第3話 平和主義の魔王
次は別視点で同じ話なので今日は二本立て!……にしようと思ったんですけど、急遽決めたことなので無理そう。でも、今日明日中には投稿できるように頑張ります。
一方、異世界では魔王は城に帰還していた。
「ゼルトー! 何処にいる!?」
「おや、魔王様。随分と小さくなられましたね」
執事服を着た、3メートルは超えそうな人型の魔物が答えた。
屈強な肉体を持ち、額には二本の角が生えている。
「そんな呑気なこと言っている場合じゃないでしょ!」
「何かありましたか?」
「何かって、私がどれだけここを離れていたと思ってんの!?」
「どれだけって……一ヶ月ですが?」
「一ヶ月……?」
あの少年は、トレイスが68歳の時、4年前に死んだと言っていた。確か、私が封印されてしまった時トレイスの年齢は12歳。魔王が封印されてから60年は経っているはず。
「あの人間が嘘言っているとは考えづらい。あの異世界と私の世界では時間の流れ方が違うのかしら? それとも一年の単位が違うのかしら?」
「何を困惑しているかは知りませんが、少なくとも魔王様が居ない間に問題はありませんでしたよ」
「そう。それはよかった」
魔王は安堵した。
「よくはありませんよ、魔王様。問題はありませんが、あなたはこの世界のバランサーで一国の主なんですから、そう何度も長い間玉座から離れられては困ります」
「ごめんなさい。けど、私はこの世界のために頑張っているのよ」
「それはわかりますが……」
「わかってくれるなら、これからちょっと研究室に籠るから何かあったら報告してね」
「全く……わかりましたよ」
ゼルトは呆れた顔でそう言った。
「ちゃんと着替えてからにしてくださいよ」
「わかってるわよ」
魔王は、自分の研究室に入ると服のポケットを探った。
「あれ? ない……ない……ない!」
服を脱いで服に付いている内ポケットをすべて確認し、研究室の中の棚をあさり、本棚を崩し探すが目的のものは見つからなかった。
魔王は研究室から飛び出した。
「ゼルトー! 私の携帯収納箱知らない!?」
「うわっなんで裸なんですか!? 恥ずかしいんでさっさと着替えてください」
魔王は顔を赤くして、研究室に引っ込んだ。
「それで、知らないの?」
研究室で先ほどまで着ていたのと全く同じデザインの服に着替えながら、質問をした。
「知らないも何も、魔王様が厳重に管理していたじゃないですか。私が知っているわけがないでしょう」
「そりゃそうよね……」
魔王は焦っていた。魔王が持っていたその箱の中には相当な危険物が入っており、悪用されれば世界に混乱を招くものばかりだ。
盗難対策はしていたが、警戒して常に持ち歩いていた。
「まさか、落とした……?」
「何やっているんですか、魔王様。危険だから自分で管理するって言ったの魔王様ですよ」
「う、うるさい! 落としたとしたら、一体どこに……」
魔王は逡巡した。
「多分、向こう側だ! 向こうでこけた時に落としたんだわ!」
「向こう側というと、異世界ですか? って、向こうでこけた?」
「そ、それは忘れなさい! とにかく、取りに行ってくるわ!」
魔王は魔法陣へと走り出す。
「ちょっと待ってください。向こう側に置いてきたのなら異世界への扉を閉じてしまえば永久的に封じることができるのでは?」
「そうかもしれない。けど、私の些細なミスで向こう側に迷惑かけるなんて許される行為じゃないわ」
「向こう側とこちらの世界は無関係じゃないですか……」
「繋がっている以上、関係はあるわ」
「……相変わらずですね、そのお人好し」
「当たり前よ。これがなかったら、私じゃない」
ゼルトはフッとため息を吐いた。
「そうですか。では、お帰りは何時頃になりますか?」
「そうね。早ければすぐに、遅くても半日で帰ってくるつもり」
「わかりました。それではいってらっしゃいませ」
「ええ、行ってくるわ」
魔王は再び、魔法陣の中へと飛び込んだ。
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魔王は英雄達の世界へと戻ってきた。
異世界へは一時間ほどしか戻っていなかったはずだったが、魔王には少々気温が上がっているように感じられた。
「やっぱり、時間の流れが違いそうね」
地面のあたりを探すが、自分の魔力が封印されたままの魔法陣以外を見つけることはできなかった。恐らく、少年(英雄)が持っていこうとして、盗難対策の魔術が発動したのだろうと魔王は推測した。
盗難対策とは、その魔術をかけた者以外が対象物に触れると対象物が他の場所へとワープする機能だ。本来ならば、魔術をかけた者以外は触れることしかできず手に入れることすらできないわけだが、ここは異世界であり、普段通りに起動するとは考えにくかった。
