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第2話 友人がいなくとも幼馴染はいる

なんか違和感ありまくりだけど、週一ペースを保って書き続けます。

それと、今回からあとがきが次回予告{のようなもの}になります。寸劇のようなだいたいしかあってない次回予告です。テキトーに流して見てください。

 昨日の成功とも失敗とも言えない絶妙な失敗具合のため自殺は辞めた。面白い刀を手に入れたものの試す相手が居ない俺には無用の長物だった。とは言っても、面白いことには変わりないし、おそらくあの魔王(幼女)の落とし物なのは、ほぼ間違いないので捨てるのは躊躇われた。警察に見つかったら面倒そうだし。とりあえず、自分の体の中に仕舞えば、まずばれることはないだろうからそうすることにした。


 翌日、自殺は辞めたものの学校に行くか迷う。既に朝食を食べ終え、制服にも着替えているわけだが……

 ここから学校は遠いからすぐにでも行かなければ遅刻になってしまう。

 引き籠りが今更学校に行って、どんな非難を浴びることやら……


 そこに、ピンポーンと家のチャイムが鳴る。

 母が「はーい」と言って扉を開けに行った。

 母の話し声が聞こえる。

 誰が来たのかは、想像が付く。


「ヒデくーん! 桃覇とうはちゃんが来たわよー!」

「わかってるよ」


 玄関に向かうと長い髪を後ろでまとめたポニーテールの幼馴染が居た。いつものように左目の辺りが前髪で隠れている。名前は古道桃覇こどうとうは

 元気の塊のようなやつでいつも俺に絡んでくる。


「おはよう! 英雄ヒーロー


 英雄と書いてヒーロー。いわゆるキラキラネームだ。俺は自分のこの名前が大嫌いだ。


「久しぶりだな、桃覇。それと俺をその名前で呼ぶな」

「ご、ごめん。それで、今日は学校に来てくれんだよね!」

「嫌々だけどな」

「それでも来てくれるなら嬉しいよ」


 とにかくこいつは俺の世話を焼きたがる。俺に満面の笑みを浮かべる。美少女なだけに悪い気分にさせられないのが逆に腹が立つ。


「さっさと行くぞ」


 俺は桃覇から逃げるように早足で駅に向かう。


「待ってよ! 英雄!」

「その名前で呼ぶな!」


 いつもこの調子だ。俺が嫌がることを平然とする。それ故に俺はこいつが嫌いだ。だから桃覇も俺のことが嫌いなのだと思いたいが、恐らくそうじゃない。そうでなければ、毎日のように引き籠っている俺のところに来るはずがない。嫌いなやつの所に毎日行くというのは、義務でも辛いはずだ。


 電車に乗ると都心に近付く度に人が増えてくる。すし詰め状態になっていき、不快な気分になっていく。正直、自分が選んだ高校に後悔していた。結局、自分の望みも叶えられず頑張った甲斐がまったくない。


 それにしても、今日は人が多いな。久しぶりに乗ったせいか、余計に多く感じる気がする。いつのまにか、桃覇も少し離れた位置に居た。


 このまま一人で学校に行けるかな……そう思っていたが、なんか桃覇の様子がおかしい。他の乗客に嫌な顔をされながら人の間を無理やりに移動し、確認しに行った。どうも痴漢に遭っているようだ。幼馴染がずっとこのままなのは忍びないし、助けるか……


「この人、痴漢です!」


 そう思った矢先に、桃覇は痴漢の手を取って上に挙げた。そのはずなのに何故か俺の腕だった。


「はぁ!?」

「あれ、英雄?」

「だから、その名前で呼ぶな」


 周りの視線が痛いが、さりげなく逃げようとする痴漢の腕を捕まえておく。


「俺じゃねぇ! 痴漢はこのおっさんだ!」

「な、何を言っているんだ!」

「話は降りてから聞いてやるよ」


 途中で電車を降り、警察からの事情聴取を受ける羽目になったが無事に冤罪は免れた。結局、遅刻する羽目にはなってしまったが。


「英雄、ごめん。後、ありがとう」

「別にいい。後、その名前で呼ぶな」

「ご、ごめん」


 担任には連絡を取ったので、遅刻に関しては問題なかったのだが俺は教室に行くのがものすごく気まずい。目立ちたくなかったのに、こんな時間に行けば否応なしに目立たざるを得ない。ただでさえ、自分の容姿は目立つのに。地毛が金髪だし、ハーフっぽい顔だからな。実際にはクォーターだけど。


