第4話 刀剣マニアは憂鬱
今回はちょっと短いです。それとちょっと所用で二週間ほど出かけるのでその間、更新できないかもしれないです。詳しくは、活動報告に書こうと思います。
休日、英雄達は英雄の家で魔王ラミの詳しい話を聞くことになっていた。
「それで、お手伝いってのは何をさせる気なんだ?」
英雄は記憶を飛ばされたものの、英雄の中では魔王と会った記憶などは残っており、学校で桃覇と一緒に魔王に出会い、休日にお願いを聞くということになっていた。
「探し物を見つけるのを手伝って欲しいの」
「探し物って何だよ?」
「一つは既に見つけたわ」
「一つはって、複数あるのかよ」
「今持っているのも含めて、七つの魔法道具を回収したいの」
沈黙が訪れた。桃覇にとっては魔法というものはあまり信じられるものではなかった。桃覇は、刀のことは覚えていたがまだ夢か幻のように感じられていたために受け入れられるものではなかった。
「この間もいろいろ見たしラミちゃんが言うならそれは本当のことなんだろうけど、いざ魔法って言われるとなかなかね……」
英雄はこの間と言われても何も覚えていなかったが、魔王の角のことを思い出し勝手に合点がいっていた。
「信じられなくてもいいわ。探し物が全部見つかればいいの」
「それで、その探し物の見た目は?」
「えーっと、確か……」
魔王曰く、刀、剣、ナイフ、手袋、指輪、懐中時計、ペンダントの七つが探し物だということだった。既に刀はあるため、残りは六つ。
「しかし、武器が二つもあるのかよ。魔法関係なさそうなんだが」
「どれも魔法的付加価値があるから普通ではないよ。魔法が一般的だから近接戦闘する意味もほとんどないしね。この世界でも、近接戦闘なんて滅多にないよね」
「近接戦闘どころか、この国じゃ戦闘が起きねぇよ」
「それはいいことね」
魔王は笑顔でそう言った。
「ところで、どうやって探すんだ? 俺たちは学校があるから探し物を手伝うって言っても放課後か、休みの日ぐらいしかないぞ」
「探す時間帯に関しては気にしないで、あなたたちのことを優先してもらって構わないわ。探す方法に関してだけど、これを使うわ」
そう言って、魔王は、直径10センチ厚さ2センチ程の円形の白い物体を取り出した。上の方にはスイッチがあり、片面には液晶のようなものが付いていた。
「って、ドラゴ○レーダーじゃねぇかぁぁ!!」
英雄は立ち上がり、叫びもといツッコミを入れた。
「この前、あなたが読んでいた漫画? というものを参考に作ったの。とっても面白かったわ」
英雄は中二ぐらいからインドア派だったので漫画、アニメ、ラノベの類はかなりの量を持っていた。魔王はそのコレクションの中から刀を取り返す際に英雄が持っていた漫画を見つけていた。
「一言ぐらい断ってから読めよ」
「一応、言ったわよ。あなたのお母様に」
「なんで、母さんに言うんだよ! ってか、いつの間に話してたんだ?」
そんな中、桃覇はおろおろしていた。
「え、えーっと、その漫画のことはよくわからないけど、その機械? はどんなものなの?」
「おい、桃覇、話を変えるな」
「これは内臓魔力を感知する道具よ」
英雄は無視された。「無視かよ」と言うもののそれも無視された。仕方ないので、話を聞くことに集中することにした。
「それで?」
「魔法道具には魔力が込められているの。それが感知できればここに表示されて取りに行けるって寸法よ」
「そんなのがあるなら自分で探しに行けばいいんじゃねぇの?」
「ルールだとか、マナーだとか国によって違うでしょ。当然、異世界にもそれは当てはまるはずだからね。現地の人の反感を買って無駄な争いとかは避けたいからね」
「なるほど」
「それに、予想外の事態になっちゃったし……これを見て」
魔王はレーダーを起動させ、画面を見せた。
「これって……どういうことだ?」
レーダーに映っている反応は全部で13個あった。
「魔法道具を見つけるものとは言ったけど、魔力があるものには全部反応しちゃうのよ。つまり、私みたいに魔力を持っている人に反応してしまう」
「でも、これって……つまりは、そういうことだよな」
レーダーから一番近いところには反応が四つ固まっていた。
「あなたたちが魔力を持っているということね」
英雄は既に自分が魔力を持っていることに気づいていたが、桃覇が持っているという事実は意外だった。
「でも、いきなり魔力があるなんて言われてもピンと来ないな」
「二人共、魔力の量で言えばかなり少ないだろうからね。魔力量が多いと、面倒事も多いから」
「何かあったの?」
「何も聞かないで」
桃覇は嫌そうにしているのを無理に聞こうとは思わなかった。
英雄自身は少し残念に思っていた。誰にも言ったことはなかったが、魔力があることを自覚した時からなんとか増やせる方法はないかと思っていたのでその手掛かりが掴めればと少し期待していた。
「話を戻すよ。私がこの事実を以って言いたいことは二つ。一つは、このレーダーの情報が目的の道具ではなくて、人である可能性があること。もう一つは、もし人が持っていた場合、魔法道具を使って抵抗することがあるかもしれないということよ」
「危険が伴うということか?」
「そうね。でも、私が居る以上はそういうリスクから守ってあげるから安心して」
「守ってあげるってそんな強そうには見えないんだが?」