まず最初にすべきことは、あの少年(英雄)を探すことだ。この世界で活動するために協力者が必要になるだろうし、例の危険物のどれかを持っている可能性もある。
「さて、どうやって探したものか」
魔王は思考を巡らせる。
この世界には魔力の気配が全く感じられない。この世界の住民が魔力の存在に気づいていない、もしくは物理法則や生物の体内構造そのものが違うことが考えられる。
魔王には魔力が使われた痕跡を辿る特殊能力がある。ただし、僅かな魔力にも反応しどんな魔法が使われていたかはわからないため、日常的に魔法が使われている魔王の世界では役に立たない技能だった。
しかし、もしこの世界でその魔力が使われた痕跡があるのなら、ほぼ間違いなく自分が落とした危険物のどれかだと考えられた。
魔王は外に飛び出した。
することは決まった。魔力の残滓を探すこと。あの少年が持っているとは限らないが、とにかく危険物を回収しなければならない。そう考えた。
自前の翼を出し、空を飛ぶ。見つかると面倒なことになる可能性があるため、透明になる魔法をかける。
自身の全速力を持って、飛び回った。体が小さくなっているため、魔王にとっては本来の十分の一以下のスピードであったが、時速200キロ以上の速度で飛び回っていた。
しかし、感知できる範囲は半径百メートルに満たなかったためなかなか見つけられなかった。
魔王にその時の時間は分かっていなかったが、日が傾き始めた頃。学校のチャイムが鳴った。
「何?」
その学校に向かうと魔力の残滓を感知できた。魔王は魔力の残滓を感知できた場所、校舎裏に来ていた。
ここだけじゃなく、この近辺、特にすぐ傍の建物の中で何度も使われているようだった。それこそ数百回以上。
魔王は魔力の残滓が最も強く感じられるところに向かった。
建物の四階、1-Aと書かれた表示がある部屋。そこにはあの少年(英雄)が居た。
机に足をのばしながら、漫画を読んでいた。周りに人が居るのに静かで、他の部屋にも人は居たはずなのにとても静かで。どこか不気味だ。
「おい、少年!」
自分に掛けた魔法を解いて、呼び掛ける。
「なんだ。自称魔王か」
いきなり自分の目の前に魔王が現れても驚いていなかった。
実は、英雄は内心ビビっていたが、ばれない様に心がけていた。
「自称じゃない。でも、それはいい。それより少年は八角形の箱もしくはその中に入っていたもののどれかを持ってないか?」
「中に入っていたかは知らねぇけど、こんなもんならあるぜ」
英雄は、自分の体から刀を取り出した。
「それは私のものよ。早く返しなさい」
「いやだね。こんな便利なもの、返すわけないだろう」
「あなた、それの能力を分かっていて、使っているの? 度し難い行為だわ」
「お前は呼び出したときに、俺の目的を聞いているだろう?」
「目的って、私の全魔力が爆発したらどうなるか説明したら目的が叶ってたって話? あなたは馬鹿なの? その刀でそんなことできるわけないでしょう?」
「少しずつ、操れる人間を増やせれば問題ないだろう。これは最早ただの妄想じゃない。叶えられる野望だ!」
「本当に救い難い馬鹿だわ」
魔王は刀を奪うために英雄に直進した。
「俺を守れ!」
周り座っていた生徒が一斉に英雄を守るように立ちはだかった。
「まずい!」
魔王はできるだけこの世界に迷惑をかけたくないと思っていた。人を傷つけるなど言語道断。許されざる行為だ。
急ブレーキをかけて後ろに下がる。
「あの子供を捕まえろ! 殴っても蹴っても構わん!」
「この外道!」
四十人近い生徒は一斉に魔王に飛び掛かった。
「仕方ない」
魔王はバリアを張り、凌いだ。
生徒達はそのバリアを気にも止めず、殴ったり、蹴ったりしていた。
「止めなさい! そんなにやったら、あなたたちの手が!」
人によっては、拳から血を流している者もいた。
魔王はバリアの性質を変えた。堅い性質のバリアを柔らかくし、攻撃した側も衝撃が伝わらない様にした。
バリアの性質を変えるのに集中していると、1人の女子生徒がタックルをした。
「何、この子!? 人間とは思えない程のパワー!」
一瞬にして、廊下まで運びそのまま窓ガラスを割って階下に落ちた。
魔王は振りほどこうとするが、なかなか解けない。
「私の言うとおりにして」
「っ! あなた、一体……?」
英雄は全校生徒を連れて、魔王の下へと向かった。
「よくやった。桃覇」
「ありがとうございます」
魔王は桃覇によって羽交い絞めにされていた。
「どうする気よ」
「決まっているだろう? お前も奴隷にするんだ」
「変態。ロリコン」
「お前の幼児体型になんて全く興味ないから安心しろ」
「それじゃあ、何がしたいのよ?」