 授業中のなか、前の扉から入る。どよめき立つ中、教師に遅刻した理由を話した後、席に座るように指示された。しばらく、来ていなかったから席が変わっていた。でも、空いている席が一ヶ所しかないため、自分の席がどこだかわかった。

 何事もないように、黙ってそこに座って過ごした。ちなみに、桃覇は別のクラスだ。


「えと、小郷君」


 昼休みに女子の一人が話しかけてくる。どう言葉を返していいか困る。人と滅多にコミュニケーションを取らないからどうしたらいいかわからない。それに、この人の名前を覚えていない。


「どうして今まで学校に来ていなかったのかな?」


 思い出した。この人、確か学級委員長だ。相変わらず名前は思い出せないけど。


「それは答えなくちゃいけないのか?」

「嫌なら無理に答える必要はないけど……」

「それなら関わらないでくれ」


 席を立ち、教室から出る。

 俺って今までどうやって人とコミュニケーション取っていたんだろ?

 歩きながら、そんなことを考える。そもそも、高校に入ってから桃覇としか話していない。しかしそれ以前、小学生時代はもっと活発に生きていたはずなんだ。それなのに今は消極的だ。

 人がいないところで昼食を取りたい。人と関わりたくないから。かと言って便所飯は絶対に嫌だ。

 

 人がいない場所を探していると、結局は立ち入り禁止の場所にたどり着いてしまう。要は屋上だ。でも鍵が掛けられており、開けられそうにない。どうしたものか……


「あ、英雄。やっと見つけた」


 振り向くと桃覇が居た。


「お前、何でここに?」

「英雄を探していたんだよ。一緒にお昼ごはん食べようと思って」

「お前は何でいっつも俺と一緒に居たがるんだ?」

「幼馴染だから、じゃダメ?」

「もういいよ、それで」


 こいつはいつも俺と一緒に居る。正直、鬱陶しい。俺をあの名前で呼ぶ。俺の黒歴史をばらす。だから、嫌いだ……嫌いなんだ。


 昼食を終えて帰ってくると今度は男共から声を掛けられる。


「お前ってさ、古道さんと付き合っているのか?」

「付き合ってなんていない。ただの幼馴染だ」


 他の男子生徒は「羨ましい」だの「お前は見た目がいいからモテているだろう」とかいわれのないことを言われる。確かに容姿は悪くない方だと思っているが、これでモテたことはない。ただ単に、昔の言動が残念だったのとそういうことに興味がなかったせいかもしれないが。


 放課後、一人で帰ろうとすると教室に桃覇が入ってきた。


「英雄! 一緒に帰ろう!」


 急ぎ足で桃覇の傍により、耳打ちする。


「その名前で呼ぶなっていっつも言ってるだろうが」

「だって、英雄は英雄じゃん。私の英雄だもん」


 私の英雄。桃覇は口癖のように俺をそう言うことがある。どうしてなのかは覚えている。ただ、俺にとって英雄という名前は嫌いなのだ。

 桃覇から離れる。


「部活はどうしたんだよ?」

「入ってないよ」

「辞めたのか?」

「元々入ってないよ。助っ人頼まれちゃったから仕方なく参加してたことがあっただけだから」

「勿体ないな」


 桃覇は運動神経が良い。実家が古道流という道場を開いていて、ある時から桃覇はそこで修行していた。それからというものの俺は桃覇に運動で勝てた試しがない。というか、勉強でも勝てた試しはない。俺にとって桃覇はコンプレックスの塊でもある。


「私にとっては、英雄と一緒に居ることの方が大事だから」

「……そうかい」


 だから、いつも俺と一緒に居ようとすることに複雑な気持ちにさせられる。

 彼女は何があっても俺に幻滅しない。俺が引き籠りという最大級に情けない状態でも俺との関わりを断とうとはしなかった。以前と変わらずに接してきた。

 こいつの気持ちは解っているつもりだが、どこからそこまでの気持ちが出てくるのかは理解できない。


 桃覇は一緒に帰っていると、例え無言でも嬉しそうにニコニコしている。それを少し歪めてやりたいと魔が差す。試してみたいのかもしれない。どこまでやれば、こいつは俺を嫌うのか。


「桃覇、ちょっと大事な話があるんだ。一緒に来てくれないか?」

「うん、いいよ」


 我ながらしょうもないことを考えると思ったが、ただのお試しだから丁度いいとも言える。一体、こいつはどれくらい驚いてくれるだろうか。もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。それを想像すると少しだけ楽しい気分になる。


 校舎裏まで連れて行った。この時間、ほとんど人は通らない。まぁ、詳しくは知らないが何度かここにきて人とすれ違ったことは一度もない。


「それで、大事な話って?」


 ちょっと、落ち着かない様子の桃覇。俺が告白するとか思っているのだろうか?


