ、母さん……」
「それにしても、この世界の技術は凄いわね。感動した。今度は私の世界の技術も見せてあげたくなったわ」
「その魔法道具を集める過程で見ることはあるんじゃねぇの?」
「多分ね。でも、あれらは半ば兵器だからもっと平和的で有用性のあるものが見せたいの」
「そうかい、期待せずに待ってるよ」
「素直じゃないねー」
「私は見てみたいよ! ラミちゃん」
「ホント、桃覇ちゃんは良い子だよねー!」
桃覇とラミはハグをした。その光景に英雄は欧米かっと少しツッコミたくなった。ただ、見た目年齢のせいで、ただの姉妹ぐらいにしか見えなかった。桃覇が、もう少し年齢を重ねていれば親子に見えたなと、どうでもいいことを英雄は考えているのであった。
「ところで、これは例の剣で間違いないのか?」
「多分ね。何回も使ったような魔力の残滓がある」
「それなら待っていればそのうち来るかもな」
「どんな人だろう?」
「碌な奴じゃないわね。私の持ち物を勝手に使ってるんだから」
「確かにな」
その一言に桃覇とラミは二人で英雄を見た。
「な、なんだよ」
「別に~」
「何もないよ」
桃覇は苦笑いを浮かべた。
「含みのある言い方だな……」
「まぁ、気にしない、気にしない」
聞いても無駄そうなので深く聞くことは止めた。
しばらく竹林の中を歩き回っていると人影が見えた。
「おい! ここは私有地だぞ!」
遠くに居る人はそんなことを言った。
「ここは、あなたの家の土地じゃなかったっけ?」
「そのはずだぞ。ちゃんと父さんにも確認を取ったからな」
歩いてこちら側に来ると顔が見えてきた。
「あれ、剣太郎さん?」
「そういう君は、英雄君か?」
「お久しぶりです」
「久しぶり」
英雄と剣太郎は握手をした。
「えっと、お二人はどういうお関係ですか?」
桃覇が尋ねた。
「血縁上は英雄君の叔父に当たるかな」
「叔父? お兄さんじゃなくて?」
ラミが加えて尋ねる。
「見た目的にはそう見えるよね。実際の年齢でもそうだけど」
「失礼ですが、お歳は?」
「二十歳だよ」
ラミと桃覇は、唖然とした。
「ところで、剣太郎さんは何をしにここへ?」
「本当は言いたくないんだけど、英雄君にならいいかな」
剣太郎は背中に背負っていた竹刀袋から鞘に収まった剣を取り出した。
「あー!!」
いきなりでかい声を出されて全員がビクッとした。
「一体どうした?」
「あれは、私の魔法道具よ」
小さく英雄に言う。
「例の奴か?」
「そうよ。レーダーにもはっきり映ってる」
「わかった。とりあえず、俺がタイミングを見計らって尋ねるから、今は黙っとけ」
「仕方ないわね」
英雄は一呼吸吐く。
「あの子は一体どうしたんだい?」
「なんか珍しいチョウチョを見つけたみたいです」
「そうなんだ」
「それで、その剣がどうしたんですか?」
「そうそう、これね」
剣太郎は鞘から剣を取り出した。
「これが何ていう剣で、誰が作ったのかはわからないけど、とてつもない名剣なんだ」
「そうなんですか? というか、真剣なんですか?」
英雄は真剣だと分かっていたが、知らない体で聞く。
「そうだよ。これを見て分からないか? 見事な出来栄えだ。切れ味も素晴らしかった」
「……もしかして、この竹林、剣太郎さんがやったんですか?」
「あぁ、悪いとは思ったんだけど、どうせあの親父の土地だし、僕が使っても問題ないと思ってね」
「なるほど。納得はできます……でも、一応うちの土地なので勝手されると困ります」
「……君たちはそういう理由でここに来たの?」
ここで急いてはならない。自然にそれとなく伝えようと英雄は心がけた。
「いえ、そうで……」
「あぁぁー! もう、じれったい!」
英雄が話そうとするのを遮り、ラミは大声を上げた。
「私たちがここに来たのはあなたが持っている剣を回収するためよ!」
「……は?」
小さな女の子が急に言い出したことに皆理解が追いつかなかった。
「だから、その剣は元々私のものだって言いたいのよ」
「英雄君、この子はどうしてこんなこと言っているのかな?」
「あ~、その、えーっとですね……あの子の言う通り剣を回収しに来たんですよ」
剣太郎に罪悪感を与えつつ、剣に話を変えていき剣を返してもらおうと考えていたのを変えられてしまい。この手はあきらめることにした。
「これは僕のものだよ。どうして、あの子の物だって言うのかな」
「信じられないと思いますけど、笑わず、驚かずに聞いてくださいね。冗談でもなんでもありませんから」
剣太郎は肯く。
「あの子は、異世界から来た魔王です」