「自分を魔王と言うだけあって、この世界を破壊できるような面白い方法を知っているだろう? それを実行してもらうだけだ」
「何? そんなに死にたいなら、自殺すればいいじゃない」
「生憎、一人寂しく死ぬ気はない」
「本当に度し難い屑ね。この子はどうしてこんな奴好きなのかしら」
「お前、何を言って……」
「英雄を捕まえて!」
英雄は周囲の生徒に魔王と同じように羽交い絞めにされた。
その指示を出したのは桃覇だった。
「なんでだ! なんで、お前ら奴隷が俺に逆らうんだ!」
桃覇は魔王を離していた。
「とりあえず、これ返してもらうわよ」
魔王は動けなくなった英雄から、刀を奪い取った。
「あなた、少しは魔力があるようだけど、そんなちょっぴりの魔力じゃ刀の効果が続かなかったのよ」
「なんだと! それじゃあ、あいつらはなんで俺の命令にずっと従っていたんだ!?」
「この子が、効果の切れた子にその刀を使っていたのよ」
桃覇は申し訳なさそうに英雄を見る。
「ごめん、英雄。きっと英雄は良いことしているんだって信じてたけど、これ以上悪いことをしている英雄は見ていられなかったの」
「くそぉ! 誰か! 俺の指示に従う奴はいないのか!」
「無駄よ」
魔王は刀を掲げた。
「何をする気だ?」
「洗脳を解くのよ。ついでに記憶も少し弄らせてもらうけど」
「これまでか……」
英雄も桃覇も沈んだ表情を浮かべた。
「あなたたちに一応フォローしておくけど、少年がこんな馬鹿みたいなことをしたのは、この刀にも一因があるわ」
「そりゃ、そんな能力があれば使うだろ」
「そういう意味じゃない。この刀は自分に使うと決断力が増すのよ。普通なら良心とかが止めるところを後押しする効果があるのよ。理性を弱めるとでも言うのかしらね」
「それじゃあ、英雄は悪くないの?」
「いや、そういう計画を持っていたのは間違いないし、行動したのは事実だから」
刀は光り桃覇や英雄、魔王を除いて皆気絶した。
「でも、直接的に人を傷つけてはいなかったみたいだし、根は悪くないのかもね。ただ単にヘタレなだけかもしれないけど」
「おい、俺はヘタレじゃ……」
「ヘタレじゃないよ! 英雄は、私の英雄だから!」
桃覇は怒っていた。好きな人を馬鹿にされて、言わずにはいられなかった。
魔王は茫然とした後、笑い出した。
「あはははは。少年、こんな良い彼女に想われてどうしてこんなことをしたんだ?」
「お前には関係ない。それに、俺と桃覇は付き合ってない」
「そ、そうだよ。私、英雄とは付き合ってないよ」
「恥ずかしがる必要なんてないのに」
「恥ずかしがってねぇよ! 恋愛脳がっ!」
「わ、私は英雄が望むなら彼女になりたいなーなんて……」
「桃覇は流されるなよ」
「ご、ごめんっ!」
魔王はその様子を見て再び笑う。
「まぁ、冗談はこの辺にして。君たちさ、私のお手伝いしてくれない? もちろん、相応の報酬は出すわ」
「その報酬ってのはなんだ?」
「あなたたちのどんな願いでも一つだけ叶えてあげる」
「その言葉に嘘はないだろうな……!」
「あなたが本心から望む願いならね」
桃覇が手をあげる。
「ねぇ、私もお手伝いしてもいいの?」
「もちろん、いいわよ」
「やった」
小さく飛び跳ねる桃覇。
「ところで、あなたのことはなんて呼べばいいの? 魔王ちゃんって呼ぶのはちょっと嫌かな」
「そういえば、自己紹介が遅れたわね。私はあなたたちから見て異世界であるイクジスト・ノヴの魔物の長の十代目、ラーストファステルミ・ロウ・デス・リュオルス」
「な、長い名前だね」
「ラミって呼んでくれたらいいよ」
「わかったよ。ラミちゃん」
「よろしくね。桃覇」
桃覇と魔王ラミは握手をし、ハグをした。その姿は仲の良い姉妹に見えなくもなかった。
「あ、そうそう。お手伝いをしてくれればどんな願いも叶えるって話だったけど、少年には、条件があるの」
「な、なんだよ」
「一つは、私が目的を果たすこと。もう一つは、君が起こした事件について忘れること」
「そ、そんなのどうすればいいんだよ」
「大丈夫、この刀には記憶を弄る機能もあるから」
「でも、さっきは掲げていただけだったよな。どうして、バットを持ってんだよ? 無言で近寄るなよ……ホント、お願いします。やめてください死んでしまいます」
「女の子を悲しませた罰だよ」
英雄はバットで殴られ、物理的に記憶を消された後、念入りに刀で記憶を弄られた。
彼の命に別条はなかったが、性格が一時的に変わった……こともなかった。
だいたいしかあってない次回予告
桃覇「私は、英雄が好き」
ラミ「え~、あれの何が良いの?」
桃覇「私の本物のヒーロー。勇者様だから」
ラミ「そ、そう^^;(恋は盲目ってやつかしら?)」
天城「だいたいこんな感じかもしれない次回『あの人にもう一度』是非見てください」