「正直な話さ、桃覇。お前、うざいんだよ」

「え?」


 俺は体から、あの刀を取り出した。


「死ね」


 理解できない。怖い。どうして。といった表情だ。嗜虐心が少し煽られるがさっさと終わらせよう。さすがに少し可哀そうな気がしてきた。

 刀を桃覇の胸に突き刺した。そして、引き抜く。

 思った通り、血は全く出ていない。


「驚いたか? 冗談だよ、冗談」


 全く反応が返ってこない。


「もしかして、怒ってるのか?」


 下を向いていて表情が見えない。


「なんとか、言ってくれよ」

「なんでしょうか?」


 急に顔を上げて答えた。


「なんだよ、平気なのか」

「平気とはどういった意味ででしょうか?」


 何か様子がおかしいぞ。それにこいつが俺に対して敬語なんて……


「状況を理解できていないようなので説明しますが、私はあなたの奴隷となりました」


 何を言っているんだ、こいつは。


「じょ、冗談だよな。俺があんなことした仕返しにやっているんだよな?」

「冗談ではありません。私はあなたのどんな命令にも従う奴隷です」


 嘘だろ……


「三回まわって、ワンって言ってみ」


 桃覇は言われたとおりに三回回った後、「ワン」と感情の籠っていない声で言った。


「マジなの?」

「マジです」


 こいつの性格から考えて、俺をからかうようなやつじゃない。自分が夢を見ているのではないかとも思ってしまう。


「けど、どうして奴隷なんだ?」

「わかりません。あなたに私の全てをかけて服従しなければいけない。いや、そうしたい。そう思ったんです」


 どうも納得いかないが、原因はやっぱりあの刀以外ないよな。


「どうしましたか?」

「普段通り……というか、前みたいにしゃべれないのか?」


 正直、桃覇に敬語を使われるのはちょっと気持ち悪い。


「英雄がそう言うならそうするよ」


 一先ず、これで落ち着ける。

 しかし、この先どうしたものか?


 新たな面白い機能を見つけたんだから、利用しない手はない。この機能があれば、世界征服だって夢じゃないような。それなら、手始めにこの高校を占領、支配するか? 試してみる価値はあるはずだ。


 これで世界を崩壊させるという俺の目的が叶えられる可能性が見えてきた。

 笑いが込み上げてくる。一度は失った目標をもう一度果たすために、まずはこの高校の人間すべてを服従させよう。


「桃覇!」

「何?」

「お前に頼み……いや、命令がある」

「なんでも聞くよ」


 俺は、桃覇に好意を持っていそうな男子生徒をここに呼び出すように命令した。呼び出しに行っている間に俺は茂みに隠れた。桃覇は、10分とかからずに命令通り、男子生徒をここに呼んできた。

 恐らく、告白されるんじゃないかと期待しているんだろうが、残念! お前は、俺の奴隷となるのだ!

 茂みから俺は飛び出し、桃覇は男子生徒を羽交い絞めにした。その隙に、男子生徒を例の刀で切り裂く。

 男子生徒は、先ほどの桃覇と同じように俺に敬語を使い服従すると言ってきた。


 これで、この刀は間違いなく斬った相手を従える武器なのだと確信できた。


「いける。 いけるぞ! これで、世界崩壊がただの俺の妄想じゃなくなる!」




 この時の俺は世界崩壊への第一歩を踏み出すことができたと思っていた。それは結局、一ヵ月程度でただの中二病の妄想でしかなかったと思わされることになる。


だいたいしかあってない次回予告


英雄「これで俺の目的が達成できる」


桃覇「ひどいよ、英雄!」


英雄「一体なんだよ?」


桃覇「女の子にいきなり刀を刺してくるなんておかしいよ!」


英雄「確かにそうかもしれない。でも、俺の目的のためには必要だったんだ」ウツムキ


魔王「ダークヒーロー(笑)乙ww」ププッ


英雄「草生やしてんじゃねぇよ!」キャラアッテネェナ、オイ!


魔王「私が少年の鼻っ柱をへし折ってやんよ」


英雄「できるもんならやってみろ!」




天城「だいたいこんな感じかもしれない次回、『平和主義の魔王』見てね」

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