「え? それはいくらなんでも……」
「嘘じゃないわよ。証拠を見せてあげるわ」
ラミは掌を既に斬られている竹に向けた。ラミの掌からは火が噴出し、それが掌から離れ火の塊は竹を炭も残さずに焼却した。それを見た、全員は驚いた。
「少なくとも私が普通の人間じゃないことは分かったでしょう?」
少し嬉しそうな表情になった。
「魔王……それが本当なら手合わせをお願いしたい」
「何を言っているの?」
「僕は剣の道を志している。けれど、悲しいかな。才能が無いんだ」
「それで?」
「この剣は使っていて、この剣が不思議な力を持っていることはわかった。これに頼るのは正直嫌だけど、これをきっかけに強くなれるんじゃないかと思ったんだ」
「だから、ここで竹を斬っていたと」
「その通りだよ。それで君は魔王……かどうかは確証が持てないけど、計り知れない力を持っているのはわかった。そこで、力試しがしたいんだ。僕が負けたら剣を返すよ」
「いいわよ。その代わり怪我しても文句言わないでね」
「勝負である以上、そんなことに文句は言わない」
桃覇はその話を聞いて慌てた。
「女の子がそんな話に乗っちゃだめだよ!」
「桃覇」
「何、英雄?」
「それはやめろ。これは剣太郎さんにとって必要なことなんだ。だから止めるな」
「そういうことよ。男ってのはめんどくさいプライドだとか意地だとかそういうのに拘らずにはいられない生き物だから」
剣太郎と英雄はちょっと否定したくなったが、間違ってはいないので何も言わなかった。
「それじゃあ、かかってきなさい。見た目が幼女だからって容赦する必要はないわ」
力があると分かっていても、見た目は幼い子供のそれと一緒なので、なかなか攻撃することができないでいた。
「来ないならこっちから行くわよ」
ラミは、3メートル程の距離を一足飛びで、剣太郎の顔を殴りに行った。そのスピードは凄まじく、剣太郎は咄嗟に剣を前に出し防ぐ。ラミはその防御を気にせず殴りぬける。その衝撃音はまるで金属同士がぶつかる様な音だった。
「危なかった……」
「その剣の特性を使えている……というよりは使われてるみたいね」
「そんなことわかってる!」
英雄と桃覇はその会話を理解できなかった。だが、剣太郎の動きから異常性を見ることができた。今度は剣太郎からラミに連続で斬りかかった。その速度が人間離れしていた。剣を振る軌跡さえ見ることができない。それを手だけで防いでいるラミも異常だった。
「それで終わり?」
「くっそぉ!」
剣太郎は振りかぶってラミに振り下ろした。ラミはそれを止まっていた剣を掴むように両手で白羽取りをした。剣太郎は引いても押してもそこから剣を動かすことができなかった。
「もう心残りはないわね」
剣から左手を放し、スッと顔に拳を放った。ベキッという音がした後、剣太郎は倒れ、その際に剣を手放した。
「これで、剣は回収完了ね」
「……何かすみません、剣太郎さん」
「ちょっと、かわいそうな気もするね」
「彼から言ってきたことだから気にする必要はないよ」
その言葉が気絶している剣太郎に聞こえることはなかった。
「その剣の名前は何て言うんだ?」
「これ? これは剣よ」
「いや、そうじゃなくて……」
「だから、剣って名前の剣よ」
「何それ?」
「元々は、どんなに身体能力に欠陥を持っていても一流の剣士になることを目的に作られたものなの。それを自分の軍隊全員に配ろうとしてた奴が居たんだけど、あれもこれもって機能を追加しているうちに量産が難しい代物になってしまった。そんな剣よ」
「身体能力の強化はなんとなくわかったけど、それ以外にも機能があったのか?」
「斬撃を飛ばしたり、ビームを発射したり、シールド張ったり、火を出したり、水を出したり、氷を出したり、まぁとにかく色々できるわ」
「まだあるのか」
「聞きたい?」
「いや、いい。そんなに聞きたくない」
「それはよかった」
結局、今回はラミ1人で解決したような問題だった。そのため英雄は無力感を感じ、これから何かできないものかと考え始めていた。別にラミのために頑張ってやろうというわけではなく、自分がより良い生き方ができるようにと思い始めていた。英雄の中で何かが変わり始めていた。
だいたいしかあってない次回予告
英雄「どうにか強くなる方法はないものか?」
ラミ「鍛えたら?」
英雄「……それだ!」
英雄「たのもー!」
その後、彼の行方を知る者は誰もいなかった……
英雄「んなわけあるかっ!」
天城「だいたいこんな感じかもしれない次回「強さを求めて」是非、見てください。