「そんなことないよ。お父さん以外で初めて私の攻撃を弾いた人だもん」
身振りを付けて、そう反論する桃覇。
桃覇のことを知らない人が聞いたら何を言っているのかと思うかもしれないが、桃覇の強さは人類最強に近いものだと英雄は知っていた。桃覇の父がやっている古道流という武術を習い始めてからというものの、素手でコンクリを砕いたり、蹴りで木を倒したり、果ては正拳突きで厚さ2ミリぐらいの鉄板をぶち抜いているところを見たことがあった。ちなみに、人類最強は英雄の中では桃覇の父である。
「確かに、それは随分と頼もしい……かもしれないな」
英雄にとって桃覇の強さを思い出すことは桃覇より自分は劣っているのだと劣等感を味わうことなのであまり思い出したくない事実だった。
「信用できないなら、私の実力を見せてあげてもいいよ」
「別にいいよ。桃覇の攻撃防げている時点で人間超えてるのわかったから」
「わ、私そんなに強くないよ!」
何を言っているんだお前は? と言わんばかりの視線が桃覇に向く。
「私も桃覇は十分すぎるほど強いと思ったけど?」
「私より強い人は居るし……」
「あぁ、お前の父さんな」
「それは間違ってないけど、そうじゃなくて……」
ラミが何かに気づいたのか、桃覇に耳打ちした。
桃覇はあたふたしつつ、ラミの言葉には肯いていた。
「お前ら、何の話をしてるんだ?」
「何って、女子の秘密よね」
「う、うん」
「あぁ、そうかい」
言っても何も教えてくれそうになさそうにないので、英雄は特に気にしないことにした。
「ところで、その持っている刀にはどんな能力があるんだ?」
ラミと桃覇はギクリとした。
「何だ、聞いちゃまずいのか? というより、なんで桃覇も同じ反応してんだ?」
「話してもいいけど、使おうとか思っちゃだめだよ」
「別に使う気なんてないから」
「そ、そう? それなら、いいけど」
ラミは嘘偽りなく、刀の機能を話した。
「まるで、幽○白書の降○の剣だな」
「何それ?」
「漫画にあるんだよ。そんな機能の剣」
「こんなのも考える人が居るのね。この世界は随分と想像力豊かみたいね」
「ところで、その刀の名前教えてくれないか?」
「別に教えてもいいけど、どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、それはやっぱり男としてはカッコイイ物には興味が湧くもんだろ」
「刀がカッコイイって感覚はわからないけど……名前を教えたところで何があるわけでもないし、教えてあげるわ」
ラミは刀を取り出して、刀の名を教えた。その刀の名は『操霊刀』
「なんかいいな。刀の名前良いな」
「何も良くないわよ」
「わ、私も良いと思うな!」
「桃覇!?」
「さすが、桃覇! 良くわかってるな」
桃覇と英雄は腕を組んでいた。
そこで、ラミは桃覇がどうしてそんなことを言ったのか理解した。
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少し時間は遡り、一ヶ月程前のこと。
剣剣太郎という大学生は、飲み会の帰りだった。
「くそっ、誰も話を聞いちゃくれねぇ……」
剣道のサークルに入っており、大会に何度も参加しているが団体戦、個人戦共に良い結果が出せることはなかった。というより、毎回一回戦敗退が常だった。
剣太郎自身は、それを覆すべく毎日努力を惜しまなかったが、他のメンバーはそんなことはなく飲みサーというわけではないが、それに近いものになりつつあった。
普段は飲み会に参加しない剣太郎だったが、今日は真面目に練習をするように促すために参加した。しかし、誰も耳を貸さず話を流し、どうでもいい話を続けるばかりだった。
どうしたら良いか、酔いで上手く回らない頭を悩ませ下を向いた。
「ん?」
剣太郎は、足元に光る物体を見つけた。
「こ、これは……!」
それは剣だった。それもレプリカなどではなく、本物の斬れる剣だった。現代にはもはや博物館にしか置いていないような剣。
「ブロードソードっぽいけど、ちょっと違うな。サーベルよりは幅広い剣だけど」
剣太郎は刀剣マニアだった。小さい時から、図鑑や博物館などで何度も見ていたので良く知っていた。けれど、その剣を一度も見たことはなかった。
本来なら、警察に届けなければならないものだ。落とし主が困っているかもしれないし、悪人が拾えば人を斬る道具として使われるかもしれない。だが、剣太郎はこの剣を持ち帰りたいと思っていた。その理由を一言で言えば、魅せられた。剣を深く知り、剣を上手く扱いたい故にこの剣の凄さが何となくわかっていた。
剣太郎は自分の酔いを理由に持ち去ることにした。酔いのせいでこんなことをしたのだと。そこまでしてでも、この剣を持って振ってみたい。そんな思いに駆られた。
罪悪感はあった。もしかしたら、警察に捕まってしまうかもしれない。そんなリスクを冒しても、この剣を持つ価値があるのだと確信していた。
だいたいしかあってない次回予告
剣太郎「この剣すっげぇ!」
英雄「それ、この娘のなんですけど返してくれませんかね?」
剣太郎「そんなアホなことあってたまるか!」
ラミ「本当なんだけど……」
剣太郎「ならば、俺を倒して奪うんだな!」
ラミ「ほいっ」ジャブ
ベキッ
剣太郎「ぶべらっ!」
英雄「うわぁ……」
天城「だいたいこんな感じかもしれない次回、『剣の魅力な魔力』見てください」